自賠法における「他人性」

「他人性」について判断を示した最判昭和42年9月29日判時497号41頁は、

自己のために自動車を運行の用に供する者及び当該自動車の運転者を除く、それ以外の者」、と定義しています。
この関連で問題となるのが、「共同運行供用者の他人性」です。
すなわち、運行供用者は、運行支配と運行利益を有する者、と定義されますので、複数の者が運行供用者となる場合があります。
そして、この場合に、運行供用者が他の運行供用者に責任追及できるかどうかが問題となります。
(なお、ここでいう責任の有無は、自賠法3条の責任になります。民法709条の責任が生じることは当然と言えます。)
この点、判例は、被害者となった運行供用者と加害者となった運行供用者の「具体的運行の支配の程度」を比較し、加害者の支配が被害者のそれより「直接的、顕在的、具体的」であった場合に他人性を認めています。
具体的には、以下のように考えられます(なお、個別具体的な事情によって結論は異なり得ることにご注意ください)。
1 会社名義の自動車を従業員が運転して、自爆事故を起こし、後部座席の取締役が怪我をした場合
会社より被害者(取締役)の運行支配の方が「直接的、顕在的、具体的」であるとして、会社の責任が否定されると考えられます(会社に対して「他人性」を主張できないということになります。)
2 出先で飲酒したため運転代行を依頼し、代行業者に運転させて自分は後部座席にいたところ、自爆事故で怪我をした場合
自動車の所有者の支配は、代行運転業者(運転者)の支配と比べて、「間接的、補助的」であるとして、代行運転業者の責任が肯定できると考えられます(自動車所有者は運転者に「他人性」を主張できるということになります。)

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