労働者の中には、労働自体に違法な業務に従事している方がいらっしゃいます。
このような方が交通事故の被害者となった場合、休業損害としてどこまでその労働を保護するか、問題となる場合があります。
覚せい剤の売買や空き巣などの犯罪は論外としても、違法の程度は労働により様々な段階がありますので、個々の労働の反社会性の程度を具体的に検討し、休業損害として補償を認めるべきかどうかを判断します。
外国人の不法就労に対しては、裁判例は多くは違法性の程度は少ないとして休業損害を認めています。
損害額についても、通常の労働と同様に、具体的に労働可能な期間や過去の収入などを綿密に検討し休業損害で保護されるべきものとして扱っています。
風俗業については、少々厳しい扱いがされています。
通常、風俗に従事している女性は比較的高給で、これをそのまま相手方に損害として支払わせるのは不公平である面もあり、裁判例の多くは事故前の収入は考慮せず、賃金センサスに基づき年齢別の平均賃金を基礎収入として休業損害を認めています。
違法な要素が強い接客業務を行っていた場合は、平均賃金からさらに何割か減額を行う場合もあります(名古屋地判平成24年9月10日)。
アルバイトとして裏方で働いている方の場合は、営業が違法であっても特段の考慮をする必要がないとして、事故前の収入を元に休業損害が認められます(大阪地判平成13年7月12日)。
無許可の貨物運送や白タク営業に携わっている方などは、行政の処分に営業が続行できない可能性があることを理由に、収入見込みの何割かを減額したり、事故前の収入を考慮せず賃金センサスに基づく年齢別平均賃金による休業損害を算定する傾向があります(大阪地判昭和59年3月15日)。
違法な業務を行っているからといって、一律に休業損害が否定されるわけではありません。
休業損害でお悩みの方は当事務所にご連絡下さい。