自転車事故における慰謝料・損害算定のポイント8選

1 はじめに

自転車事故は誰にでも起こり得る事故です。万が一、自転車事故に遭った場合、どのように対応すれば良いのか、特に慰謝料や損害賠償の算定方法について理解しておくことが重要です。

本記事では、自転車事故における慰謝料・損害算定のポイントを8つに分けて解説します。

2 自転車事故の慰謝料とは

自転車事故の慰謝料とは、事故によって被害者が受けた精神的・肉体的な苦痛に対する補償のことです。慰謝料は、治療費や休業損害とは別に支払われるもので、被害者の苦痛や生活への影響を考慮して算定されます。

3 自転車事故の慰謝料の計算方法

慰謝料の計算方法には、主に「自賠責基準」、「任意保険基準」、「裁判基準」の3つの基準があります。

自賠責基準は最低限の補償を提供するもので、任意保険基準は保険会社が独自に定めた基準です。裁判基準は、過去の裁判例をもとに算定されるもので、最も高額になることが一般的です。

4 自転車事故の慰謝料の相場

自転車事故の慰謝料の相場は、被害の程度や事故の状況によって異なります。軽度のケガの場合、数万円から数十万円程度の慰謝料が支払われることがありますが、重傷や後遺障害が残る場合は、数百万円から数千万円に達することもあります。

5 自転車事故における3種類の慰謝料

自転車事故の慰謝料は、①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料の3種類があります。

① 入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、自転車事故による受傷によって被った精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料をいいます。

入通院慰謝料は、被害者の入通院の期間・頻度等を基準に算定されます。

② 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、自転車事故によって後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料をいいます。

後遺障害慰謝料は認定された等級に応じて慰謝料が決まっています。

また、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)に応じて金額が異なります。

各種基準については下記をご参照ください。

【自賠法施行令別表第1・介護を要する後遺障害に適用】

後遺障害等級慰謝料額保険金総額
第1級1,650万円4,000万円
第2級1,203万円3,000万円

【自賠法施行令別表第2・別表第1以外の後遺障害に適用】

後遺障害等級慰謝料額保険金総額
第1級1,150万円3,000万円
第2級998万円2,590万円
第3級861万円2,219万円
第4級737万円1,889万円
第5級618万円1,574万円
第6級512万円1,296万円
第7級419万円1,051万円
第8級331万円819万円
第9級249万円616万円
第10級190万円461万円
第11級136万円331万円
第12級94万円224万円
第13級57万円139万円
第14級32万円75万円

上表の自賠責保険基準の後遺障害慰謝料額は、令和2年4月1日以降に発生した事故における金額を記載しています。

【任意保険基準における後遺障害の慰謝料】

任意保険会社の支払基準は、自賠責保険の支払基準に多少の上乗せをした程度のものが多く、弁護士基準よりも低額となる傾向にあります。

【弁護士基準(裁判基準)における後遺障害の慰謝料】

後遺障害等級自賠責保険基準(※1)裁判所基準(※2)
第1級1,150万円2,800万円
第2級998万円2,370万円
第3級861万円1,990万円
第4級737万円1,670万円
第5級618万円1,400万円
第6級512万円1,180万円
第7級419万円1,000万円
第8級331万円830万円
第9級249万円690万円
第10級190万円550万円
第11級136万円420万円
第12級94万円290万円
第13級57万円180万円
第14級32万円110万円

※1 上表の自賠責保険基準の後遺障害慰謝料額は、令和2年4月1日以降に発生した事故における金額を記載しています。介護を要する後遺障害の場合は、【自賠法施行令別表第1・介護を要する後遺障害に適用】をご参照ください。

※2 後遺障害慰謝料については、被害者の境遇や、加害者の対応、事故の状況に応じて増減しますので、あくまでも目安としてお考えください。

③死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡した場合の被害者自身やそのご遺族の精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。

ケース慰謝料金額
一家の支柱2800万円
母親・配偶者2500万円
その他2000万円〜2500万円

6 自転車事故で慰謝料を取得する手続

自転車事故で慰謝料を取得するためには、以下の手続きを行う必要があります。

(1)事故証明の取得

まず、事故が発生した場合は、直ちに警察に通報し、事故証明を取得しましょう。事故証明は、保険金請求や慰謝料請求の際に必要となる書類です。

(2)保険会社への連絡

次に、自転車事故に関与した保険会社に連絡し、事故の詳細を報告します。保険会社は、被害者の状況や事故の状況を確認するとともに、利用できる保険制度の有無を確認します。

(3)医療機関での診察・治療

事故後は速やかに医療機関で診察・治療を受けることが重要です。医師の診断書や治療記録は、慰謝料請求の際に必要となる証拠となります。

(4)慰謝料請求の手続き

慰謝料請求の手続きは、加害者に対して行います。必要な書類を提出し、交渉を経て慰謝料の支払いを受けることが一般的です。

交渉では解決できない場合には、訴訟等の法的手段も検討します。

7 自転車事故で賠償金を増額させるポイント

自転車事故で賠償金を増額させるためには、以下のポイントに注意することが重要です。

(1)十分な証拠の収集

事故現場の写真や目撃者の証言、医師の診断書など、十分な証拠を収集することで、賠償金の増額が期待できます。

(2)事故直後の受診及び通院治療の継続

自転車事故では、事故による受傷と治療との因果関係が争われることが少なくありません。因果関係が争われた場合に治療の必要性及び相当性があることを立証するためにも、事故直後の受診及び通院治療の継続をお勧めします。

(3)保険会社との交渉

保険会社との交渉においては、自分の権利をしっかりと主張することが重要です。必要に応じて、専門家のサポートを受けながら交渉を進めると良いでしょう。

(4)交通事故に詳しい弁護士への相談

弁護士などの法律の専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。専門家のサポートを受けることで、賠償金の増額交渉が有利に進むことがあります。

8 自転車事故で賠償金が減額されないために注意すること

自転車事故で賠償金が減額されないためには、以下の点に注意することが重要です。

(1)事故後の対応の徹底

事故が発生した際は、警察への通報や事故証明の取得、医療機関での診察・治療を速やかに行うことが重要です。これらの対応を怠ると、賠償金が減額される可能性があります。

(2)被害者の過失割合の確認

被害者自身に過失があった場合、賠償金が減額されることがあります。過失割合については、専門家に相談し、適切な対応を行うことが重要です。

(3)保険会社との交渉の慎重さ

保険会社との交渉においては、安易に示談に応じず、自分の権利を主張することが重要です。示談の前に専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが望ましいといえます。

9 自転車事故特有の問題点

自転車事故には、他の交通事故とは異なる特有の問題点があります。

以下に代表的な問題点を挙げます。

(1)加害者が未成年の場合

自転車事故の加害者が未成年の場合、保護者の責任が問われることがあります。保護者の監督義務違反が認められた場合、賠償責任を負うことがあります。

(2)自転車保険加入の有無

自転車事故の加害者が保険に加入していない場合、被害者が十分な賠償を受けられない可能性があります。自転車保険への加入が重要です。

(3)歩行者との事故

自転車と歩行者の事故は、歩行者が重傷を負うことが多く、重大な問題となります。自転車の運転者は、歩行者に対する注意義務を徹底することが求められます。

10 まとめ

自転車事故に遭った場合、適切な慰謝料や損害賠償を受けるためには、事故後の対応や証拠の収集等、専門家のサポートが重要です。

本記事で紹介した8つのポイントを参考に、自転車事故に備え、万が一の際には適切な対応を心がけましょう。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、自転車事故に関するご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。


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