過失割合の基礎知識(過失割合の考え方・影響)

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はじめに

交通事故の損害賠償を考えるうえで避けて通れないのが「過失割合」という概念です。過失割合とは、事故当事者それぞれにどの程度の責任(過失)があるかをパーセンテージで示したもの。たとえば「被害者:20%、加害者:80%」といった形で割り振られ、最終的な損害賠償額を算定するときに大きな影響を及ぼします。

なぜ過失割合が重要なのか? それは、同じ事故内容でも、過失割合が異なれば最終的に被害者が受け取れる賠償金が大きく変わるからです。自分に一定の落ち度があれば、その分だけ請求できる賠償額は減額されてしまうというわけです。しかし、過失割合の算定には多くの要素が絡み合い、非常に複雑になりやすいのも事実です。

本記事では、交通事故の過失割合に関する基礎知識を整理し、どのように算定されるのか、そして過失割合が示談交渉や損害賠償にどのような影響を与えるのかをわかりやすく解説します。

Q&A

Q1:過失割合とは具体的に何ですか?

過失割合とは、事故当事者それぞれに認められる不注意(過失)の度合いを数値化したものです。たとえば「被害者3:加害者7」の場合は、被害者にも3割の過失があるという意味になります。

Q2:なぜ過失割合が重要なのでしょうか?

過失割合は損害賠償額を決める際の重要なファクターだからです。過失割合に応じて賠償額が減額される(過失相殺)ため、最終的に支払われる示談金にも大きく影響を与えます。

Q3:過失割合はどのように決まるのですか?

過去の裁判例や「別冊判例タイムズ」などの基準を参考に、事故の態様(追突・右直・側面衝突など)や信号の有無、車両の速度、運転者の注意義務違反の程度などを総合的に考慮して決まります。

Q4:保険会社が提示してきた過失割合は、絶対に受け入れないといけないのですか?

必ずしも受け入れる必要はありません。保険会社が独自の判断で提示しているだけの場合もあるので、自分の方が過失割合を低くできる合理的理由(証拠など)があれば、交渉や裁判で主張することが可能です。

Q5:過失割合をめぐるトラブルはどのようなケースが多いですか?

典型的なのは、信号のある交差点での右直事故や一時停止無視による出会い頭事故です。双方が「相手に非がある」と主張しあい、過失割合が折り合わずに長期化することがよくあります。

Q6:過失割合は裁判でも必ず最終的に決定できるのですか?

はい。示談交渉で折り合いがつかなければ裁判(民事訴訟)で争うことになり、最終的には裁判所が過失割合を判断して判決に反映させます。その判決が確定すれば、法的に過失割合が定まったことになります。

解説

過失割合の考え方

過失相殺の仕組み

民法722条2項には「被害者にも過失があれば、その分を損害賠償額から差し引く」という規定があり、これを過失相殺と呼びます。交通事故ではこれが適用されるため、被害者側に過失があると賠償額が減額されます。

過失割合の決定要素

  1. 信号の状況(青・黄・赤など)
  2. 車両の進行方向・位置関係(直進・右左折・交差点内など)
  3. 速度超過・違反の有無(シートベルト未装着、飲酒運転など)
  4. 視界や道路状況(悪天候、夜間、見通しの悪さなど)

これらの要素が組み合わさり、過去の裁判例をもとに修正要素を加えて具体的な割合が算定されます。

過失割合の影響

損害賠償額への影響

たとえば、事故による損害額が1000万円で、被害者の過失が20%(被害者2:加害者8)と認定された場合、最終的に受け取れる額は800万円となります。過失割合が5%上下するだけでも、50万円単位で変動する可能性があるわけです。

示談交渉の長期化

過失割合は一度決まると賠償額に直結するため、示談交渉ではしばしば最大の争点となります。お互いが譲らない場合、裁判にまで発展することも珍しくありません。

よくある事故態様と過失割合の例

  1. 追突事故
    後方車両が100%責任を負うケースが多い。ただし被追突車両が急停止したりハザードランプをつけずに止まった場合など、被害者側に一部過失が認められることも。
  2. 右左折事故
    交差点での右直事故は、信号無視や速度超過などの要因が加わり、7:3や6:4程度で折り合うことが多い。
  3. 出会い頭事故
    優先道路・一時停止の有無がポイントになり、8:2や9:1などの割合が典型。

弁護士に相談するメリット

合理的な反証・修正要素の主張

保険会社が一方的に提示してきた過失割合に納得できない場合、弁護士は交通事故の専門知識と裁判例の蓄積を活かして、被害者の過失を下げるための修正要素を主張できます。たとえば目撃証言やドライブレコーダー映像、警察の実況見分調書などを精査し、事実関係を正確に把握することで過失割合を有利に導くことが期待できます。

交渉ストレスの軽減

過失割合の交渉は感情的になりやすく、保険会社とのやり取りだけでも大きな精神的負担がかかります。弁護士が代理人となって交渉にあたれば、被害者は治療や仕事に集中しやすくなります。

示談金の増額につながる可能性

過失割合が低くなれば、それだけ被害者が受け取れる賠償金は増額することになります。弁護士のサポートによって過失割合を正しく算定し直せば、最終的に大幅に示談金が増えることもあるのです。

裁判対応・証拠収集

万一示談が決裂した場合、民事訴訟へ移行することになります。裁判では法律的主張や証拠の整理、書面作成など専門的な手続きが必要です。弁護士に依頼しておけば、スムーズに対応できます。

弁護士費用特約の活用

保険契約に弁護士費用特約が付帯している場合、弁護士費用を保険会社が負担してくれます。過失割合が争点になるケースでは、早めに弁護士へ依頼して適切に対処するほうが結果的には有利です。

まとめ

過失割合は、交通事故の最終的な損害賠償を左右する極めて重要な要素です。保険会社の提示する過失割合に納得できないときは、客観的な証拠や判例をもとに反証を行うことで、自身の負担を軽減できる可能性があります。

  • 過失相殺の仕組み
    被害者にも不注意があれば、その分賠償額が減る
  • 過失割合の決定要素
    信号の有無や速度、運転違反の有無など多岐にわたる
  • 示談交渉の争点
    ほんの数%の違いで多額の賠償金が変わる場合もある

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、過失割合の争いから示談交渉・裁判手続きまで、幅広くサポートしております。ご自身の事案にどれくらいの過失割合が認められるのか、納得のいく解決を目指すにはどうすればよいのか、遠慮なくご相談ください。

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