交通事故の治療により会社の欠勤が長引いた場合、翌年度の有給休暇が減らされることがあります。具体的にいいますと、労働基準法39条1項は全労働日の8割の出勤率を維持した労働者に対して有給休暇を与えることを義務としています。したがって、事故により欠勤が続き、8割の出勤率を維持できなかった場合、その方の翌年の有給休暇はなくなってしまいます。
このような場合、事故がなければ出勤率を維持できたわけですから、有給休暇を取得できたはずです。このような有給休暇の喪失分は損害として加害者側に請求することができるでしょうか。
裁判例の多くは、将来の有給休暇喪失分を休業日数と同視して損害を計算しています(東京地判平成16年8月25日、大阪地判平成20年9月8日、大阪地判平成23年9月1日など)。将来の喪失分に限らず、事故の治療のために有給休暇を取得した場合も裁判例は損害の計算の基礎となるとしています。有給休暇については損害と考える上で手厚い保護が与えられていると言えます。
裁判例により、有給休暇の喪失がそれ自体休業損害であると考えるもの(京都地判平成23年2月1日)、または財産的価値を有するものであると考えるもの(東京地判平成6年10月7日)という違いはありますが、算出される損害額についてはどちらも違いはありません。
なお、少数の裁判例では、現実では日本では有給休暇は取得しにくいものであることを考慮して慰謝料と捉え実質的賠償額を別個考えていこうとする立場もあります(大阪地裁平成15年8月27日)。有給休暇の行使は労働者の権利であるとする労働法の建前に反することになりますので、休業日数と同視して計算に含めて考えるべきでしょう。
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