休業中に役員報酬が支払われている場合

会社役員が事故に遭われた場合、休業損害はどのように算定されるかみてみましょう。

会社役員は、交通事故により業務執行を続けられない状態になってしまっても、原則として役員報酬は支払われ続けます。会社役員は会社法によって規律され、労働法と違い、一度株主総会・取締役会の決議によって報酬額が定められると、それは休職などの事情により左右されることはない扱いになっているからです(最判平成4年12月18日)。

この場合、役員の方本人は報酬を現実に受け取っているため、収入減はありません。損害を受けているのは会社です。役員に報酬を支払っているのに当該役員による業務執行という労務を受けておらず、損害が生じています。したがって、会社は、役員とは別に、交通事故の加害者又は保険会社に対して損害賠償を請求することができます。

では、会社は高額な役員報酬をそのまま損害として請求できるでしょうか。

この場合、報酬の内訳について検討されることになります。会社役員の報酬は、役員としての労務対価部分だけでなく、会社経営者として受領する利益の配当部分があるからです。後者については、役員の休業により失われるものではないので、損害算定の基礎から除外します。

どの程度の部分が労務対価なのかについては、会社の規模や役員の地位、他の役員、従業員との比較、類似の法人の役員報酬の支給状況等から総合的に判断されます。

なお、会社によりますが、役員規定に役員の欠勤による報酬の減額が定められていることがあり、これに基づく取締役会決議により報酬を減額されることがあります。また、事故を契機として臨時株主総会が開かれ、当該役員の同意を取った上、役員の解任決議又は報酬の減額が行われることもあります。このようなときは、役員その人は交通事故により役員報酬を減額されるという損害を受けていますので、休業損害として賠償を求めることができます。

しかし、この場合も、減額された報酬額がそのまま損害となるものではなく、上述のように報酬における労務対価部分が何割なのか、客観的事情から総合的判断が行われます。

役員の方が休業損害を請求する場合、報酬額が減額されたという事実を証明するために、取締役会・株主総会議事録等が必要になってきます。また、小規模会社の場合、保険会社から調査員が派遣され、本当に損害が存在するのか調査が行われることもあります。

総じて、役員報酬の休業損害の請求は簡単にはいきません。事故に遭われ、先行きについてお悩みの方は、お気軽に当事務所にお電話下さい。

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