交通事故でご家族を亡くされた場合、葬儀や役所の手続と並行して、警察、加害者側の保険会社、勤務先などとの連絡が続き、何から手を付ければよいか分からなくなることがあります。
最初に整理したいのは、事故に関する資料と連絡先、請求できる損害と請求できる人、相続関係、そして家族の中で誰が連絡の窓口になるかです。損害賠償の請求には時効がありますが、一般に数年の期間があり、すぐに示談をする必要はありません。一方で、事故の資料や記録は早めに確保しておくことが大切です。
この記事では、死亡事故の遺族が最初に確認したい事項を、賠償請求と相続の両面から説明します。
事故資料と連絡の整理
事故の後、次の事項を一つの記録にまとめておくと、その後の手続が進めやすくなります。
- 事故の日時と場所、事故を扱った警察署と担当者
- 加害者の氏名と連絡先、加害者側の保険会社と事故の受付番号
- 亡くなった方が加入していた保険(自動車保険の人身傷害保険、生命保険など)
- 通勤中や仕事中の事故であれば、勤務先の担当者
- 葬儀費用などの領収書
加害者の刑事手続が進む場合、警察や検察庁が作成した事故状況の記録は、民事の損害賠償でも重要な資料になります。一定の事件では、遺族が刑事裁判に参加できる制度もあります。刑事手続と民事の賠償は別の手続であり、それぞれ進行を確認していくことになります。
損害項目と請求できる人
死亡事故で請求できる主な損害には、亡くなった方が将来得られたはずの収入(死亡逸失利益)、慰謝料、葬儀費用、亡くなるまでの治療費などがあります。
慰謝料には、亡くなった方本人の慰謝料と、配偶者、父母、子など近親者自身の慰謝料があります。本人の損害賠償請求権は相続人が相続するのに対し、近親者の慰謝料は相続とは別に、近親者本人が請求するものです。請求や給付の種類ごとに、請求できる人と手続を整理すると次のとおりです。
| 請求・給付 | 請求できる人 | 主な手続・資料 |
| 加害者への損害賠償(本人の損害) | 相続人 | 戸籍謄本等、損害の資料 |
| 近親者自身の慰謝料 | 配偶者、父母、子など | 戸籍謄本等、生活状況の資料 |
| 自賠責保険への請求 | 相続人など | 請求書、交通事故証明書、死亡診断書、戸籍謄本等 |
| 労災保険の遺族給付(通勤中・業務中の場合) | 受給資格のある遺族(相続人とは範囲が異なる) | 労働基準監督署への請求 |
| 生命保険・人身傷害保険 | 契約で定められた受取人など | 保険会社所定の書類 |
生命保険の死亡保険金は、契約で定められた受取人が受け取るもので、損害賠償とは別に扱われるのが原則です。人身傷害保険は契約内容によって支払の基準や賠償との調整が異なるため、約款を確認します。
相続関係の確認
損害賠償の請求を進めるには、誰が相続人かを確定する必要があります。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めて相続人を確認します。法務局の法定相続情報証明制度を利用すると、その後の手続で戸籍一式を何度も提出する負担を減らせる場合があります。
亡くなった方に借入れなどがある場合、相続放棄を検討することもあります。相続放棄には自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3か月の期限があり、放棄すると本人の損害賠償請求権も承継しません。ただし、近親者自身の慰謝料は相続とは別のものです。放棄を検討する場合は、期限との関係で早めに相談してください。
家族内の窓口と相談
相続人が複数の県に住んでいる場合は、加害者側の保険会社との連絡窓口となる人を決め、受け取った書類を他の相続人と共有する方法を決めておくと、情報の行き違いを防げます。
弁護士に依頼する場合、相続人の全員が依頼するのか、一部の人が依頼するのかを確認します。相続人の間で意見が分かれている場合など、一人の弁護士が全員の代理をすることが適切でない場合もあります。
よくある質問
Q 加害者側の保険会社からの連絡に、すぐ応じる必要がありますか?
A 家族の中で窓口を決め、資料を整理してから対応しても差し支えありません。示談を急ぐ必要はありませんが、時効の期限は確認しておいてください。
Q 刑事裁判に関わることはできますか?
A 一定の事件では、遺族が検察官を通じて申し出て、刑事裁判に参加できる制度があります。利用の可否は事件の内容によるため、検察庁の担当者に確認してください。
Q 相続人が遠方に住んでいます。全員で相談に行く必要がありますか?
A 必ずしも全員が同席する必要はありません。ただし、誰が依頼者になるのか、他の相続人にどのように説明するのかは、最初の相談で確認します。
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