はじめに
交通事故で負傷した被害者が長期間通院しても痛みやしびれ、可動域制限などの症状が残る場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。後遺障害と認められれば、後遺障害慰謝料や逸失利益などで大幅な賠償を得られる一方、認定基準は厳格であり、症状の特徴や医学的根拠がしっかり示されていないと不認定や低い等級で抑えられるリスクもあります。
本稿では、後遺障害認定につながりやすい症状の特徴を紹介し、具体的には「しびれ」「痛み」「可動域制限」など、どのように医師の診断書や検査データに落とし込むべきかを解説します。適切な治療と医証の整備により、被害者が正当な補償を受けられるご参考となれば幸いです。
Q&A
Q1:しびれや痛みがあっても、レントゲンやMRIに異常が映らない場合、後遺障害は認められないのでしょうか?
画像所見がなくても、神経学的テストで異常が確認される場合や、日常生活の支障を証明できれば後遺障害が認められる可能性はあります。むちうち(頸椎捻挫)などは画像上異常が出にくいですが、通院実績や神経根症状のテスト結果がカギとなります。
Q2:可動域制限とは具体的に何を指すのでしょう?
事故で肩や腰、膝などの関節可動域が狭くなり、正常な角度まで動かせない状態を指します。医師が角度計測を行い、どのくらい動きが制限されているかを客観的データにすることで後遺障害等級の認定材料になります。
Q3:しびれや痛みは主観的な症状ですが、どうやって保険会社に納得させるのですか?
MRIやCT、神経学的テスト(ジャクソンテストなど)で客観的な根拠を示すのが効果的です。また、医師が定期的に診断し、症状の一貫性をカルテに記載していれば、保険会社が過小評価しづらくなります。
Q4:事故後、腰や足にしびれがあるけれど、整形外科で「ただの筋肉痛」と言われました。どうすればいい?
症状が続くならセカンドオピニオンを別の整形外科や専門医で受けるのが賢明です。神経根ブロックテストなど専門的検査を行い、明確にしびれの原因を特定できれば、後遺障害認定も狙えます。
Q5:後遺障害等級を認定されるにはどんな準備が必要ですか?
症状固定(これ以上大きな改善が見込めない)と医師が判断した後、後遺障害診断書を作成してもらいます。そこに、しびれや痛みの場所・程度、可動域制限の角度、検査データなどを詳細に記載。弁護士のアドバイスで記載漏れを防ぎましょう。
Q6:認定結果に納得がいかない場合、どうすればいいですか?
異議申立の手続きを踏めます。追加の検査結果や専門医の意見書を添付して再審査を求められます。弁護士に相談し、どのような資料を用意すべきか検討するのが合理的です。
解説
しびれ(神経症状)
- 神経根症状と末梢神経症状
- 頸椎や腰椎が損傷し、神経が圧迫されて手足にしびれや痛みが生じる。
- MRIで椎間板ヘルニアや神経根の圧迫が確認できる場合が多いが、画像に出にくいケースもある。
- 神経学的テスト
- ジャクソンテスト、スパーリングテスト、ラセーグテストなどでしびれの誘発・増幅を確認。
- テスト結果がカルテや後遺障害診断書に記録されれば、有力な認定資料となる。
- 通院実績の一貫性
- しびれがあるなら、症状が継続していることを定期的に医師へ申告し、リハビリや物理療法を受け続ける。
- 途中で放置すると、本当にしびれがあるのか疑われやすい。
痛み(頸椎捻挫・腰椎捻挫など)
- むちうちの特徴
- 首や肩の痛みが長期間続くが、レントゲンには異常が映らないことが多い。
- MRIで軟部組織の損傷を確認する場合もあるが、はっきりした異常所見が得られないケースもしばしば。
- 医師の診察と痛みの評価
- VAS(視覚アナログスケール)などで痛みの程度を数値化してもらうと良い。
- 医師が定期的に「痛みがある」とカルテに書いてくれれば、後遺障害審査で「症状の一貫性」を立証しやすい。
- 生活支障への言及
- 痛みで家事や仕事がどれだけ制限されるかを、日常生活動作を含めて医師に報告。後遺障害診断書にもこの点の記載があると高い評価を得やすい。
可動域制限
- 計測方法
- 肩や肘、膝、腰などの関節可動域を角度計(ゴニオメーター)で計測し、健側との比較を行う。
- 例えば、健側が120度動くが患側が80度しか動かない場合、可動域制限は40度と判定される。
- 後遺障害等級
- 可動域制限は1/2以下であれば○級、3/4以下であれば○級など、部位ごとの基準が存在。
- 正確な角度計測がカルテや後遺障害診断書に明記されるのが大切。
- リハビリの継続
- 可動域制限があっても、適切なリハビリで改善される余地があるなら症状固定を先延ばしにする方法も。
- 十分に回復努力をしたうえで残った制限として、後遺障害が認定されやすい。
弁護士に相談するメリット
- 医学的根拠の整理
弁護士が医療機関や専門医と連携し、MRI・CT・神経学的テスト結果を見逃さずに後遺障害診断書に反映。 - 症状固定の適切なタイミング
しびれや痛み、可動域制限がまだ改善の見込みがある段階で症状固定にならないよう、医師と協議しつつ保険会社の打ち切りを阻止。 - 異議申立や裁判での立証
万が一、認定結果に納得いかない場合も、追加検査や専門医意見書を手配し、異議申立や法的手段をサポート。 - 示談交渉での増額
後遺障害等級が正しく認定されれば、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も大きく増額。弁護士が裁判所基準を主張し、保険会社の低評価を覆す。 - 弁護士費用特約
自動車保険に特約があれば費用負担を心配せず依頼でき、しびれや痛みなどの症状を正当に評価してもらう可能性が高まる。
まとめ
交通事故後にしびれ・痛み・可動域制限などの症状が長引く場合、後遺障害認定を受けられるチャンスがあります。しかし、そのためには医師の診断書や画像所見、神経学的テスト結果をしっかり揃え、症状の一貫性と程度を客観的に示さなければなりません。
- しびれ
神経学的テストやMRI所見がカギ - 痛み
定期的に医師へ申告、カルテに記録してもらう - 可動域制限
ゴニオメーターなどで正確に角度計測して書類化 - 通院実績の継続
医師の管理下でリハビリに取り組み、仮に改善しなければ「それでも回復しなかった」証明となる
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、後遺障害手続きのノウハウを活かし、被害者が最適なタイミングで症状固定し、正しい等級認定を受けられるようサポートします。痛みやしびれを軽視せず、早期に専門家に相談して後悔のない示談交渉を進めましょう。
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