はじめに
交通事故で腕に衝撃が加わると、肩寄りの上腕部(上腕骨や関連する神経・筋肉)に骨折や神経損傷が生じることがあります。上腕骨は肩関節と肘関節をつなぐ太い骨ですが、強い外力を受けると骨幹部骨折や近位部骨折などが発生し、神経(橈骨神経など)を巻き込むと手指のしびれや感覚麻痺が残るケースも。これにより、家事や仕事での動作が大きく制限され、後遺障害として認定されることがあります。
本稿では、上腕骨骨折や神経損傷を中心に、どのような症状・治療が行われるか、どんな後遺障害が残る可能性があるかを解説します。肩寄り部位(近位部)での骨折は肩関節の可動域に影響し、骨幹部骨折は橈骨神経が損傷されると手首の背屈ができなくなるなどの特徴的症状が出ます。事故後に腕が挙がらない、手指にしびれがある方は専門医での詳しい検査と、後々の保険会社との交渉を踏まえた戦略が重要となります。
Q&A
Q1:上腕骨骨折にはどんな種類がありますか?
大きく近位部骨折(肩関節に近い部分)、骨幹部骨折(腕の真ん中付近)、遠位部骨折(肘関節寄り)に分けられます。交通事故では骨幹部が折れる場合が多く、近位部骨折は肩関節脱臼を伴うこともあります。
Q2:神経損傷はどんな形で起こるのですか?
上腕骨骨折で骨片が神経を圧迫したり、骨折による炎症や腫脹で神経が引っ張られるなどして、主に橈骨神経が障害される例が多いです。結果として手首が背屈できない(下垂手)など運動・感覚麻痺が出ることがあります。
Q3:上腕骨骨折の治療は、保存療法と手術療法どちらが主流なのでしょうか?
骨折の転位の程度や安定性次第です。ずれが軽度ならギプス・装具で固定し骨癒合を待つ保存療法が選択されることもありますが、大きなずれや多発骨折、神経損傷が併発している場合などは手術(髄内釘固定、プレート固定など)が行われます。
Q4:後遺障害としては、腕がまっすぐ伸ばせないとか、手首が動かないとか、具体的にどんな障害が残りますか?
可動域制限(肩や肘が曲がらない、伸ばしづらい)、手首背屈麻痺や指の感覚障害などが典型です。肩関節や肘関節の可動域制限が顕著であれば12級や10級程度、神経麻痺があれば9級〜7級になる可能性があります。
Q5:主婦やデスクワークでも、上腕部の骨折による制限で後遺障害に該当することはあるのでしょうか?
もちろんあります。日常家事で重い物を持ち上げられない、肘や手首の動きが悪く調理が困難など、家事労働やデスクワークの効率が大幅に下がることがあります。医師が動作テストや筋力テストを行い、一貫した症状経過を立証できれば14級〜12級でも後遺障害が認められ、逸失利益請求が可能です。
Q6:保険会社が「若いから回復も早い」と打ち切りを押しつけてきました。継続治療が必要なら対抗できるのですか?
はい。弁護士が医師の意見書を入手し、「骨癒合が完全でない」「神経再生を要する」など医学的理由を示せば、治療費打ち切りを先延ばしできる場合があります。リハビリをきちんと行わないと後々の機能障害が重くなり、示談金にも影響するため重要な論点です。
解説
上腕骨骨折の特徴
- 近位部骨折(肩関節寄り)
- 上腕骨頭や肩関節に近い部分を骨折。肩関節脱臼を合併したり、三角筋が衝撃を吸収しきれず折れることが多い。
- 骨片の転位が大きいと手術(プレート、髄内釘)を選択、軽度ならデスオルト型固定など保存療法。
- 骨幹部骨折(上腕の真ん中)
- 交通事故で最も多いパターン。衝撃で骨が斜骨折や粉砕骨折を起こし、橈骨神経を巻き込むことがある。
- 不安定骨折で手術固定するケースが多い。術後は装具やリハビリで可動域と筋力回復を狙う。
- 遠位部骨折(肘寄り)
- 肘関節近くの骨折で、子どもや高齢者に多いが交通事故でも強打すると発生。
- 肘関節がうまく曲げ伸ばしできなくなり、可動域制限が後々の後遺障害に関わる。
神経損傷(橈骨神経など)
- 橈骨神経損傷
- 骨幹部骨折とセットになりやすく、手首の背屈(指を上にあげる動作)ができない「下垂手」になる。
- 神経再生を待つ保存的なアプローチと、神経縫合手術などが検討される場合も。
- 正中神経・尺骨神経
- 上腕部よりも肘周辺での損傷が多いが、交通事故で大きく腕をひねって骨折すると複数神経を障害することも。
- 感覚障害や指の巧緻動作障害などが残り、後遺障害で9級〜12級となる例あり。
- 回復状況とリハビリ
- 神経が完全断裂でなければ時間をかけて自然回復を期待できるケースも。
- 回復が不十分でしびれ・麻痺が持続すれば後遺障害として認定。職業や家事への影響度により逸失利益が大きくなる。
治療・リハビリと後遺障害
- 保存療法
- 転位が少ない骨折でギプス・装具を装着し、骨癒合を待つ。
- リハビリでは肩・肘・手首の可動域維持、筋力低下防止が重要。
- 骨癒合後も痛みや可動域制限が残れば14級〜12級認定が狙える。
- 手術療法
- 髄内釘固定やプレートスクリューで骨片を整復・固定。神経合併損傷があれば同時に神経縫合することも。
- 術後は装具で安定化しつつリハビリを行い、痛みと可動域を回復。
- 完全に回復しない場合、可動域制限や麻痺が後遺障害に該当。
- 後遺障害等級の目安
- 肩や肘の可動域制限が顕著 → 12級(あるいは10級)程度
- 手首や指がほとんど使えない → 9級〜7級
- 軽度なしびれや痛み → 14級
- 仕事・家事への影響が大きいほど、労働能力喪失率が高くなり示談金が増える。
弁護士に相談するメリット
- 治療打ち切りへの対抗
上腕骨骨折・神経損傷はリハビリが長期化するケースが多い。保険会社が3〜6ヶ月で打ち切りを図っても、弁護士が医師の意見書を用いて延長交渉。 - 後遺障害申請サポート
肩・肘・手首の可動域検査、神経学的テスト(手首背屈の可否)などを診断書に詳細記載し、12級や9級など上位等級を狙う。 - 職業・家事逸失利益の算定
弁護士が「これまでの業務内容」「家事労働の具体例」を集め、労働能力喪失率を最大限高く見積もり、保険会社に正当評価を求める。 - 示談金の大幅増
保険会社は任意保険基準で低額提示を行いがちだが、弁護士が裁判所基準で計算し、数十万円〜数千万円以上の増額を期待できる。 - 弁護士費用特約
骨折・神経損傷は通院期間が長引き、示談金も大きくなる傾向。特約があれば自己負担なしで弁護士依頼し、増額分をそのまま受け取れる。
まとめ
上腕部の損傷(上腕骨骨折、神経損傷など)では、
- 肩関節脱臼・腱板損傷も併発すれば、腕が上がらない・痛みが長引く → 12級〜14級の後遺障害
- 骨幹部骨折で橈骨神経障害 → 下垂手、しびれ → 9級〜12級の可能性
- 仕事・家事への支障が顕著なら、逸失利益が大きく認められる
- 保険会社はレントゲンで「大した骨折でない」と過小評価 → MRIや神経学テストを駆使し弁護士が対抗
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、上腕骨骨折・神経損傷が残る被害者の後遺障害認定や示談交渉を多く手がけ、高い逸失利益や裁判所基準の慰謝料を得るサポートを行っています。事故後に腕・肩の痛みやしびれが続く場合は、早期にご相談いただき、通院実績や検査を的確に整備しましょう。
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