交通事故事案で特に問題となることが多いものが、人身事故等で負傷した場合における「損害」をどう考えるのか、ということです。
事故によって怪我をさせられてしまった場合、何らかの手当を求めるのは当然です。
ですが、身体、場合によっては生命を侵害されたとして、果たして金銭的に評価することができるのか、という難しい問題があります。
人身損害賠償における損害については、概ね3つの考え方があるとされています。
1 差額説(現実損害説・所得喪失説)
損害の種類を、①財産的損害と②精神的損害とに分類した上で、①財産的損害は、事故前と事故後を比較した場合の財産状態の差額であるとする考え方です。
ここでいう財産の減少とは、現実的な収入の減少を意味します。
2 死傷損害説
生命・身体への侵害そのものが非財産的な一個の損害であるという考え方です。
3 労働能力喪失説
後遺症による労働能力の喪失自体を損害とする考え方です。
この考え方は、現実の収入減少にかかわらず金銭評価を行います。
判例は、差額説とも労働能力喪失説とも評価されています。
現在の実務は、差額説+労働能力喪失説(特に後遺障害の場面)をとっていると言えます。
もっとも、いずれの説であっても、人身損害は本来金銭的に評価できない性質のものですので、フィクションが含まれることにはなります。
一義的に決まるものではない以上、立場によって大きく金銭的評価が異なりうると言えます。