はじめに
交通事故の慰謝料は、算定表に基づく基準額が一律に適用されるわけではありません。事故の態様や加害者の行為が悪質である場合には、基準額を上回る慰謝料が認められることがあります。
本記事では、慰謝料が増額される代表的なケースを、裁判例とともに解説します。
慰謝料が増額される仕組み
交通事故の慰謝料は、入通院慰謝料であれば「赤い本」の算定表、後遺障害慰謝料であれば等級に応じた基準額が目安となります。しかし、これらの基準額はあくまで標準的な事案を前提としたものであり、加害者側に著しい非がある場合や、被害者の苦痛が通常を超える事情がある場合には、基準額からの増額が認められます。
増額の幅は事案によって異なりますが、基準額の20%から30%程度の増額が認められる例が多く、悪質性が著しい場合にはそれ以上の増額が認められることもあります。
飲酒運転による事故
加害者が飲酒運転をしていた場合は、その行為の悪質性から慰謝料が増額されるのが一般的です。飲酒運転は道路交通法で厳しく禁止されており、刑事責任においても危険運転致死傷罪の適用が問題となる重大な違反行為です。
裁判例では、飲酒運転による事故で死亡慰謝料が基準額を大幅に上回る金額で認定された例が複数あります。たとえば、基準額2,800万円のところ、飲酒運転の悪質性を考慮して3,200万円が認定されたケースがあります。
あおり運転・危険運転による事故
あおり運転や著しい速度超過など、危険運転に起因する事故の場合も、慰謝料の増額事由となります。あおり運転は令和2年の道路交通法改正で「妨害運転罪」として処罰対象となり、社会的にもその悪質性が認知されています。
裁判例では、高速道路上でのあおり運転が原因で死亡事故が発生したケースにおいて、通常の基準額を大幅に超える慰謝料が認められています。
無免許運転による事故
無免許運転は、運転する資格がない者が車両を運行するという、道路交通秩序を根本から無視する行為です。無免許運転による事故では、その違法性の高さから慰謝料の増額が認められます。
信号無視・大幅な速度超過
赤信号を殊更に無視して交差点に進入した場合や、制限速度を大幅に超過していた場合も、加害者の過失が著しいとして慰謝料の増額事由となります。
ひき逃げ
事故を起こした後、被害者を救護せずにその場を立ち去るひき逃げは、救護義務違反という重大な違法行為です。被害者がすぐに救護されていれば助かった可能性がある場合や、長時間放置されたことで精神的苦痛が増大した場合には、慰謝料の増額が認められます。
加害者の不誠実な態度
事故後の加害者の態度も、慰謝料の増減に影響します。具体的には、事故の責任を否認し続ける、虚偽の供述をする、被害者への謝罪が一切ない、証拠を隠滅しようとするなどの行為があった場合、慰謝料の増額事由として考慮されることがあります。
裁判例では、加害者が事故態様について虚偽の主張を繰り返し、被害者の精神的苦痛を増大させたとして、慰謝料が増額された事例が存在します。
被害者側の特別な事情による増額
加害者側の悪質性だけでなく、被害者側に特別な事情がある場合にも慰謝料が増額されることがあります。
たとえば、被害者が妊娠中で、事故により流産や死産に至った場合、幼い子どもを持つ母親が重度の後遺障害を負った場合、事故により婚約が破談になった場合などです。
増額を獲得するために必要なこと
慰謝料の増額を獲得するためには、増額事由にあたる事実を具体的に立証する必要があります。刑事記録(実況見分調書、供述調書など)や目撃者の証言、ドライブレコーダーの映像などが重要な証拠となります。
保険会社との示談交渉では、増額事由の主張が認められにくい傾向があります。増額事由がある事案では、弁護士を通じた交渉や裁判手続を検討することが有効です。
まとめ
飲酒運転、あおり運転、ひき逃げ、加害者の不誠実な態度などの悪質な事情がある場合には、慰謝料の増額が認められる可能性があります。増額を獲得するためには、具体的な事実の立証が不可欠です。該当する事情がある場合は、弁護士に相談のうえ、適正な請求を行ってください。
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