はじめに
むち打ち損傷(頸椎捻挫)を負うと、首の痛み、肩こり、頭痛などの症状が続き、仕事や日常生活に大きな支障をきたすことがあります。しかし「レントゲンやMRIに映らないから軽症」と思われがちなため、十分な治療・リハビリが行われず痛みが長引く例も少なくありません。保険会社が「数ヶ月で治るはず」と早期打ち切りを強要することもあり、被害者が示談金や後遺障害認定の面で不利に陥るケースも散見されます。
本稿では、むち打ちの治療やリハビリの実際として、整形外科での理学療法や接骨院での施術、鍼灸など多様な治療手段を取り上げ、どのように活用して症状改善を図るかを解説します。適切な治療を続けることで後遺症の残存リスクを低減するとともに、もし後遺障害が残った場合も、通院実績が認定で有利に働くことが多いです。保険会社の打ち切りを回避し、長期的なケアを受けるためにも正しい治療選択が大切です。
Q&A
Q1:むち打ちで整形外科に行くと、どんな治療が一般的ですか?
湿布や消炎鎮痛薬の処方、首を温める理学療法(ホットパック、マイクロ波)、首の可動域を少しずつ広げる運動療法などが中心です。頑固な痛みがあればブロック注射を検討する場合もあり、経過を見つつリハビリを継続します。
Q2:接骨院や整骨院でも治療を受けられますか?
はい、むち打ちの筋肉や関節の痛みに対する施術が行われることが多いです。ただし、接骨院は医師のいない施設であるため、レントゲン検査などはできません。整形外科での医学的裏付けを確保しつつ、接骨院の施術を併用する形が望ましいです。
Q3:鍼灸は効果がありますか? 保険会社は認めてくれないかもしれませんが…。
鍼灸で筋肉の緊張や痛みが緩和する例もあります。保険会社によっては鍼灸治療を渋ることがありますが、医師の同意書や症状改善の実績を示せば、治療費の一部を認めるケースも。整形外科と連携して「補完的な施術」と位置付けることが大切です。
Q4:整形外科と接骨院を同時に通うと、重複治療とみなされませんか?
みなされる可能性があります。保険会社は「同じ部位の治療を複数施設で並行」している場合、重複請求と疑うことが多いです。ただし、医師が「並行して施術を受ける意味がある」と判断し、治療方針が明確なら問題ないケースも。弁護士を通じて保険会社に説明するのが安心です。
Q5:症状が長引いても医師が「そろそろ症状固定」と言ってきたら、どうすれば?
医師が症状固定と判断するなら、後遺障害診断書を作成してもらい後遺障害申請に進むのが一般的。しかし、被害者が「まだ痛みが強い」と感じる場合は別の医師(セカンドオピニオン)を受診し、リハビリ継続の必要性を再検討してもらう方法もあります。
Q6:弁護士が治療に関するアドバイスをしてくれるのですか?
はい。医療行為そのものは医師が行いますが、弁護士が保険会社対応や適切な診断書の作成をサポートし、必要に応じてセカンドオピニオンやリハビリ施設を紹介することも。症状固定や後遺障害等級の取得を視野に入れながら、治療戦略をともに考えます。
解説
整形外科での治療・リハビリ
- 物理療法(理学療法)
- ホットパック、マイクロ波、低周波治療器などで首周辺の血行を促進し、筋肉の緊張や痛みを和らげる。
- 首の可動域練習や軽い筋力トレーニングなど、段階的に首の動きを回復。
- 薬物療法
- 消炎鎮痛薬や筋弛緩薬、神経痛を軽減する薬などを処方する場合がある。
- 痛みや炎症を抑えながらリハビリを進め、早期回復を狙う。
- ブロック注射
- 神経根症状型むち打ちなど、強い痛みやしびれが続く場合、神経ブロック注射で痛みを緩和することがある。
- 一時的に炎症を抑え、可動域訓練をやりやすくする効果が期待。
- 症状経過の観察
- 定期的な診察で痛みやしびれの推移を医師がチェックし、必要に応じてMRI再検査などを行う。
- 保険会社の打ち切り圧力があっても、医師が「まだ改善見込みがある」と所見を出せば治療継続が認められやすい。
接骨院・鍼灸院での施術
- 接骨院(柔道整復師)
- 首や肩回りの手技(マッサージ、矯正)や低周波治療で筋肉の緊張を緩和し、痛みを軽減。
- 整形外科では補いきれない生活動作への指導やケアを行う例も。
- 医師がいないため、診断書作成は不可。整形外科との併用で医学的裏付けを確保するのが理想。
- 鍼灸
- 鍼(鍼灸師がツボに鍼を打ち、筋肉の緊張や血行を改善)やお灸による温熱効果で痛みやこりを和らげる。
- 科学的エビデンスは部分的だが、実際に症状緩和を感じる被害者も多い。保険会社が治療費を認めない場合は医師の同意書などで対応する。
- 併用の注意点
- 整形外科と接骨院・鍼灸院を同時通院する場合、重複治療とみなされないよう医師の紹介状や施術計画を明確にしておく。
- 病院での診察を怠ると、医学的証拠が不足し後遺障害認定に不利になる恐れあり。
後遺障害等級・示談交渉への影響
- 通院実績と症状の一貫性
- むち打ちで後遺障害が残ったと申請するには、首の痛みやしびれを継続的に訴え、通院していた事実が重要。
- 痛みがあるのに治療を中断したり、接骨院だけで病院に行かなかった場合、保険会社が「本当に辛いのか?」と疑うことが多い。
- 客観的検査所見
- レントゲンやMRIに異常がなくても、神経学的テスト(ジャクソン、スパーリング)や筋力測定などの所見が診断書に記載されれば説得力が増す。
- 痛みやしびれの部位・範囲を詳細に書いてもらう。医師にその必要性を説明し、協力を仰ぐことが重要。
- 保険会社の早期打ち切りを防ぐ
- 「3ヶ月経ったからもう治るはず」と言われても、症状が続いているなら医師の意見書で反論。
- 弁護士が介入し、まだ症状固定には至っていないと医学的に主張することで治療継続を勝ち取る事例が多い。
弁護士に相談するメリット
- 治療費打ち切りへの対抗
保険会社が「軽傷だ」と判断しても、弁護士が医師の診断書や経過報告を根拠に治療継続を主張。 - 後遺障害等級申請をサポート
症状固定時に適切な診断書を作成してもらい、14級9号や12級などを狙う。神経根症状があれば12級認定の可能性もある。 - 示談金増額
むち打ちであっても裁判所基準での慰謝料を保険会社に主張し、大きな増額を得られるケースは多数。 - 複合療法の費用請求
接骨院や鍼灸の費用も、「医師の同意」「症状緩和に寄与する」ことを弁護士が論証し、保険会社に認めさせやすくなる。 - 弁護士費用特約
むち打ちは長期化しやすいが、特約で自己負担ゼロなら治療・示談交渉に集中できる。
まとめ
むち打ちの治療・リハビリは、
- 整形外科
レントゲン・MRIなどの検査、理学療法(温熱・電気・運動療法)、ブロック注射など - 接骨院(整骨院)
手技(マッサージ、矯正)、低周波治療など。医師不在なので診断書は不可 - 鍼灸
筋肉の緊張や痛みを軽減する補完療法として利用
を組み合わせ、長期的な痛みやしびれを軽減することが大切です。
しかし、保険会社は「軽微な外傷」として早期打ち切りや低額示談を提示しがち。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、医学的根拠と適切な通院実績の整備で、後遺障害認定や示談金の増額をサポートしています。首の痛み・症状が長引いている方は、ぜひ早期にご相談ください。
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