【動画】
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【ご質問】
私は専業主婦をしており、特に仕事はしていません。
今回、突然に交通事故被害に遭ってしまい、食事の用意や育児等、家事全般を思うように行うことができなくなってしまいました。
私のように、専業主婦の場合には休業損害を請求することはできないのでしょうか。
【回答】
専業主婦の方であっても休業損害を請求することは可能です。
【解説】
1 専業主婦とは
専業主婦とは、就業せずに家事に専念する女性のことを言います。男性の場合には、専業主夫と言います。
専業主婦・専業主夫のいずれも、家事従事者(家族のために家事に従事している方)にあてはまります。
2 専業主婦の減収?
専業主婦が被害者の場合、休業損害が発生するというイメージがつきにくい方もいらっしゃるかもしれません。
例えば、サラリーマンの場合には、交通事故被害に遭ったために仕事を休むことになれば、その分給料が減額されることになります。この場合、減額された給料が休業損害ということはイメージしやすいと思います。
一方、専業主婦の場合、給料を支払われているわけではありませんので、減額分がない=休業損害はない、とも思いがちです。
ですが、実際には専業主婦の方は何もしていないということではなく、家事を担当しています。
もし専業主婦の方が家事をすることができなくなり、家政婦等を頼むことになれば、その分の費用が発生することになります。
したがって、専業主婦は、家政婦等の報酬分を家族のために確保しており、経済的利益を得ているものと同視することができます。
この点、最高裁判例でも、家事労働に従事できなかった期間について、休業損害を請求することができると認められています(最判昭和50年7月28日)。
3 専業主婦の損害額
では、専業主婦も休業損害を請求できるとして、その額の算定はどのように行われるのでしょうか。
主婦業をしても、外部から給料が支払われるわけではありませんので、一見すると客観的な収入を算定することができないようにも思われます。
この点、実務では、厚生労働省が出している賃金センサスの女性・全年齢の平均賃金に基づいて専業主婦の休業損害における基礎賃金が算定されます。
平成26年度の賃金センサスに基づいた場合、女性の平均賃金は364万1200円となり、決して少なくない基礎収入であるといえます。
専業主婦の方が交通事故被害に遭った場合には、適切に休業損害の請求を行うことが、妥当な損害賠償額を得るためのポイントといえます。