はじめに
交通事故によって高次脳機能障害などの重度障害を負った場合、被害者の生活や仕事への影響は甚大なものになります。単に身体機能の問題だけでなく、認知機能や記憶障害、性格変化、集中力低下など、日常生活全般に大きな支障が生じることが特徴です。当然、賠償金(慰謝料や逸失利益)も大幅に増える傾向にありますが、一方で、保険会社が「症状が曖昧だ」として支払いを渋るケースも少なくありません。
本稿では、高次脳機能障害などの重度障害における慰謝料請求のポイントを解説し、医証の取り方や後遺障害等級認定の重要性、保険会社との交渉で意識するべき点をまとめます。被害者やご家族が、正当な補償を得るための参考にしていただければ幸いです。
Q&A
Q1:高次脳機能障害とは、具体的にどのような症状を指すのでしょうか?
頭部外傷や脳への衝撃により、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、人格変化などを引き起こす症状の総称です。見た目には分かりにくいため、周囲からは理解されにくいのが特徴です。
Q2:高次脳機能障害で後遺障害等級は認定されやすいのですか?
しっかりした医証(MRIなどの画像所見、神経心理学的検査結果、専門医の診断書など)が整っている場合は、1級~9級など高い等級が認定される可能性があります。しかし、検査データやリハビリ経過が不十分だと低い等級や不認定となることもあります。
Q3:重度障害の場合、慰謝料はどのくらいまで上がるのでしょう?
裁判所基準では、1級~2級の重度後遺障害で2,400万~2,800万円前後の後遺障害慰謝料が認められることもあります。さらに近親者慰謝料や介護費用なども加算され、高額となりやすいです。
Q4:高次脳機能障害で日常生活に支援が必要な場合、介護費用も請求できますか?
請求可能です。重度の場合は、常時介護や随時介護が必要となり、裁判所や示談で介護費用が認められるケースがあります。介護の頻度や内容、介護者(家族かプロか)によって計算方法が変わります。
Q5:保険会社が「単なる性格や年齢のせい」として支払いを渋っていますが、対処法はありますか?
高次脳機能障害は外見では分かりにくいため、保険会社が疑念を示すことが多いです。専門医の診察・検査、リハビリ記録、家族や周囲の証言などを集め、後遺障害等級を認定させることで対抗できます。
Q6:弁護士を頼むメリットは何でしょうか?
高次脳機能障害の医療知識や判例に精通した弁護士が後遺障害認定手続きをサポートし、保険会社が低く見積もる賠償額を大幅に増額できる可能性があります。医師との連携や介護費用の立証にも力を発揮します。
解説
高次脳機能障害の特徴と後遺障害等級
- 症状の多様性
- 記憶障害、注意障害、計画や判断力の低下、人格変化などが典型。
- 仕事や家事のみならず、社会生活全般に深刻な影響が及ぶ。
- 外見上の判別の困難さ
- 骨折や麻痺などと違い、見た目では分かりにくい。
- 保険会社が「本当に障害があるのか」と疑うことが多く、立証難易度が高い。
- 後遺障害等級の幅
- 重度(1~2級)から比較的軽度(9級程度)まで幅が広い。
- MRIで脳損傷の痕跡や、神経心理学的検査での低下が明確なほど高い等級が認められやすい。
慰謝料計算と増額要素
- 後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料
- 1級で約2,800万円前後、2級で約2,370万円前後、3級で約1,990万円前後などが裁判所基準の目安。
- 高次脳機能障害で1~2級が認定されれば、介護費用や施設入所費用なども加算される可能性がある。
- 日常生活支援・介護の必要性
- 常時介護が必要なら、介護費用として日額数千円~1万円以上が認められる裁判例もある。
- 家族が介護する場合も、家族の介護労力を賃金に換算して請求できる場合がある。
- 医師・専門医の意見書
- 病院ごとに検査設備やリハビリ体制が異なるため、高次脳機能障害に強い医療機関で専門的な検査を受け、症状を客観的に示すことが増額要因となる。
保険会社との争点
- 症状の信用性
- 見た目に障害がないと「単なるわがまま」「加齢による物忘れ」と扱われがち。
- リハビリ記録や家族・職場の証言などで、事故前後の変化を立証する必要がある。
- 後遺障害等級の設定
- 事故前の日常生活・仕事能力と、事故後の低下度合いを示すことで、高い等級を認定させる。
- 14級など軽度扱いされないよう、MRI所見などで物理的損傷を証明。
- 介護費用・逸失利益の大きさ
- 高次脳機能障害で働けなくなったり、要介護状態となると金額が大きくなるため、保険会社は低く見積もろうとする。
- 弁護士が事例や判例を引き合いに増額を主張。
弁護士に相談するメリット
- 医療機関との連携
- 高次脳機能障害の専門医やリハビリ施設を紹介し、的確な検査と診断を得る。
- 弁護士が医師とのコミュニケーションをサポートし、後遺障害診断書に必要事項を充実させる。
- 裁判例に基づく適正な慰謝料主張
- 過去の判例を踏まえ、保険会社が低額提示してきても裁判所基準で説得力ある交渉を展開。
- 介護費用・施設入所費用などの将来損害を正しく算出
- 長期にわたる介護が必要な場合、年数や金額を適切に設定し、示談や裁判で主張。
- ストレス・手間の軽減
- 家族が介護しながら保険会社と複雑な交渉をするのは困難。弁護士が窓口となり進捗を管理し、精神的負担を減らす。
- 弁護士費用特約で費用負担ゼロの可能性
- 高次脳機能障害案件では高額賠償が見込まれるため、特約の有無にかかわらず依頼のメリットが大きい。
まとめ
高次脳機能障害など重度障害の場合、見た目では分かりにくく、保険会社に症状を軽視されがちです。しかし、適切な検査や専門医の診断で後遺障害等級が高く認定されれば、慰謝料や介護費用、逸失利益が大幅に上積みされる可能性があります。
- MRI・神経心理学的検査などの医証整備が極めて重要
- 介護費用や施設入所費用も含めて、長期的な視点で請求金額を算定
- 弁護士の力で、保険会社の低評価を覆し、裁判所基準での賠償を勝ち取る
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、高次脳機能障害など重度障害の交通事故案件において、専門医・リハビリ施設との連携や豊富な判例知識を活かし、最大限の賠償を獲得できるようサポートします。お困りの際は、早期にご相談いただくことで正確な医証と適正な認定を得るチャンスが広がります。
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