交通事故後の「水晶体脱臼・無水晶体眼」対応のチェックポイント:示談・後遺障害申請・治療と生活への影響

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はじめに

Q:本稿は何を扱っていますか?

本稿は、交通事故被害者の方が負った目のけが、特に「水晶体脱臼」や「無水晶体眼」などに着目し、治療や通院のポイント、後遺障害等級認定の申請手続き、示談交渉の注意点、そして弁護士に相談するメリットについてわかりやすく解説します。

Q:なぜ目の後遺障害に注目する必要があるのでしょうか?

目の後遺障害は、視力低下や調節機能障害など、日常生活に深刻な影響を及ぼします。また、長期的には外傷性白内障の発症リスクなどもあり、将来を見据えた慎重な示談対応が求められます。

Q:本稿を読むことで何がわかりますか?

水晶体脱臼の基礎知識、無水晶体眼の症状や治療方法、後遺障害申請のポイント、示談交渉で押さえるべき点、弁護士に相談することで得られるメリット、さらに関連動画解説など、多面的な情報を得ることができます。

水晶体脱臼・無水晶体眼とは何か

水晶体の役割

人間の眼球には「角膜」と「水晶体」という2つのレンズが存在します。角膜は固定されたレンズで、常に一定の形状で外界から入る光をおよそ70%屈折させます。一方、水晶体は厚みを変えて残り約30%の屈折を担当し、ピント調節を可能にします。この水晶体がずれる、つまり正しい位置から外れてしまう状態を「水晶体脱臼」と呼びます。

水晶体脱臼の症状

水晶体が脱臼すると、近視・乱視・複視などが生じ、重度の場合はメガネでの矯正が困難な視力低下も起こりえます。脱臼位置によっては、緑内障やぶどう膜炎、結膜充血など、さまざまな合併症が発生します。

  • 水晶体が硝子体内へ脱臼した場合:ぶどう膜炎や結膜充血、眼圧上昇・角膜混濁などのリスク。
  • 水晶体が瞳孔前方へ脱臼した場合:瞳孔がふさがれ、緑内障の発症リスク。
  • 水晶体が瞳孔後方へ脱臼した場合:視力の大幅な低下が懸念。

無水晶体眼とは

水晶体脱臼の治療では、多くの場合、手術により脱臼した水晶体を摘出します。水晶体を失った状態は「無水晶体眼」と呼ばれます。

無水晶体眼では約30%の屈折力が失われ、対象物のピントが合いにくくなります。しかし、コンタクトレンズや強度の凸レンズ入りメガネ、あるいは近年主流の眼内レンズ(人工水晶体)の挿入で、視力はある程度回復可能です。

ただし、いずれの手段でも「調節力」は回復しません。そのため、遠くを見やすくする矯正をした場合でも、近くを見る際には別途手元用のメガネが必要です。

通院・治療方法のポイント

検査と診断

水晶体脱臼が疑われる場合、細隙燈顕微鏡による精密検査が行われます。水晶体の位置異常が確認されれば、確定診断となります。

治療選択肢

交通事故が原因で水晶体が脱臼した場合、多くは手術による水晶体摘出が必要となり、結果的に無水晶体眼となります。その後は、

  • 強度凸レンズメガネ
  • コンタクトレンズ
  • 眼内レンズ(人工水晶体)の挿入

などの方法で視力補正が可能です。

近年は眼内レンズ挿入が増えており、自然な見え方に近づけることができます。ただし、調節力は戻らないため、近距離視には別途対応が求められます。

後遺障害申請と「調節機能障害」

調節機能障害とは

水晶体の特性は、対象物との距離に合わせて厚みを変え、網膜にピントを合わせる調節機能にあります。しかし、水晶体の摘出後は、その調節機能を失います。これが「調節機能障害」です。

後遺障害としての認定基準

交通事故による水晶体脱臼が原因で、摘出手術後に調節力が1/2以下になる場合、後遺障害として認定される可能性があります。測定にはアコモドポリレコーダーを用い、複数回の検査で数値が安定的に1/2以下であれば「著しい調節機能障害」として認定されることもあります。

  • 片眼のみの調節機能障害:後遺障害等級12級1号相当
  • 両眼の調節機能障害:後遺障害等級11級1号相当

ただし、年齢による自然な調節力低下(老視)の影響があり、55歳以上では加齢による機能低下と区別が難しく、後遺障害認定は困難となります。

視力障害における注意点

水晶体脱臼による後遺障害では、視力障害も中心的な問題となります。両眼・片眼のどちらで申請するかによって、後遺障害等級や示談金の金額が大きく変わります。専門的な法的判断が求められるため、慎重な対処が必要です。

示談手続きでの注意点

遅発性外傷性白内障のリスク

交通事故直後には白内障症状が出なくても、数年後や10年以上経過後に「遅発性外傷性白内障」を発症する可能性があります。こうしたリスクを考慮せずに示談を早期終了させてしまうと、後に追加の損害賠償請求が困難になる場合があります。

示談書への工夫

示談書に「後から後遺障害が認定された場合には、別途協議する」などの文言を入れておくと、将来の請求が比較的容易になります。未記載でも、追加の賠償請求は不可能ではありませんが、立証や交渉が非常に難しくなるため、慎重な文言設定が重要です。

将来リスクを踏まえた交渉

目の損傷は失明リスクを伴う重大な問題です。示談時には、将来の病気発症リスクを念頭に置き、相手保険会社との交渉を行う必要があります。加齢による機能低下や事故による損傷を区別・立証するのは容易ではなく、専門的な知見が求められます。

弁護士に相談するメリット

ここで新たな項目として、弁護士に依頼する利点を明確に整理します。

専門知識による因果関係の立証

水晶体脱臼や調節機能障害など、加齢との区別が難しいケースでは、「交通事故による損傷」が原因であることを証明する因果関係の立証が重要となります。弁護士は、医学的知見や過去の判例、医療記録の整理などを通じて、被害者側に有利な立証戦略を立てられます。

将来発症するリスクへの対応

遅発性外傷性白内障など、将来に発生し得るリスクを踏まえた示談戦略は専門的な判断を要します。弁護士は、将来発生しうる問題を見越し、示談書への文言追加などの適切なアドバイスを行い、被害者が後々不利にならないようサポートします。

後遺障害等級認定での有利な展開

後遺障害等級の認定は、そのまま示談金額や慰謝料に直結します。弁護士は、被害者に有利な等級を獲得するために、両眼か片眼かなどの選択、必要な医療証拠の提出、適切な資料収集方法など、戦略的なサポートを提供します。

時間・精神的負担の軽減

保険会社との交渉は複雑でストレスがかかるものです。弁護士に依頼すれば、法律手続きの煩雑さから解放され、被害者は治療と生活再建に専念できます。また、精神的な負担を軽減しつつ、より適正な賠償を得る可能性が高まります。

多角的な視点の重要性

目の後遺障害は、医学的・法的・生活的な側面が密接に絡み合います。

  • 医学的視点:症状や治療方法、リスクを正しく理解
  • 法的視点:因果関係や後遺障害等級、示談書の文言設定
  • 生活的視点:日常生活への影響や将来発症リスクを考慮

これらを組み合わせることで、より有利で適切な判断が可能になります。

まとめ

本稿では、交通事故被害者が目の後遺障害(特に水晶体脱臼・無水晶体眼)への対応で押さえるべき知識を紹介しました。

  • 水晶体脱臼による視力・調節機能障害のメカニズム
  • 治療方法(手術後の矯正手段や眼内レンズの活用)
  • 後遺障害申請時のポイント(因果関係立証、年齢要素、等級認定戦略)
  • 遅発性外傷性白内障発症リスクを踏まえた示談書文言の工夫
  • 弁護士に相談することで得られる専門的サポートとメリット
  • 関連動画でのご紹介

これらを踏まえ、被害者の方がより有利な条件で示談・後遺障害認定を受け、適切な治療と生活再建につなげられることを願っています。

当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、全国から交通事故案件のご相談を承っております。水晶体脱臼・無水晶体眼といった特殊な症状についても、多くの解決実績と知見を有しています。

「自分の症状が後遺障害にあたるか分からない」「示談書の文言設定をどうしたら良いか不安」という方は、カルテや医療記録をお持ちのうえで、ぜひご相談ください。適切なアドバイスや、将来的なリスクまで見据えたサポートを提供します。

関連動画動画の紹介

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