交通事故の示談金に関する6つの留意点

交通事故に遭った場合、示談金に関する知識を持つことは非常に重要です。示談金の額や受け取るまでの流れについて理解しておくことで、適切な対応が可能になります。

本記事では、交通事故の示談金に関する留意点を詳細に解説します。

1 交通事故の示談金とは

交通事故の示談金とは、被害者が受けた損害に対する補償として支払われるお金のことを指します。

示談金には様々な項目が含まれ、それぞれの項目について具体的に理解しておくことが重要です。

なお、示談金と慰謝料を混同される方もいらっしゃいますが、両者は同じ意味ではありませんのでご留意ください。

示談金には、後記のように慰謝料だけでなく、治療費や交通費、休業損害等、様々な項目が含まれます。

示談金は、慰謝料も含めた交通事故による損害総額が含まれるものとご理解ください。

2 交通事故における損害賠償請求できる主な項目

治療費

交通事故により負った怪我の治療にかかる費用です。病院での診察、手術、入院費用などが含まれます。治療費は、必要かつ合理的な範囲での費用が対象となります。

通院交通費

治療のために病院へ通う際の交通費です。

公共交通機関の利用費用や、自家用車での移動にかかるガソリン代などが対象となります。

通院交通費は、交通手段や距離に応じて計算されます。

入院付添費

被害者が入院中に付添人が必要な場合、その費用が含まれます。付添費用は、家族や専門の看護師などが付添う際の実費が対象となります。

通院付添費

通院時に付添人が必要な場合の費用です。通院付添費は、入院付添費と同様に、付添人の実費が対象となります。

傷害慰謝料

交通事故によって被害者が受けた精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料です。傷害慰謝料は、怪我の程度や治療期間に応じて算出されます。

休業損害

交通事故により仕事を休まざるを得なかった場合の、休業による収入減少分を補填するものです。休業損害は、事故前の収入を基に算出され、休業日数に応じて支払われます。

後遺障害慰謝料

交通事故により後遺症が残った場合、その苦痛に対する慰謝料です。後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級に応じて金額が設定されます。

後遺障害逸失利益

後遺症が原因で労働能力が低下し、将来的に得られるはずだった収入が減少する分の補償です。後遺障害逸失利益は、基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間に応じて計算されます。

3 交通事故の示談金の相場

示談金の額はケースバイケースで異なりますが、一般的な相場について知っておくと交渉の際に役立ちます。ここでは主な項目ごとの相場を紹介します。

治療費の相場

治療費は、実際にかかった費用が基本となります。例えば、軽度の怪我の場合は数万円から数十万円、中程度の怪我では数十万円から数百万円、重度の怪我では数百万円以上になることもあります。

通院交通費の相場

通院交通費は、通院回数や距離に応じて異なります。一般的には、1回の通院で数百円から数千円程度が支払われます。

入院付添費の相場

入院付添費は、1日あたり数千円から数万円程度が相場となります。具体的な金額は、付添人の種類や入院期間によります。

傷害慰謝料の相場

傷害慰謝料は、怪我の程度や治療期間によって異なります。例えば、軽度の怪我であれば数万円から数十万円、中程度の怪我であれば数十万円から数百万円、重度の怪我であれば数百万円以上が支払われることがあります。

休業損害の相場

休業損害は、事故前の収入を基に計算されます。例えば、給与所得者の場合、1日あたりの平均賃金を基に休業日数を掛け合わせた金額が支払われます。

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級に応じて金額が決まります。等級が高いほど慰謝料も高額になります。例えば、最も重い1級の場合、数千万円が支払われることがあります。

後遺障害逸失利益の相場

後遺障害逸失利益は、基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間に応じて計算されます。基礎収入は事故前の平均収入を基にし、労働能力喪失率は後遺障害等級に応じて設定されます。喪失期間は、将来の労働期間を考慮して設定されます。

4 交通事故の示談金の計算方法

示談金は以下の方法で計算されます。各項目の具体的な計算方法を理解することで、正当な賠償金額を算出することが可能になります。

治療費の計算方法

治療費は、実際にかかった費用が基になります。ただし、必要かつ相当な治療費であることが求められます。例えば、保険適用外の高額な治療や、過剰な治療が行われた場合、その費用は認められないことがあります。

通院交通費の計算方法

通院交通費は、通院にかかった実際の交通費を基に計算されます。公共交通機関の運賃やガソリン代などが含まれます。自家用車を利用する場合は、距離に応じたガソリン代や駐車料金が対象となります。

入院付添費の計算方法

入院付添費は、付添人が必要と認められる場合、その費用が計算されます。具体的な金額はケースにより異なりますが、1日あたりの金額が設定されます。例えば、家族が付添う場合と専門の看護師が付添う場合では、費用が異なることがあります。

通院付添費の計算方法

通院付添費も、入院付添費と同様に、付添人が必要と認められる場合にその費用が含まれます。具体的な金額はケースにより異なりますが、通院1回あたりの付添費用が設定されます。

傷害慰謝料の計算方法

傷害慰謝料は、交通事故による傷害に対する慰謝料であり、被害者の怪我の程度や治療期間に応じて算出されます。慰謝料は、裁判所や保険会社が定める基準に基づいて計算されます。例えば、治療期間が1ヶ月の場合の慰謝料は20万円程度、6ヶ月の場合は80万円程度とされることがあります。

休業損害の計算方法

休業損害は、事故前の収入を基に算出されます。

給与所得者の場合、事故前の収入を基に1日あたりの平均賃金を計算し、それに休業日数を掛け合わせて算定することが一般的です。

自営業者やフリーランスの場合も同様に、事故前の平均収入を基に計算されます。

後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級に応じて算出されます。等級が高いほど慰謝料も高額になります。例えば、1級の後遺障害の場合、数千万円が支払われることがありますが、等級が低い場合は100万円程度からとなります。

後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。

計算式:基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入:事故前の平均収入
労働能力喪失率:後遺障害等級に応じた労働能力の喪失率
ライプニッツ係数:将来の収入を現在価値に換算するための係数

例えば、基礎収入が500万円、労働能力喪失率が14%、喪失期間が10年の場合、逸失利益は以下のように計算されます。

逸失利益 = 500万円 × 0.14 × 8.5302(ライプニッツ係数) = 約597万円

5 交通事故の示談金を受け取る流れ

交通事故の示談金を受け取るまでの一般的な流れは以下の通りです。

交通事故の発生

事故が発生したら、まず警察に連絡し、事故証明書を取得します。事故証明書は示談交渉や保険金請求に必要な重要な書類です。

治療の開始

怪我の治療を開始し、必要な治療費を記録します。治療費の領収書や診断書は、示談交渉の際に重要な証拠となります。

症状固定

治療が一段落し、これ以上改善が見込めない状態になると「症状固定」となります。症状固定の時点で、後遺障害の有無が判断されます。

後遺障害申請

症状固定後、後遺障害が残る場合は後遺障害等級の認定を申請します。後遺障害等級の認定は、専門の医師による診断書が必要です。

後遺障害等級の認定

後遺障害等級が認定されると、示談交渉が開始されます。等級に応じた慰謝料や逸失利益の計算が行われます。

示談交渉

保険会社や加害者との示談交渉を行い、示談金の額を決定します。示談交渉は、被害者自身で行うこともできますが、弁護士に依頼することで適正な示談金を受け取ることができます。

あっせん申請

示談交渉が難航する場合、あっせんを申請することができます。あっせんは、公平な第三者が仲介して示談を成立させる手続きです。

裁判

示談が成立しない場合、裁判に進むこともあります。裁判では、裁判所が示談金の額を判断し、最終的な判決を下します。

賠償金の支払い

示談が成立した場合、もしくは裁判で判決が下った場合、賠償金が支払われます。賠償金は、被害者が受けた損害に対する補償として支払われます。

6 示談交渉のポイント

示談交渉をスムーズに進めるためには、いくつかのポイントがあります。以下に示談交渉の際に注意すべきポイントを挙げます。

1. 事実関係の確認

示談交渉を始める前に、事故の事実関係をしっかりと確認しておくことが重要です。警察の事故証明書や医師の診断書を基に、事故の状況や怪我の程度を明確に把握しておきましょう。

2. 必要な書類の準備

示談交渉には、治療費の領収書や通院交通費の明細書など、必要な書類を準備しておくことが重要です。これらの書類は、損害賠償の根拠となるため、漏れなく揃えておくことが大切です。

3. 弁護士への相談

示談交渉は、専門知識が必要な場合が多いため、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、適正な示談金の額を算出し、交渉を有利に進めるためのアドバイスを提供します。

4. 交渉の際の注意点

示談交渉の際には、感情的にならず冷静に対応することが重要です。また、相手方の主張に対してもしっかりと聞き、妥協点を見つけることが示談成立のポイントです。

7 まとめ

交通事故の示談金に関する知識を持つことは、被害者にとって非常に重要です。示談金の額や受け取るまでの流れについて理解しておくことで、適切な対応が可能になります。

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、交通事故を特に集中的に扱っていますので、何かお困りのことがあればお気軽にご相談ください。

交通事故の示談金に関する基本的な知識と留意点を理解することで、適切な対応ができるようになります。

本稿が交通事故被害に悩む方の一助になれば幸いです。


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