はじめに
交通事故における損害賠償は、「どちらの側にどれだけの過失があったか」によって金額が大きく変動します。たとえば、自分の過失が0%なら相手から100%賠償を受けられますが、自分の過失が20%あればその分だけ損害額が減ることになります。つまり、過失割合こそが、最終的な示談金・賠償金を左右する最重要ポイントの一つなのです。
本稿では、過失割合の基礎を中心に、なぜ過失割合がこれほどまでに重要なのかを解説します。過失割合を適正に決定できるかどうかで、保険会社との示談交渉や裁判の結果が数十万~数百万円単位で変わることも珍しくありません。事故態様の分析や証拠の確保により、被害者が正当な割合を勝ち取るための知識として、ぜひ参考にしてください。
Q&A
Q1:過失割合とは何を指すのですか?
事故当事者の責任の度合い(事故原因を作った程度)を示す数字です。たとえば「8:2」となれば、片方が80%、もう片方が20%の過失を負うことになります。
Q2:過失割合が決まると、示談金はどのように変わりますか?
被害者の損害額(治療費・慰謝料など)に対して被害者の過失分が差し引かれます。たとえば損害額100万円で被害者過失20%なら、最終的には80万円しか受け取れません。
Q3:自分に過失が少ないと言いたい場合、どのような証拠が必要なのでしょうか?
事故現場の写真、ドライブレコーダー映像、警察の実況見分調書、目撃者証言などが有力な証拠です。交差点事故なら信号の状況やブレーキ痕などが重要です。
Q4:過失割合は示談で決まるのですか? それとも警察が決めるのですか?
警察は刑事責任の面で捜査・処分を行うだけで、過失割合の決定権はありません。過失割合はあくまで保険会社との交渉(民事)の中で合意するか、最終的には裁判所が判断します。
Q5:加害者が一方的に「あなたが悪い」と主張していますが、どう対抗すれば?
客観的証拠(ドラレコ、写真、目撃者証言など)を集め、保険会社や裁判所に提示することが重要です。弁護士を介すれば、過失割合の判例や事故態様に沿った適切な主張が可能になります。
Q6:自分の自動車保険に弁護士費用特約がある場合、過失割合の交渉にも使えますか?
はい、使えます。弁護士費用特約は示談交渉のための費用を保険会社が負担する特約なので、過失割合を争う交渉でも活用可能です。
解説
過失割合が決まる仕組み
- 事故態様の分析
- 追突、右折・直進、交差点、信号無視、車線変更などの事故類型ごとに、過去の判例が蓄積されている。
- 保険会社は「別冊判例タイムズ」などの基準表を参照し、過失割合の初期案を提示してくる。
- 当事者同士の示談交渉
- 保険会社同士の交渉か、被害者本人が直接加害者の保険会社と話し合う。
- どのくらいの速度で走っていたか、信号は何色だったか、どちらが優先道路かなどの要素を考慮し、過失割合を詰めていく。
- 裁判所の判断
- 交渉が決裂すれば、裁判で最終的に判決が出る。
- 裁判所は判例や具体的証拠をもとに過失割合を決定。
なぜ過失割合が重要か
- 最終的な示談金に直結
- 損害額(治療費、慰謝料、逸失利益など)のうち、被害者の過失分は差し引かれるのが基本。
- 過失割合が1割変わるだけでも、数十万円以上の差が出る可能性大。
- 被害者過失が大きいと後遺障害認定にも影響?
- 後遺障害の認定自体は事故態様よりも医学的要素が主。ただし、過失が大きいと保険会社が厳しい姿勢を取り示談が難航する。
- 軽傷事案でも大きな差
- 例えば慰謝料が50万円の軽傷事故でも、過失割合が2割か3割かで最終的な受取額が1割分変動。総額が小さくても実感されやすい差となる。
過失割合交渉を有利に進めるポイント
- 現場証拠の確保
- 事故直後に写真・動画を撮り、車両位置・タイヤ痕・信号状況を押さえる。
- 可能ならドライブレコーダーを保管し、警察の実況見分調書も後で取得する。
- 一貫した主張
- 事故直後の警察への説明と、後日の保険会社への説明が食い違わないよう注意。日記やメモをとり、記憶をしっかり保持。
- ドラレコ映像・目撃者証言
- 動画や第三者の証言があれば過失割合が覆る可能性が高まる。
- 防犯カメラ映像が入手できるなら積極的に確保。
弁護士に相談するメリット
- 判例や基準に精通
弁護士は過失割合に関する判例タイムズなどの資料を踏まえ、保険会社の不当な修正主張を客観的に論破。 - 証拠収集支援
ドラレコや目撃者証言を活用するために、警察や周囲への照会、映像取得などを効率的に行う。 - 交渉のストレス軽減
保険会社の担当者は慣れており、個人での交渉は負担が大きい。弁護士が代理交渉することで被害者は治療に専念できる。 - 裁判に備えた準備
示談で折り合いがつかない場合、速やかに裁判手続きに移行し、適正な過失割合を確定させる。 - 弁護士費用特約
特約があれば自己負担ゼロで弁護士依頼が可能。過失割合の争いが激しいケースでは特に有効。
まとめ
過失割合は、交通事故の示談交渉や裁判で最大の争点になることが多く、1割の違いが数十万~数百万円の差を生むこともあります。過失割合を適正に決定してもらうためには、事故現場の証拠、ドライブレコーダー、目撃者証言などの客観的根拠が不可欠です。また、保険会社に押し切られず、自分の主張を専門的な観点から展開するには弁護士のサポートが大きな役割を果たします。
- 警察は過失割合を決定しない:あくまで示談か裁判で決まる
- 証拠がないと不利:写真・動画・ドライブレコーダーで事故状況を可視化
- 1割の違いで大きな金額差:示談金が大幅に変動
- 弁護士活用:判例や基準に基づいて、保険会社と対等に交渉
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故の過失割合でトラブルが発生した被害者を多くサポートしており、豊富な判例知識と交渉力で、本来あるべき過失割合を獲得するお手伝いをしています。過失をめぐって保険会社と意見が対立している方は、お早めにご相談ください。
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