はじめに
交通事故が原因で発生する「正中神経麻痺」は、被害者の手や腕の感覚や動きを大きく制限します。日常生活や仕事に支障をきたす重大な後遺障害となり得るため、適切な後遺障害等級の認定を受けることが重要です。しかし、適切な等級を取得するには、医学的な証拠をそろえ、法的な主張を正確に行う必要があります。ここでは、正中神経麻痺についての基礎知識と後遺障害等級の認定に向けた主張立証のポイントを解説します。
Q&A:正中神経麻痺に関する基本的な疑問
Q1: 正中神経麻痺はどのような症状を引き起こしますか?
手や指の感覚が鈍くなり、物を握る動作や細かい作業が困難になります。また、指を曲げたり、手を内側に回したりする動作にも障害が出ます。
Q2: 交通事故による正中神経麻痺の原因は何ですか?
交通事故による骨折や外傷、特に上腕顆上骨折や手関節の脱臼が主な原因です。神経が圧迫されたり損傷したりすることで麻痺が発生します。
Q3: 後遺障害等級が認定されると何が変わるのですか?
後遺障害等級が認定されると、それに応じた損害賠償を請求できます。これは被害者の今後の生活を支える重要な財源となります。
正中神経麻痺とは
正中神経の役割
正中神経は、親指から薬指(親指側)の手のひら部分を支配する感覚神経であり、手首や指の動きにも大きな影響を与えます。この神経が損傷すると、以下のような運動機能や感覚の障害が発生します。
- 感覚障害:手のひらの一部でしびれや麻痺が起こる。
- 運動障害:指や手首の屈曲動作、親指の動きに支障が出る。
- 筋肉の萎縮:親指付け根の筋肉が痩せ、物をつかむ力が弱くなる。
症状の特徴
- OKサインが作れない:親指と人差し指で円を作る動作ができなくなる。
- 祈りのポーズが難しい:手を合わせると指が曲がらない。
- 痛みやしびれ:肘から手首にかけて、持続的な疼痛やしびれがある場合が多い。
交通事故が原因の場合、正中神経麻痺は単独で発生することは少なく、骨折や脱臼とともに症状が現れることが一般的です。
想定される後遺障害等級
正中神経麻痺における後遺障害等級は、運動障害や感覚麻痺の程度に基づいて判断されます。以下は主な想定等級です。
等級の例
- 8級4号
- 神経麻痺によって、細かい作業が著しく制限される場合。
- 例:ペンを持って字を書く、箸を使うといった作業が困難。
- 10級10号
- 前腕の回内(内側に回す動作)が50%以下に制限される場合。
- 例:手のひらを上下に返す動作が困難。
- 12級6号
- 前腕の回内が75%以下に制限される場合。
- 軽い運動制限が認められるが、日常生活への影響は軽度。
- 12級12号
- MRIやXP画像等で疼痛を医学的に証明できる場合。
- 例:持続的な痛みが日常生活に一定の支障をきたす。
- 14級9号
- 医学的に説明可能な疼痛があるが、画像では証明できない場合。
適切な後遺障害等級が認定されるための主張立証のポイント
後遺障害等級の認定には、次のポイントを押さえた主張と立証が必要です。
1. 適切な医療記録の収集
交通事故後は早期に医療機関を受診し、正確な診断を受けることが重要です。
- MRIやCT検査:神経の損傷や圧迫状況を確認する。
- 診断書の作成:専門医に後遺症の程度を詳細に記載してもらう。
2. 症状固定のタイミング
治療を続けてもこれ以上の回復が見込めない状態(症状固定)を正確に判断することが重要です。これが後遺障害等級の申請における出発点となります。
3. 専門医の意見書
後遺障害の程度や将来的な影響について、専門医から意見書を取得します。これにより、申請の信頼性が向上します。
4. 生活への影響の具体例
日常生活や仕事への影響を具体的に示すことで、等級認定に説得力を持たせることが可能です。
- 家事や仕事に支障が出た具体的な事例。
- 趣味や社会活動が制限された状況。
5. 弁護士のサポート
弁護士は医学的証拠の収集や申請書類の作成を全面的にサポートします。また、保険会社との交渉も代行するため、被害者は治療に専念できます。
弁護士に相談するメリット
正中神経麻痺のような後遺障害において、専門弁護士に相談することで次のようなメリットがあります。
- 正確な等級申請
医療記録や診断書の内容を精査し、適切な等級を申請します。 - 異議申し立ての対応
低い等級が認定された場合でも、異議申し立てを通じて再審査を求めることが可能です。 - 損害賠償金の増額交渉
後遺障害慰謝料や逸失利益の増額を目指します。 - 複雑な手続きの代行
被害者に代わって保険会社や加害者との交渉を行い、精神的負担を軽減します。
まとめ
正中神経麻痺は、交通事故による後遺障害として非常に深刻な影響を与える障害です。適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、医学的根拠を示すとともに、生活への具体的な影響を明確に伝えることが重要です。また、専門的な知識が必要となる場面が多いため、弁護士のサポートを受けることで、適正な損害賠償を獲得する可能性が高まります。
交通事故後の後遺症でお悩みの方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所までお気軽にご相談ください。
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