事業所得者の交通事故による休業損害では、賠償額は基本的に前年の確定申告額に基づいて算出されます。
しかし自営業の方は所得税を抑えるために経費を水増しし利益を低く抑えている方がかなり多くいらっしゃいます。申告額に基づいて計算をすると実際と乖離したかなり低額な賠償額しか得られないという結果になってしまいます。
このような場合前年の申告額に基づく賠償に甘んじるしかないのでしょうか。
経費水増し申告と交通事故の賠償は別個の問題ですので、裁判実務では、申告額よりもより多くの収入があった、という主張をすることが可能となっています。また、申告額が相当に低く、生活を維持することが困難と思われるような事案、または収入があったのに申告をしなかった事例でも同様の主張をする事ができます。
裁判例では前年申告額が130万円であったが一級造園師の資格を有していること、車を購入しアルバイトを雇っていたことなどの事情から相当額の利益を上げていたとして450万円の基礎収入を認定したものがあります。
また、ストリップダンサーの女性で無申告であったが高額な所得を得ていたことは確かであったケースで、額の証明が困難であり信義則上これを認めることはできないとして平均賃金に基づいて算定を行ったものもあります。
裁判所は、申告されなかった所得についてはその立証について相当高度なものを要求するという運用がされています。様々な証拠を集め準備していくことが必要になりますので、このような場合、弁護士に相談ください。