確定申告で所得を実際より低く申告した事業所得者の方は、交通事故にあうと、保険会社から休業損害の賠償額を低く見積もられてしまいます。
これを回避するには、実際の収入が申告額より上回っていたことを高度の確実性をもって立証しなければなりません。
申告額が間違っていたとして、前年度の申告の修正申告を行なえばいいのではないか、とも思えます。
しかし、修正申告すると過少申告加算税などの税務上の制裁措置があります。また、裁判所は、交通事故の後に行われた修正申告については賠償額の増額を目的としていると考えられ信ぴょう性に疑いがあるとして基本的にその額そのままでは採用しません。
そうすると修正申告を行うことは全く意義がないのか、といえばそうではありません。
事故後の修正申告により、一応、当初の確定申告の額よりは収入があったのではないかという推定が働きます。そして、当初の申告、修正申告共に信ぴょう性がないとして、賃金センサスなどによる基礎収入の認定が行われやすくなります。
また、裁判例では、修正申告があり、その他の各種の証拠から、修正申告通りの収入があったことが認められるとして、修正申告にそのまま基づいた賠償額を認めたものもあります(大阪地判平成12年1月27日)。
過少申告を行ってしまったから、賠償額も低くならざるを得ない、と諦める必要はありません。証拠が揃っていれば、提示額を覆すことも可能ですし、十分とはいかなくとも賠償額が増額することもあります。
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