はじめに
学生が自転車通学をしている最中に交通事故の被害を受けるケースは、意外と少なくありません。通学路は狭い住宅街や信号の少ない道路が多く、車がスピードを出しすぎている、駐車車両を避けようとして接触するなど、事故の原因はさまざまです。また、学生の場合はまだ未成年であり、将来の就労可能性や進学への影響、学業損失などが特別に考慮されることがあります。
本稿では、学生が自転車で通学中に被害を受けた想定事例を題材に、過失割合の判断や損害項目(治療費・慰謝料・逸失利益・学業損失)について解説します。保険会社が「学生だから休業損害はない」と主張しても、裁判所は家事労働や学業・進学の遅れなどを評価する場合があり、適切に主張・立証することで示談金を引き上げられる可能性があります。
Q&A
Q1:学生には休業損害がないと聞きましたが、本当にそうですか?
働いていない学生には従来の休業損害は発生しにくいですが、逸失利益として「将来就職して得られるはずだった収入減」を補償する場合があります。短期的にバイトができなくなった分を休業損害として認める判例もあるので、弁護士と検討が必要です。
Q2:自転車vs自動車事故で、通学中の学生が被害者の場合、過失割合はどのくらいになりますか?
自転車は弱者保護の対象になりやすいですが、通学路の信号や標識の状況によって異なります。一般的には自動車が大きく過失を負うケースが多いですが、自転車側に無灯火や信号無視があれば被害者過失が数割認められる場合もあります。
Q3:学生が骨折などの重傷を負い、通学できなくなった期間の学費や留年費用は賠償されるのですか?
留年にともなう学費負担増や進学の遅れが実際に生じれば、「特別損害」として認められる判例もあります。ただし、留年の原因が本当に事故だけなのかなど、因果関係を立証する必要があります。
Q4:部活動やスポーツ大会への参加ができなくなり、精神的打撃を受けた分は慰謝料に反映されますか?
可能性はあります。弁護士が「学生生活での楽しみや将来の目標を断念せざるを得なくなった」などを具体的に主張し、裁判所が通常よりも高めの精神的苦痛を認める事例が存在します。保険会社も示談で譲歩する場合があります。
Q5:学生が後遺障害等級をとれば、将来の収入(賃金センサス)を基に算出されるのですか?
はい。若年者(大学生や高校生など)の場合、賃金センサスの平均賃金をベースに算出する判例が多いです。男女や学歴で統計が分かれており、被害者の性別・将来の進路などを加味して計算します。
Q6:保護者が学校や警察から情報を得るにはどうすればいい?
学校側に事故状況や通学路の問題などを説明してもらい、安全配慮義務の観点から何か資料があれば取得します。警察には実況見分調書の閲覧・コピーを求めるなどして、事故態様を明確に把握します。弁護士が代理で行うとスムーズです。
解説
想定事例:自転車通学中の高校生が被害を受けたケース
- 事故概要
- 朝の通学時間、被害者(高校2年生)が自転車で走行中、交差点を直進しようとしたところ、右折してきた自動車に衝突。
- 被害者は左大腿骨骨折で3週間入院、退院後もリハビリ通院が必要となり、学校を2ヶ月休学する事態に。
- 過失割合
- 信号ありの交差点で被害者自転車側が青、自動車が黄色か赤に近いタイミングで突っ込んできた事実が目撃者証言で判明。
- 示談交渉のポイント
- 被害者が骨折でリハビリ長期となり、部活の大会出場を断念せざるを得なかったことや進学のための勉強計画に支障が出たなどを強調。
- 慰謝料増額と、将来収入(賃金センサスをベースにした逸失利益)を一定期間認めてもらう。
学生が被害を受けた場合の賠償項目
- 治療費
入院費用・通院費用。未成年の場合は保護者が立替することもあるが、最終的に相当因果関係が認められれば加害者保険から支払われる。 - 入通院慰謝料
怪我の重さや通院期間に応じて赤い本などの裁判所基準で算定。被害者の年齢自体は慰謝料に直接影響しないが、通学や部活を断念した苦痛を主張できるケースも想定される。 - 後遺障害が認定された場合
骨折後に変形が残ったり、可動域制限、神経症状が続けば等級がつき、後遺障害慰謝料と逸失利益が加算される。 - 逸失利益(学生の場合)
将来の就職や収入可能性を賃金センサスで計算。 - 学業損失・留年費用
留年や休学により追加学費が発生したり、就職が遅れたことによる収入喪失があれば、特別損害として一部認めるケースもある(立証次第)。
過失割合の考え方
- 自転車の弱者保護
歩行者ほどではないが、自転車も車両に比べ脆弱とされ、自転車側に有利に判断される例が多い。 - 自転車側の違反
無灯火、信号無視、イヤホン装着、スマホ操作などあれば過失が数%〜20%加算される。 - 相手自動車の違反や速度超過
大幅な速度超過や信号無視が明らかなら自転車の過失を0%とする判例もあり得る。
弁護士に相談するメリット
- 適正な過失割合の確保
自転車は弱者として保護されやすいが、保険会社が「自転車の信号無視」を主張して高い過失を押し付ける可能性あり。弁護士が警察記録や映像証拠を提示し、過失を下げる。 - 学業損失・逸失利益の立証
学生の逸失利益は一見不確定に思えるが、弁護士が賃金センサスや進学計画などを材料に、裁判例を提示して算定額を押し上げる。 - 後遺障害認定サポート
骨折や神経症状が残ったら後遺障害診断書の内容が重要。弁護士が医師に必要事項を説明し、不十分な記載を防ぐ。 - 保険会社の治療費打ち切りを阻止
中高生が骨折すると成長期のリハビリが重要。弁護士が医師の意見書を使い、治療継続を主張して学業に支障をきたさないよう援護。 - 弁護士費用特約
家族が自動車保険に特約をつけていれば、被害を受けた学生でも費用負担ゼロで依頼でき、示談金増額を目指しやすい。
まとめ
学生が自転車通学中に被害を受けた事故では、以下のような点が示談交渉での成功を左右します。
- 自転車 vs 自動車の過失割合
弱者保護で自動車の過失が大きくなるが、自転車側の違反(無灯火・信号無視など)があれば修正も - 骨折・後遺障害
部位や変形治癒が残れば12級などで認定可能、逸失利益が大幅増 - 学業損失・留年
特別損害として追加主張できる場合あり - 弁護士のサポート
証拠収集、過失割合交渉、逸失利益・学業損失の立証で有利に
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、自転車事故事案にも精通し、医療機関との連携や裁判例を駆使した示談交渉で、被害者が本来得られるべき補償を最大化するためのサポートをしています。学生ご本人や保護者の方は、保険会社の低額提示や治療費打ち切りなどの悩みを抱える前に、早期にご相談ください。
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