交通事故発生から解決までの流れ 2 入通院治療時のポイント

2 入通院治療時のポイント

① 事故時〜1ヶ月
□ 事故直後の受診
□ 負傷した箇所すべての受診
□ 健康保険の利用
□ 労災保険の利用
□ 弁護士費用特約
□ 整骨院(接骨院)への通院
□ 事故証明書の事故区分(物件事故/人身事故)
② 事故時〜6ヶ月
□ 通院頻度
□ 個室の利用
□ タクシーの利用
□ 物損事故の示談
□ 警察からの事情聴取・実況見分調書への対応
③ 事故後6ヶ月〜
□ 保険会社からの治療費の打切
□ これまでの診断内容の確認

【事故時〜1ヶ月】

□ 事故直後の受診

警察等への報告が終わったら,できる限り早く病院を受診するべきです。

事故から数日以上経ってから受診すると,事故と怪我との因果関係を争われやすくなります。

□ 負傷した箇所すべての受診

事故直後に受診する際には,痛みがある箇所はすべて診断してもらうようにしましょう。

頭痛と腰痛,2箇所あるにもかかわらず,最初の受診時には頭痛しか訴えなかった場合,後日腰痛を訴えても,事故との因果関係を否定され,治療費を支払ってもらえないこともあります。

□ 健康保険の利用

健康保険を利用できる場合には,治療費の負担を抑えるためにも,積極的に検討しましょう。

病院によっては,健康保険の利用に消極的なこともありますが,健康保険の利用は可能ですので,その旨説明して対応しましょう。

□ 労災保険の利用

通勤中の事故や業務中の事故の場合,労災保険を利用することが可能です。

労災保険を利用できる場合,特別給付金があるほか,自賠責保険による後遺障害等級認定とは別に,労災保険による後遺障害等級認定を受けることが可能です。

また,自賠責保険による後遺障害等級認定よりも,労災保険による後遺障害等級認定のほうが,被害者保護に厚く,重い後遺障害等級が出やすい傾向にあります。

□ 弁護士費用特約の確認

弁護士費用特約を利用することができれば,最大300万円までは弁護士費用の負担がかからないことになります。

弁護士費用特約は,①被害者本人が加入している場合だけでなく,②配偶者,③同居の親族,④別居の両親,⑤事故車両,が加入している場合にも利用できることがあります。

ご本人が入っているかどうかだけでなく,上記②〜⑤についても確認するようにしましょう。

□ 整骨院(接骨院)への通院

整形外科だけでなく整骨院(接骨院)にも通院する場合には,治療の必要性・相当性が争われることがあります。

病院まで遠い場合や,病院の対応時間が短いために通院できない場合,整骨院(接骨院)に通院したいという要望は少なくありませんが,後日保険会社から争われる可能性があることを念頭に置き,整形外科医等から,整骨院(接骨院)への通院の必要性があることの意見書等を書いてもらうようにしましょう。

□ 事故証明書の事故区分(物件事故/人身事故)

警察へ交通事故を届ける場合,物件事故か人身事故のいずれかに区分することになります。

交通事故で怪我をした場合には,必ず人身事故で届をするようにしましょう。

物件事故のままとなると,後日,事故と怪我との因果関係を争われやすくなります。

また,物件事故から人身事故へと切り替えることは可能ですが,事故から時間が経過すると,警察も切り替え手続には難色を示します。

「交通事故証明書」を見れば,物件事故か人身事故扱いかどうかが分かります。

物件事故となっているようでしたら,すぐに人身事故に切り替えるようにしましょう。

【事故1ヶ月後〜6ヶ月】

□ 通院頻度

慰謝料の算定基準を満たす通院回数は,おおよそ週2〜3回程度とされています。

十分な補償を受けるためには,この通院頻度が一応の目安となります。

また,1ヶ月前後通院をしていないと,保険会社から,「そろそろ治療の必要はないのでは。」と指摘され,治療費の打切をされやすくなります。

□ 個室の利用

入院治療をしている場合,個室を利用する場合には,個室の利用料が保険で対応されるかどうかは慎重に検討する必要があります。

後日,保険会社が個室の利用料については事故との因果関係を争ってくることもあり得ます。

個室を利用する場合には,担当医から個室を利用する必要がある旨の意見書を書いてもらうようにしましょう。

□ タクシーの利用

個室の利用と同様,通院等にあたりタクシーを利用する場合にも,タクシーの利用料金が支払われるかどうかは慎重に検討する必要があります。

タクシーの利用料金も,保険会社が事故との因果関係を争ってくることがあります。

タクシーを利用する場合には,担当医からタクシーを利用する必要がある旨の意見書を書いてもらうようにしましょう。

□ 物損事故の示談

治療継続中であっても,物損事故の示談を先行して進めることがあります。

物損事故の示談を先行する場合,過失割合には特に注意する必要があります。

人身損害と比べて,物損は金額も小さいことから,過失割合に多少争いがあっても,金額に大差はないため,安易に示談に応じやすいところがあります。

ですが,物損事故について納得がいかない過失割合で合意した場合,人身損害についても,物損事故について合意した過失割合を前提に交渉を進められやすくなってしまいます。

物損事故についても安易に示談をするのではなく,果たして妥当な過失割合と言えるかどうかを十分検討してから示談をする必要があります。

□ 警察からの事情聴取・実況見分調書への対応

人身事故扱いの場合,警察が刑事事件として捜査を行います。

そして,この捜査の過程で,事情聴取を行ったり,実況見分調書を作成したりします。

事情聴取の結果作成される供述調書や,実況見分調書は,過失割合が争いになる場合,信用性の高い証拠となります。

供述調書や実況見分調書の内容によって,過失割合の判断が左右されかねません。

そこで,供述調書や実況見分調書を作成する場合には,改めて事故当時の状況を整理しておく必要があります。

【事故後6ヶ月〜 】

□ 保険会社からの治療費の打切

事故から数ヶ月経過すると,保険会社によっては治療費の打切を打診してくることがあります。

特に,事故から6ヶ月程度経過してくると,保険会社から治療費の打切を打診してくることが多くなります。

もっとも,保険会社から治療費の打切を打診されたとしても,いまだに痛みが継続しているために,治療の必要がある場合も少なくありません。

このような場合,主治医と協議し,まだ治療の必要があるようでしたら,その旨の意見書を作成してもらうなどの対応をする必要があります。

□ これまでの診断内容の確認

この頃になると,後遺障害等級認定申請も視野に入れていくことになります。

事故直後から代理人として対応している場合には,治療継続中も自覚症状等をしっかりと診断書に記載してもらうようアドバイスすることができますが,事故後数ヶ月経過してから相談に来たような場合には,それまでの診断内容についてアドバイスすることはできません。

後遺障害等級を獲得できる可能性があるかどうか,また相談者が訴える症状がしっかりと診断書等に記載されているかどうかを確認するためにも,これまでの治療内容を確認するようにしましょう。

具体的には,各医療機関に連絡し,カルテ等の開示請求をする方法が考えられます。

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