高齢者が死亡した場合の逸失利益の考え方(就労可能年数、年金との関係)

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はじめに

交通事故による高齢者の死亡事故では、「そもそも高齢なので就労可能年数が少ない」と保険会社が主張し、逸失利益が低く見積もられることが少なくありません。また、年金を受給していた場合、それが「労働収入」と異なる性質であるため、どのように評価すべきかが争点となりがちです。

本稿では、高齢者が死亡した場合の逸失利益の計算方法や、就労可能年数の設定、年金との関係などを解説します。高齢でも現役で働いていたケースや、家事従事者(主婦・主夫)として活動していた場合など、様々な状況に応じて異なるアプローチが必要です。正しい知識を持つことで、保険会社による過小評価を防ぎ、適正な賠償を獲得する手掛かりにしていただければ幸いです。

Q&A

Q1:高齢者の逸失利益は、まったく認められない場合もあるのでしょうか?

加害者側(保険会社)が「すでに働いていないから逸失利益はない」と主張する場合がありますが、実際に働く意欲や実績があったことを示せれば一定の逸失利益が認められるケースもあります。

Q2:定年後にアルバイトや自営業を続けていた場合、どのように評価されますか?

現実に収入を得ていた事実があれば、その所得を基礎として逸失利益を計算することが可能です。ただし、継続性や健康状態なども考慮されます。

Q3:年金は逸失利益に含まれるのでしょうか?

公的年金(老齢年金)は原則として労働収入ではないため、逸失利益に直接含まれないのが一般的です。ただし、年金受給者が働いていた場合、その労働収入を基に算定されることがあります。

Q4:家事従事者(主婦・主夫)の高齢者にも逸失利益は認められますか?

原則として認められます。家事労働にも経済的価値があるため、「女性学歴計の平均賃金」などを参照して計算する裁判例もあります。高齢であっても一定年齢までは家事労働を続けられると判断されることがあります。

Q5:高齢者の死亡事故で、大きな増額を見込むには何が重要ですか?

被害者が生前どのような就労状況にあったか(安定的収入の実績)家事労働を担っていたこと健康状態や生活態度などを具体的に示すことが鍵です。保険会社が「高齢だから逸失利益は少ない」と一方的に言うのを許さないための立証が必要になります。

解説

高齢者の逸失利益算定の基本

  1. 基礎収入の設定
    • 事故前に得ていた給与や事業収入があれば、それをベースにする。
    • 無職の場合でも、アルバイト探しの意欲や過去に働いていた実績があれば、一定の収入が想定される場合がある。
  2. ライプニッツ係数
    • 将来の収入を一括で受け取ることになるため、中間利息を控除する形で係数を乗じるのが通例。
  3. 年金収入の扱い
    • 老齢年金は労働の対価ではないため、逸失利益に含めないのが基本。ただし、加害者側が「年金を受給してるから働かない」などと主張してくる場合があり、反論が必要。

事例ごとのポイント

  1. 定年退職後にアルバイト
    収入実績(給与明細など)が重要。過去数年分をもとに基礎収入を決定し、67歳、あるいは健康状態によってはさらに先まで働く可能性を主張。
  2. 自営業で継続収入があった場合
    確定申告書をベースにし、経営実態や拡大傾向を示せれば将来分もある程度評価されやすい。
  3. 家事従事者(主婦・主夫)
    高齢でも家事労働に経済的価値があるとして、賃金センサスの女性学歴計平均賃金を使うことが多い。実態としての家事負担を具体的に示すことが大切。

保険会社との争点

  1. 健康状態・加齢による制限
    保険会社は「高齢で体力的にも仕事を続けられない」と主張。被害者側は実際に元気に働いていた証拠を提示し、反論。
  2. 過去の就労実績の不足
    直近で就職活動中の場合など、具体的な収入証拠が乏しいケースでは保険会社が“根拠不十分”として減額を狙う。
  3. 家事労働への評価
    保険会社が高齢で家事の負担が少ないと主張したり、日常生活に介護が必要だとみなす場合も。実態を医師や家族の証言で立証する必要がある。

弁護士に相談するメリット

  1. 収入や家事労働の実態立証
    弁護士が被害者や家族の聞き取りを行い、給与明細・確定申告書・家事の時間・内容などを整理し、交渉材料にする。
  2. 保険会社との交渉・裁判対応
    保険会社が提示してくる低い金額を弁護士が検証し、裁判所基準に基づく適正額を主張。争点がまとまらない場合はスムーズに訴訟手続きへ移行。
  3. 書類準備・ストレス軽減
    高齢の遺族が手続きをすべて行うのは困難。弁護士が一括サポートし、精神的負担を大幅に軽減。
  4. 弁護士費用特約
    弁護士費用特約があれば、費用負担を気にせず早期に専門家の協力を得られる。

まとめ

高齢者が死亡した場合でも、「すでに高齢だから逸失利益はない」と決めつけるのは大きな誤りです。被害者が実際に就労していた、もしくは家事に従事していた事実があれば、一定の逸失利益が認められる可能性は十分にあります。

  • 老齢年金は労働収入ではないが、勤務実態があればその分は逸失利益に計上可能
  • 家事従事者の場合も経済価値を認める裁判例が多数
  • 保険会社の「高齢だから賠償は少額」主張に反論するため、証拠を収集
  • 弁護士の協力で資料を整備し、適正な賠償を目指す

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、高齢者の死亡事故案件における逸失利益の主張方法や、家事労働・就労実態の立証等の経験を有しています。被害者が高齢であっても、正当な補償を受けられるようサポートをいたしますので、ご遠慮なくご相談ください。

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