はじめに
高次脳機能障害は、交通事故などによる頭部外傷・脳損傷が原因で、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など多彩な症状を引き起こします。こうした障害を抱えた被害者が生活や職場復帰を目指すには、専門的なリハビリと医療ケアが欠かせません。ところが、「どこでリハビリを受ければいいか」「専門施設はどうやって探すか」など、家族や本人が戸惑う点も多いのが現状です。
本稿では、高次脳機能障害のリハビリと治療方法を中心に、専門医や専門施設の選び方、具体的なリハビリ手法(認知機能訓練、社会復帰支援など)について解説します。また、交通事故の被害者が長期リハビリを受ける際の費用負担や保険会社対応にも触れ、適切な補償を受けつつ回復と社会復帰を目指すポイントを示します。
Q&A
Q1:高次脳機能障害のリハビリは、普通の病院や整形外科でできるのでしょうか?
必ずしもどこでも受けられるわけではありません。高次脳機能障害に特化したリハビリ施設やリハビリ専門病院があり、作業療法士(OT)や臨床心理士、言語聴覚士(ST)などがチームで訓練を行うケースがあります。一般の整形外科だけでは頭部外傷の認知リハビリに対応しきれない場合があります。
Q2:リハビリで具体的にどんなことをするのですか?
たとえば、記憶障害にはメモを活用する訓練や記憶再生を促すプログラム、注意障害には注意配分や集中力トレーニング、遂行機能障害には段取りを踏む練習や問題解決タスクなどが行われます。社会適応訓練として買い物や交通機関利用の練習を実施することもあります。
Q3:通院先を変えたい場合、保険会社から「勝手に変えると治療費を出せない」と言われることはありませんか?
医師の紹介やリハビリ専門施設の必要性をしっかり説明すれば、正当な理由と認められやすいです。保険会社が不当に拒否するなら、弁護士を介して医学的根拠を示し交渉するのが有効です。高次脳機能障害リハビリを行う施設への転院は正当な理由となる場合が多いといえます。
Q4:どのくらいの期間リハビリすれば良くなるのか、目安はありますか?
脳損傷の程度や個人差によって大きく異なりますが、半年から数年にわたるリハビリが必要とされる例もあります。その後も継続的な訓練が効果を発揮することがあります。
Q5:後遺障害が認定されたあとでもリハビリは続けられますか?
もちろん可能です。ただ、保険会社が「症状固定」とみなし、治療費負担を打ち切ろうとするケースがあるため、弁護士と相談して異議を唱える、あるいは健康保険や公的支援(自立支援医療など)を併用するなど、継続リハビリの手段を考える必要があります。
Q6:専門施設を探すにはどうすればいいでしょう?
まずはかかりつけ医やリハビリ科の医師に相談し、高次脳機能障害のリハビリ実績を持つ病院や施設を紹介してもらう方法が一般的です。弁護士が医療ネットワークを持つ場合もあり、弁護士を通じて適切な施設を紹介してもらえることもあります。
解説
高次脳機能障害のリハビリ・治療の主なアプローチ
- 認知機能訓練
- 記憶・注意・遂行機能などの認知機能を改善・補償するため、紙ベースやパソコンプログラムを活用したトレーニングを行う。
- 例:簡単なパズル、単語リスト暗記、複数作業を同時に進めるゲームなど。
- 作業療法(OT)
- 日常生活動作(ADL)を再習得するための訓練。洗濯・料理・買い物・仕事タスクなどを段階的に練習し、自立度を高める。
- 遂行機能障害で段取りが難しい場合、手順リストを作成して実践するなど具体的手法が導入される。
- 言語聴覚療法(ST)
- 記憶や注意、コミュニケーション能力の向上を言語聴覚士が支援。発話障害や理解力低下を補う。
- グループセッションで他者とのやりとりをシミュレーションし、社会的行動障害の改善を図ることも。
- 社会復帰支援・復職支援
- 病院やリハビリセンターによっては、社会復帰を目指したプログラム(ジョブコーチ、企業インターンなど)が用意される。
- 仕事でのミスや対人コミュニケーションに課題を抱える被害者を対象に、ステップアップを図る。
専門医・専門施設の選び方
- 主治医や医療ソーシャルワーカーに相談
- 病院で高次脳機能障害の可能性を指摘されたら、専門医やリハビリ施設を紹介してもらうのが基本。
- 大学病院などで専門外来を設けている場合もある。
- リハビリ科・作業療法科の充実度
- 整形外科や内科では対応が難しい認知リハビリを専門的に行うリハビリ科があるか確認。
- 医師や作業療法士(OT)が高次脳機能障害の研修・資格を持つかどうかは大きなポイント。
- 地域のリハビリテーション支援センター
- 各都道府県に総合リハビリセンターがあり、高次脳機能障害の専門外来を持つところもある。
- 弁護士や支援団体からの情報
- 交通事故の脳損傷案件を多く扱う弁護士は、専門病院やリハビリ施設のネットワークを有している場合がある。
- 公的支援団体から病院情報を得る方法もある。
保険会社対応と費用負担
- 症状固定前のリハビリ費用
- 一般的に、症状固定と判断されるまでの治療費・リハビリ費は保険会社が負担する。ただし、高次脳機能障害は長期になることが多いため、早期打ち切りのリスクがある。
- 弁護士が「まだ治療継続が必要」と医学的根拠を示し、治療費打ち切りを阻止する。
- 後遺障害等級認定後のリハビリ
- 等級認定が下りても、リハビリ継続の必要性がある場合は保険会社と協議。
- 任意保険では“症状固定=治療終了”とみなすことが多く、保険会社が費用を拒否するケースが多い。
- 健康保険(医療保険)の利用や公的支援(障害福祉サービス、自立支援医療)を併用する方法も検討が必要。
- 後遺障害慰謝料・逸失利益
- 高次脳機能障害で1~9級認定されれば、後遺障害慰謝料が数百万円〜数千万円規模、介護費用や逸失利益も多額になる可能性。
- 弁護士が適切に立証すれば高額賠償を得られる可能性がある。
弁護士に相談するメリット
- 専門的リハビリの必要性を保険会社に主張
弁護士が医師の意見書を取得し、高次脳機能障害リハビリが不可欠であることを保険会社へ説明して治療費を継続させる交渉を行う。 - 後遺障害等級認定サポート
脳外傷案件で神経心理学的検査の結果や専門医の診断書を準備し、認定漏れや低い等級を防ぐ。 - 高額示談金を実現
重度の高次脳機能障害なら介護費や将来逸失利益が大きい。弁護士が裁判所基準で計算し、保険会社の過小評価に対抗。 - 家族の負担軽減
高次脳機能障害は家族介護負担が大きい。弁護士が家族介護料や精神的苦痛の増額を主張してサポート。 - 弁護士費用特約
費用特約があれば、長期に及ぶ脳損傷事案でも自己負担を軽減して弁護士に依頼可能。
まとめ
高次脳機能障害の被害者が回復や社会復帰を目指すには、専門のリハビリと治療が欠かせません。
- リハビリ方法
記憶・注意・遂行機能などの特化訓練、作業療法、社会復帰プログラム - 専門施設選び
脳損傷リハビリに実績ある病院や、作業療法士・言語聴覚士など専門職が充実していること - 保険会社対応
長期リハビリ費を認めさせるには医師の意見書や弁護士の交渉が必要 - 後遺障害認定・高額賠償
重度なら1級〜2級で介護費を含む多額示談金、軽度でも9級〜12級が認められる場合あり
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、高次脳機能障害のリハビリや治療を要する被害者に対し、専門医との連携や後遺障害申請支援を行い、保険会社との交渉を通じて適正な補償を追求しています。事故後しばらく経ってからでも遅くはありませんので、脳機能の変化が疑われる方はお早めにご相談ください。
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