【手・指の骨折】交通事故による後遺障害等級認定ガイド|手首の可動域制限・変形治癒・機能障害

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はじめに

私たちは朝起きてから夜眠るまで、食事、着替え、スマートフォンの操作、仕事でのパソコン入力など、あらゆる場面で「手」や「指」を使っています。そのため、交通事故で手や指を骨折すると、日常生活や仕事に甚大な支障をきたすことになります。

交通事故による手や指の怪我には、手首の骨折(橈骨遠位端骨折など)や、指の骨折、脱臼、腱の断裂など様々なものがあります。治療によって元通りに回復すれば良いのですが、懸命なリハビリを行っても「手首が以前のように曲がらない」「指が変形したまま固まってしまった」「握力が戻らない」「雨の日になると痛む」といった症状が残ってしまうことが少なくありません。

このように、治療を続けても症状が改善しなくなった状態(症状固定)で残っている障害については、適切な「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益(将来の収入減少分に対する補償)を受け取ることができます。

しかし、手や指の後遺障害認定基準は非常に細分化されており、わずかな関節の動きの差や、欠損した部位の長さによって、認定される等級(=賠償額)が大きく変わります。

本記事では、交通事故による手・指の骨折等で残りやすい後遺障害の種類や等級認定の基準、そして適正な補償を受けるためのポイントについて、弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。

手・指の骨折に関するQ&A

まずは、手や指を骨折された被害者の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1:手首の骨折は治りましたが、以前ほど手首を反らせなくなりました。これは後遺障害になりますか?

はい、「機能障害(可動域制限)」として認定される可能性があります。

骨折の影響で関節が固まり、動く範囲(可動域)が狭くなることを「機能障害」といいます。

手首(手関節)の場合、怪我をしていない方の手首(健側)と比べて、可動域が2分の1以下になっていれば10級10号、4分の3以下になっていれば12級6号が認定される可能性があります。単に「動きにくい」という自覚症状だけでなく、医師による厳密な計測が必要です。

Q2:小指を骨折し、曲がったまま伸びなくなってしまいました。仕事に支障があるのですが、等級は認定されますか?

指の機能障害として、等級認定の対象となります。

指の関節が動かなくなったり、可動域が半分以下になったりした場合は、「指の用(よう)を廃したもの」として扱われます。

小指1本が用を廃した場合は13級6号、もし完全に小指を失ってしまった場合(欠損障害)は12級10号となります。どの指が、どのような状態になったかによって等級が細かく決められています。

Q3:骨はくっつきましたが、手首に痛みが残っています。握力も事故前の半分くらいしか出ません。

痛みは「神経症状」として認定される可能性がありますが、握力低下単独での認定は困難です。

骨折部の変形癒合や神経損傷により痛みが残っている場合、医学的に証明できれば12級13号、医学的に説明可能であれば14級9号が認定される可能性があります。

一方で、「握力の低下」だけを理由に後遺障害等級が認定されることは、実務上ほとんどありません。ただし、痛みのせいで力が入らない、あるいは神経麻痺の結果として握力が低下しているといった場合は、痛みや神経麻痺の症状として評価されることになります。

解説:手関節(手首)の後遺障害等級

ここからは、部位や症状ごとに具体的な認定基準を解説します。まずは手首(手関節)についてです。

交通事故では、ハンドルを持ったまま強い衝撃を受けたり、転倒した際に手をついたりすることで、橈骨(とうこつ)や尺骨(しゃっこつ)といった前腕の骨の手首側を骨折することがよくあります。

1. 手関節の機能障害(可動域制限)

手首の関節の動きが悪くなった場合です。原則として、健側(怪我をしていない側)の可動域角度と比較して判断します。

等級認定基準具体的な状態
第10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの手首の可動域が健側の2分の1以下に制限された場合
第12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの手首の可動域が健側の4分の3以下に制限された場合

測定方法の注意点

手首の動きには「掌屈(手を内側に曲げる)・背屈(手を甲側に反らす)」と「橈屈(親指側に曲げる)・尺屈(小指側に曲げる)」があります。

原則として、主要運動である掌屈・背屈の合計角度で判断します。ただし、掌屈・背屈が基準値(健側の制限の枠内)をわずかに上回る場合でも、参考運動である橈屈・尺屈の制限が著しければ、等級が認定されることもあります。

2. 手関節周辺の変形障害

骨折した骨が、ズレたままくっついてしまった(変形癒合)場合や、骨がつながらずグラグラしている(偽関節)場合です。

第12級8号:長管骨に変形を残すもの

橈骨や尺骨の骨折部に変形癒合があり、外部から見て変形がわかる場合や、レントゲン等で変形が確認できる場合に認定されます。手首が曲がって見える、骨が出っ張っているといったケースです。

第7級9号 / 第8級8号:偽関節(ぎかんせつ)を残すもの

骨癒合が完了せず、関節ではない部分が関節のように動いてしまう状態です。常に硬性補装具が必要な重度なものは7級、それ以外は8級となります。

3. 神経症状(痛み・痺れ)

可動域制限や変形が認定基準に達しない場合でも、痛みが残っている場合は以下の等級が検討されます。

  • 第12級13号: 局部に頑固な神経症状を残すもの(画像検査などで痛みの原因が他覚的に証明できるもの)
  • 第14級9号: 局部に神経症状を残すもの(事故状況や治療経過から痛みの存在が医学的に説明できるもの)

特に、手首の小指側にある軟骨組織であるTFCC(三角線維軟骨複合体)を損傷した場合、レントゲンには写らないためMRI検査が必要不可欠です。発見が遅れると「単なる捻挫」として扱われ、後遺障害が認められないリスクがあるため注意が必要です。

解説:手指の骨折と後遺障害等級

次に、指の後遺障害について解説します。

指の後遺障害は、「指を失った場合(欠損障害)」と「指の機能が失われた場合(機能障害)」に分けられます。また、親指は他の指よりも機能的に重要であるため、他の指よりも重い等級が設定されています。

1. 手指の欠損障害

指の一部、または全部を失ってしまった場合です。

等級認定基準(抜粋)具体的な状態
第3級5号両手の指の全部を失ったもの両手とも全ての指を失った場合
第6級8号1手の5の手指を失ったもの片手の全ての指を失った場合
第8級3号1手の親指を含み2以上の手指を失ったもの片手の親指+人差し指などを失った場合
第9級12号1手の親指を失ったもの親指の指節間関節(IP関節)以上を失った場合
第11級8号1手の人差し指、中指または薬指を失ったもの近位指節間関節(PIP関節)以上を失った場合
第12級9号1手の小指を失ったもの近位指節間関節(PIP関節)以上を失った場合
第13級7号1手の親指の指骨の一部を失ったもの親指の骨の一部を失った場合(遊離骨折等)

※「指を失った」とは、親指であれば指節間関節、その他の指であれば近位指節間関節より根元から失った場合などを指します。切断の場所によって細かく定義されています。

2. 手指の機能障害(用を廃したもの)

指自体は残っているものの、動かなくなったり、感覚がなくなったりして、指としての機能が失われた場合です。

「手指の用を廃した」とは、以下のいずれかに該当する場合を指します。

  1. 手指の末節骨(指の先端の骨)の長さの2分の1以上を失ったもの。
  2. 中手指節関節(MP関節)または近位指節間関節(PIP関節)(親指は指節間関節)の可動域が、健側の2分の1以下になったもの。
  3. 手指の末節の指腹部(指の腹)や側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失したもの(感覚が全くない)。
等級認定基準(抜粋)
第4級6号両手の指の全部の用を廃したもの
第7級7号1手の5の手指の用を廃したもの
第8級4号1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの
第9級13号1手の親指を含み2以上の手指の用を廃したもの
第10級7号1手の親指の用を廃したもの
第12級10号1手の人差し指、中指または薬指の用を廃したもの
第13級6号1手の小指の用を廃したもの

※例えば、交通事故で指の腱を断裂し、手術をしたものの指が曲がったまま伸びなくなった場合や、逆に伸びたまま曲がらなくなった場合などが該当します。

3. 指の末節骨骨折等による神経症状

指の先端部分(末節骨)を骨折した場合などは、可動域制限の基準には満たないものの、痛みや痺れが残ることがあります。この場合は、手首と同様に12級13号または14級9号の認定を検討します。

弁護士に相談するメリット

手や指の後遺障害認定において、弁護士に相談・依頼することには、以下のような具体的かつ大きなメリットがあります。

1. 正確な可動域測定のサポート

手や指の機能障害(可動域制限)の認定において最も重要なのは、「可動域の角度」です。

認定基準は「2分の1以下」「4分の3以下」と数値で明確に決まっています。例えば、健側が180度動く場合、患側が90度なら「2分の1」で10級の可能性がありますが、95度だと12級、あるいは非該当になる可能性があります。

医師は治療の専門家ですが、後遺障害等級認定の専門家ではありません。そのため、測定方法が厳密でなかったり、補助運動(無理やり動かした場合の角度)と自動運動(自力で動かせる角度)の区別が曖昧だったりすることがあります。

弁護士は、正しい測定方法で計測されているか、診断書の数値に矛盾がないかをチェックします。

2. 適切な後遺障害診断書の作成依頼

「手指の用を廃した」という認定を受けるためには、単に「動かない」と書くだけでなく、その原因(神経断裂、関節の強直など)が医学的に記載されていなければなりません。

弁護士は、どのような検査結果(MRI、神経伝導速度検査など)を添付し、どのような所見を診断書に記載してもらうべきかについて、主治医に伝えるためのアドバイスを行います。

3. 賠償金の増額交渉(弁護士基準の適用)

後遺障害等級が認定されると、等級に応じた「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」が支払われます。しかし、相手方の保険会社は、自社の基準(任意保険基準)で算出した低い金額を提示してくるのが通常です。

【後遺障害慰謝料の比較例(10級の場合)】

  • 自賠責基準: 190万円
  • 任意保険基準(推定): 300万円程度
  • 弁護士基準(裁判基準): 550万円

このように、弁護士が代理人として交渉し、「弁護士基準」を適用することで、慰謝料だけで数百万単位の増額が見込める場合があります。特に手や指の障害は、仕事への影響(労働能力喪失)が大きいため、逸失利益の計算においても専門的な主張・立証が金額を大きく左右します。

まとめ

交通事故による手や指の骨折は、たとえ小さな骨折であっても、繊細な機能を持つ手においては大きな障害となり得ます。

  • 手首の骨折: 可動域制限の角度測定が命。TFCC損傷などの見落としにも注意。
  • 指の骨折: 欠損障害と機能障害(用を廃したもの)の区分を理解する。親指は特に等級が高い。
  • 等級認定: わずかな角度の差や、診断書の記載内容一つで結果が変わる。

「保険会社から提示された金額が妥当かわからない」「指が動かしにくいのに、後遺障害は無理だと言われた」といったお悩みをお持ちの方は、示談書にサインをする前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故の被害者救済に力を入れており、適正な後遺障害等級の認定と賠償金の獲得に向けて、専門チームが全力でサポートいたします。

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