個人名で事業を営んでいる者、いわゆる事業所得者の方が交通事故に遭ってしまった場合の休業損害は、
青色申告の方:(事故前年の確定申告所得額+青色申告控除額)÷365×休業日数
白色申告の方:(事故前年の確定申告所得額+専従者控除額)÷365×休業日数
という式で算出されるのが原則です。
しかし、事業所得者の方は、しばしば家族従業員等と共に事業を行っており、申告された所得全てがその方の努力によるわけでない場合があります。そこで、そのようなときは、申告した所得に対する被害者の方の貢献割合を「寄与率」として算出し、申告した収入額にその割合を乗じた額を基礎収入と考えます。
ただし、交通事故により被害者の方の営業が完全にストップしてしまった場合、例えば家族と共にレストラン営業をしていたが事故により閉店せざるを得なくなったような場合は、寄与率は100%になります。
では家族の方に給料を支払っていた場合はどうなるでしょうか。
給料が家族の方の勤労に見合った額であれば、そのまま申告額に基づいた計算を行います。
しかし、自営業の方は、形式的にだけ家族を雇用している事にして、経費を水増しし、所得を低く抑えている方がよくいらっしゃいます。そのような方は、申告所得通りの額で計算をすると十分な賠償が得られません。
そこで、家族の就労実態がないか、あるいは給料に見合った額の勤労がされていないことを示して、家族に支払ったとされる給料分を申告額に加えた額を基礎収入であると主張することができます。
しかし、低い所得額を申告をしたことはある意味自業自得な要素もありますから、この主張を行うにはかなり確実性の高い立証が要求されます。このようなケースである場合、保険会社も強気になり確定申告に基づく賠償額に固執することが予想されますので、弁護士を間に入れつつ交渉を行うことをお勧めします。