事業所得者の方が事故に遭い、一時休業、又は廃業するに至った場合、それに伴って生じる損害が休業損害に含まれるか、判断の難しい場合があります。
例えば、休業ののち事業を再開する場合、いわゆる客離れが起こり直ちに従前の売上にまで至らないことがあります。
このような直接的でない損害も、因果関係を立証できれば休業損害として認められることがあります。細かい損害額の立証が困難なときは、概括的な認定が行われます。
裁判例では、飲食店経営者の事故につき、出前注文に売り上げの7割を依存していたという事情から、客離れによる売り上げ減少損害として100万円を認めたもの(横浜地判平5.12.16)、同様に飲食店経営者の事故につき、客離れを認めつつ損害額が不明確なことから、再開後半年につき4割の売り上げ減、その後の半年につき1割の売り上げ減を認めたものがあります(東京地判昭62年6月19日)。
また、事業を再開するにあたって広告を出すなどの特別の支出をした場合も、相当性のある限り損害額として認められます。
裁判例では、寿司店経営者である被害者が再開に当たり広告を出し顧客に掛布団等を送った事案で、広告料についてのみ因果関係を認めたものがあります(東京昭和61年10月30日)。
続いて廃業に至ってしまった事業所得者の方は、逸失利益は別にして、事故前に事業のためにした設備投資のうち、無駄になってしまったと認められる部分を休業損害として賠償を求める事ができます。
裁判例を見ると、美容院の経営について、事故から約2年前の開業時に支出した費用のうち5割を損害として認めたもの(高松高判平成13年3月23日)、レンタルビデオ店経営者が廃業した事案で、ビデオを他店へ売却できることなども考慮し、事故前3年間のビデオ購入費の2割を損害として認めたものがあります(東京地判平成21年10月27日)。