1 過失割合とは
過失割合とは,当事者の不注意(過失)が,交通事故の原因に,それぞれどれだけ寄与したかを双方の割合で示すものです。事故によって生じた損害のうち,各当事者がどれだけの責任を負担するかは過失割合に従って決定されます。
例えば,被害車両と加害車両が衝突して,被害者の損害総額が1000万円だったとします。この場合,仮に被害者と加害者の過失割合が30:70であったならば加害者が,1000万円のうち700万円の損害について責任を負担することになります。被害者に20%の過失があったことから,賠償額を20%減額するということです。
このように,被害者の過失の程度に従って,加害者の損害賠償額を減額することを「過失相殺」と言います。
2 過失割合の認定基準
過失割合は,別冊判例タイムズ第16号「民事訴訟における過失相殺率の認定基準」(以下「本書」と言います。)に記載されている基準を用いて算定することが一般的です。
本書には,様々な事故状況が270以上にわたって類型化されており,事故状況ごとに基本過失割合と,それを修正する要素(一時停止、先入、重過失等)が掲げられています。
実務上は,実際に起きた事故の状況(当事者,道路状況,事故の態様等)と類似する事故状況を本書の中から検索し基本過失割合を割り出した上で,修正要素を加えて,最終的な過失割合を算定するのが通常です。
しかし,当事者間で事故状況や考慮するべき修正要素について争いが生じることはまま見受けられます。
また,「別冊判例タイムズ」に掲げられている過失割合はあくまで一つの基準にすぎませんから,訴訟において裁判所を拘束するものではありません。
したがって,当事者の主張の仕方によっては,裁判所が「別冊判例タイムズ」と異なる過失割合を認定することも十分に考えられます。
過失割合によって認められる賠償額は大きく変わってきますので、慎重に検討する必要があります。