交通事故事案における民事上の責任原因には、二つの根拠規定があります。
1 自賠法3条
自動車の運行による人身事故のみが対象となります。
物損事故の場合は対象となりませんので、注意する必要があります。
2 不法行為の規定(民法709条、715条等)
損害賠償請求全般における根拠規定となります。
物損事故の場合には、自賠法3条を根拠とすることができませんので、こちらの規定を利用することになります。
このように、民事上の責任原因には、①自賠法3条と②民法上の不法行為規定の2つがありますが、両者の最大の違いは立証責任の転換にあります。
自賠法3条の場合、被害者側で運行供用者の故意・過失を立証する必要はありません。
言い換えれば、運行供用者側で自賠法3条但書の免責事由の全てを立証できない限り、賠償責任を負うということになります(立証責任の転換)。
一方、民法上の不法行為規定の場合、被害者側で加害者の故意・過失の主張・立証が必要となります。
両者の違いは、過失の立証が困難なケースでその違いが顕著に現れます。
具体的には、事故当事者の双方が「自分が青信号、相手が赤信号である。」と主張するようなケースです。
どのような根拠規定に基づいて損害賠償請求するのかによって結論が異なり得ますので、ご注意ください。