はじめに
交通事故などで関節の機能に障害が生じることがあります。関節の機能障害とは、関節の動きが制限されることや、痛みが生じる状態を指します。このような障害が残る場合、後遺障害等級が認定され、適切な賠償を受けるためには、具体的な測定方法や法的手続きが重要です。本稿では、関節の機能障害について詳しく解説し、弁護士に相談するメリットについてもご紹介します。
関節の機能障害とは
関節の機能障害は、関節の動きが制限されることや痛みが生じる状態を指します。この障害は、交通事故などで関節に直接的な衝撃を受けた場合や、周囲の組織が損傷した場合に発生します。具体的には、骨折や脱臼、靭帯損傷などが原因となります。このような障害が残ると、日常生活や仕事に支障をきたすことが多く、適切な賠償を受けるためには後遺障害等級の認定が必要となります。
可動域とは
可動域(RangeofMotion,ROM)とは、身体の各関節が動ける範囲のことを指します。正常な可動域は個々の関節によって異なりますが、事故などでこの範囲が狭くなると、関節の機能障害が発生します。可動域は、関節の健康状態や機能を評価する重要な指標であり、後遺障害等級の認定にも関わります。
関節の機能障害の原因
関節の機能障害の原因としては、以下のようなものがあります。
- 交通事故などによる骨折や脱臼
- 関節に直接的な衝撃を受けた場合
- 靭帯損傷や筋肉の損傷
- 関節周囲の組織の損傷
これらの原因により、関節の動きが制限されたり、痛みが生じたりします。
関節可動域の測定方法
関節可動域の測定は、日本整形外科学会や日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示ならびに測定法」に基づいて行います。具体的な測定方法は以下の通りです。
脊柱(頚部)
- 主要運動:屈曲・伸展、回旋(左回旋・右回旋)、側屈(左側屈・右側屈)
脊柱(胸腰部)
- 主要運動:屈曲・伸展、回旋(左回旋・右回旋)、側屈(左側屈・右側屈)
肩関節
- 主要運動:屈曲、外転・内転、伸展、外旋・内旋
肘関節
- 主要運動:屈曲・伸展
手関節
- 主要運動:屈曲・伸展、橈屈、尺屈
股関節
- 主要運動:屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋
膝関節
- 主要運動:屈曲・伸展
足関節
- 主要運動:屈曲・伸展
各関節の可動域を測定する際には、健側(ケガをしていない側)の関節の可動域と比較します。
後遺障害等級と関節の機能障害
関節の機能障害が残った場合、後遺障害等級が認定されます。以下に、主な関節の機能障害とそれに対応する後遺障害等級を示します。
上肢の機能障害
上肢とは、肩から腕にかけての部分を指します。ここでは、肩関節、ひじ関節、手関節(手首)の3つの関節の動きに制限が生じる場合について説明します。
- 後遺障害1級4号:両上肢の用を全廃したもの
- 後遺障害5級6号:1上肢の用を全廃したもの
- 後遺障害6級6号:1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
- 後遺障害8級6号:1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 後遺障害10級10号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
- 後遺障害12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
股関節の機能障害
股関節に機能障害が残った場合も、後遺障害等級が認定されます。以下にその基準を示します。
- 後遺障害8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 後遺障害10級11号:2下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
- 後遺障害12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
下肢の機能障害
下肢とは、股関節から足までの部分を指します。ここでも股関節、膝関節、足関節(足首)の3つの関節の動きに制限が生じる場合について説明します。
- 後遺障害1級6号:両下肢の用を全廃したもの
- 後遺障害5級7号:1下肢の用を全廃したもの
- 後遺障害6級7号:1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
- 後遺障害8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
- 後遺障害10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
- 後遺障害12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
足指の機能障害
足指に機能障害が残った場合も、後遺障害等級が認定されます。
- 後遺障害7級11号:両足の足指の全部の用を廃したもの
- 後遺障害9級15号:1足の足指の全部の用を廃したもの
- 後遺障害11級9号:1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
- 後遺障害12級12号:1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
- 後遺障害13級10号:1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
- 後遺障害14級8号:1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
後遺障害等級の詳細な解説
上肢の後遺障害等級
- 後遺障害1級4号と5級6号
「上肢の用を全廃したもの」とは、肩関節、ひじ関節、手関節(手首)の3つの関節のすべてが完全に動かない、あるいはそれに近い状態を指します。手指もすべて動かなくなってしまった状態を含みます。両方の上肢が全廃すると1級、片方だと5級に認定されます。 - 後遺障害6級6号と8級6号
「関節の用を廃したもの」とは、関節が完全に動かない、あるいはそれに近い状態、関節の完全弛緩性麻痺、あるいは人工関節・人工骨頭を入れた関節で、可動域が2分の1以下になっている状態を指します。片方の腕の肩関節、ひじ関節、手関節(手首)のうち、2つの関節がこの状態になると6級、1つだと8級に認定されます。 - 後遺障害10級10号
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、関節の可動域が2分の1以下になっている状態、または人工関節・人工骨頭を入れて可動域が2分の1よりも大きくなった状態を指します。肩関節、ひじ関節、手関節(手首)のうち、1つの関節がこの状態になると10級に認定されます。 - 後遺障害12級6号
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、関節の可動域が4分の3以下になっている状態を指します。肩関節、ひじ関節、手関節(手首)のうち、1つの関節がこの状態になると12級に認定されます。
下肢の後遺障害等級
- 後遺障害1級6号と5級7号
「下肢の用を全廃したもの」とは、股関節、ひざ関節、足関節(足首)の3つの関節のすべてが完全に動かない、あるいはそれに近い状態を指します。足指もすべて動かなくなってしまった状態も含みます。両方の下肢が全廃すると1級、片方だと5級に認定されます。 - 後遺障害6級7号と8級7号
「関節の用を廃したもの」とは、関節が完全に動かない、あるいはそれに近い状態、関節の完全弛緩性麻痺、あるいは人工関節・人工骨頭を入れた関節で、可動域が2分の1以下になっている状態を指します。片方の足の股関節、ひざ関節、足関節(足首)のうち、2つの関節がこの状態になると6級、1つだと8級に認定されます。 - 後遺障害10級11号
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、関節の可動域が2分の1以下になっている状態、または人工関節・人工骨頭を入れて可動域が2分の1よりも大きくなった状態を指します。股関節、ひざ関節、足関節(足首)のうち、1つの関節がこの状態になると10級に認定されます。 - 後遺障害12級7号
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、関節の可動域が4分の3以下になっている状態を指します。股関節、ひざ関節、足関節(足首)のうち、1つの関節がこの状態になると12級に認定されます。
足指の後遺障害等級
- 後遺障害7級11号と9級15号
「足指の用を全廃したもの」とは、両足の足指の全部が完全に動かない状態(7級)、または1足の足指の全部が完全に動かない状態(9級)を指します。 - 後遺障害11級9号
「1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの」とは、第1の足指と他の足指が完全に動かない状態を指します。 - 後遺障害12級12号
「1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの」とは、第1の足指か、他の4本の足指の用を廃した状態を指します。 - 後遺障害13級10号
「1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの」とは、第2の足指、またはそれ以下の足指の用を廃した状態を指します。 - 後遺障害14級8号
「1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの」とは、第3の足指以下の1本または2本の足指の用を廃した状態を指します。
弁護士に相談するメリット
関節の機能障害が残った場合、弁護士に相談することで、賠償金を大幅に増額する可能性があります。弁護士は専門的な知識と経験を持ち、適切な賠償を受けるためのサポートを行います。特に交通事故による後遺障害に詳しい弁護士法人長瀬総合法律事務所では、無料相談を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
関節の機能障害が残った場合、適切な後遺障害等級の認定を受けることが重要です。弁護士に相談することで、賠償金を増額するためのサポートを受けることができます。交通事故に遭われた方は、ぜひ専門家のアドバイスを受けてください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故の被害者の方が適切な賠償を受けるために全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
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