はじめに
むち打ち損傷(頸椎捻挫)を負った被害者が交通事故の示談金を考える際、慰謝料がどのくらい認められるかは大きな関心事です。事故後、首の痛みや頭痛などが長く続き、生活や仕事に支障が出る場合でも、保険会社は「軽度なケガだから」と低額の提示を行うことが多いため、適切な相場や算定基準を知っておくことが重要になります。
本稿では、むち打ち慰謝料の相場を、通院期間や後遺障害の有無といった要素に分けて解説します。さらに、自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準という3つの基準があることや、通院実績の積み方によって大きく金額が異なる点にも触れます。弁護士が介入することで裁判所基準に近づけ、数十万円以上増額される例も珍しくありません。
Q&A
Q1:むち打ち慰謝料の相場は一体いくらくらいですか?
一概には言えませんが、通院期間3ヶ月で完治した軽度むち打ちの場合、自賠責基準だと数十万円程度、裁判所基準で60万円~80万円程度が一つの目安です。通院期間が半年~1年と長くなると100万~150万円近くになることもあります。
Q2:自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準で、具体的にどう違うのでしょう?
- 自賠責基準
最低限の補償で、日額4,300円×通院日数などシンプル計算 - 任意保険基準
保険会社の内部マニュアルに基づく独自計算。自賠責より少し高めだが裁判所基準より低い - 裁判所基準(赤い本・青い本)
最も高額になりやすい。慰謝料表で通院期間を元に裁判実例の平均が反映される
Q3:後遺障害が14級で認定されたら、どのくらい慰謝料が上乗せされるのでしょう?
14級の場合、裁判所基準で後遺障害慰謝料約110万円が加算されるのが目安(※他項目の状況によって変動あり)。自賠責基準だと後遺障害慰謝料32万円とかなり低く、任意保険基準もそれに準ずることが多いです。
Q4:通院期間を保険会社が「実通院日数」で計算すると少なくなってしまいますか?
はい。自賠責基準の計算では「総治療日数」と「実通院日数×2」のいずれか少ない方を使うため、実通院日数が少ない(たとえば週1回)だと慰謝料が下がりがちです。一方、裁判所基準では月ごとの通院頻度や症状経過を総合判断するため、一定期間通院することでより高い金額が期待できます。
Q5:弁護士が介入すると何が変わるのでしょう?
保険会社は任意保険基準(自社マニュアル)で低めに提示してくるのが普通ですが、弁護士は裁判所基準を根拠に交渉し、大幅に増額できる可能性があります。むち打ちでも後遺障害等級が認められ、裁判所基準で計算すると数十万円以上変わるケースが多いといえます。
Q6:後遺障害認定されなくても、弁護士に相談するメリットはありますか?
後遺障害認定がなくても、通院慰謝料や逸失利益(休業損害)で保険会社と争点になる場合があります。弁護士が裁判所基準で計算すると、保険会社が最初に提示した金額より数十万円~100万円以上アップすることもあり、決して無駄ではありません。
解説
むち打ち慰謝料の算定要素
- 通院期間
- 何ヶ月治療したかが慰謝料額に直結し、症状が続けば通院実績が増え、その分示談金が高くなる。
- 保険会社は「3ヶ月程度で症状固定」と主張しがちだが、痛みが残る場合は医師の判断で通院を継続すべき。
- 後遺障害の有無
- 後遺障害認定されれば後遺障害慰謝料が加算され、14級で裁判所基準約110万円が上乗せされる目安。
- 自賠責基準だと14級は32万円など大きく差があり、弁護士による裁判所基準の主張が重要になる。
- 痛みやしびれの程度・神経症状
- 単なる「首の痛み」だけより、神経根症状型で腕や手のしびれ、握力低下があると後遺障害等級が上がることも。
- 痛みやしびれを神経学的検査(ジャクソン・スパーリング)やMRIで裏付けられれば慰謝料増に反映しやすい。
自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準の違い
- 自賠責基準
- 最低限の補償を目的とした基準。1日あたりの慰謝料が4,300円×通院日数など、機械的計算が中心。
- 後遺障害14級は32万円という低い設定で、被害者に十分な賠償と呼べないレベル。
- 任意保険基準
- 各保険会社が社内マニュアルを持っており、自賠責よりは少し高めだが、裁判所基準よりかなり低め。
- 保険会社が提示する示談金はこの基準がベースになりがち。
- 裁判所基準(赤い本)
- 判例に基づき、被害者の苦痛や期間を正当に評価する基準。
- むち打ち通院3ヶ月でも60万円~80万円程度、後遺障害14級だと110万円程度の後遺障害慰謝料など、他基準を上回る。
実際の示談金例
- 通院3ヶ月・後遺障害なし
- 自賠責:実通院日数や総治療日数から計算し、10万円程度の慰謝料(目安)
- 裁判所基準:通院期間3ヶ月なら約60万円前後の慰謝料が認められることも。
- 弁護士が交渉すれば、保険会社提示の数倍に増える事例も珍しくない。
- 通院6ヶ月・後遺障害14級
- 自賠責基準:14級は32万円の後遺障害慰謝料+通院分の傷害慰謝料(日額4,300円計算)
- 裁判所基準:傷害慰謝料で100万円前後+14級後遺障害慰謝料110万円程度=合計210万円前後
- 保険会社が80万円程度しか提示しなかったのが、弁護士介入で200万円以上にアップする例もある。
- 神経根症状型・12級13号認定
- MRIで神経根の圧迫所見があり、他覚的初見に基づくと判断される場合には、6~12ヶ月通院でも痛みしびれが続いた場合、12級認定が得られることもあり得る。ただし、実際に認定されるケースは少ない。
- 後遺障害慰謝料は裁判所基準で290万円前後とされ、通院慰謝料等を含めると総額が300万~400万円に達する可能性あり。
弁護士に相談するメリット
- 示談金の大幅増
むち打ちは「痛みがあいまい」とみられがちで、保険会社は任意保険基準で低めに提示。しかし弁護士が裁判所基準で主張し、2倍以上に増えることも少なくない。 - 後遺障害申請サポート
症状固定後、医師の診断書や神経学的テストを整備し、14級・12級取得を狙う。非該当となっても異議申立で逆転するケースもあり。 - 治療費打ち切り対策
3ヶ月程度で打ち切りを迫られても、医学的根拠(MRI所見や症状経過)を示し、まだ治療が必要だと交渉。 - 弁護士費用特約
むち打ち案件でも特約があれば費用負担なし。示談金の増額分だけ被害者が得する形に。 - 家族や職場からの証言集め
痛みによる日常支障や仕事パフォーマンス低下を客観的に示すことで、逸失利益や慰謝料を高く評価させる。
まとめ
むち打ち慰謝料の相場と算定基準を抑えるには、
- 通院期間
3ヶ月・6ヶ月・1年と期間が増えるほど慰謝料が増える - 後遺障害の有無
14級なら裁判所基準約110万円、12級なら約290万円が後遺障害慰謝料の目安 - 自賠責・任意保険・裁判所基準の差
裁判所基準が最も高く、弁護士が介入しないと保険会社提示は低め - 神経学的所見や症状一貫性
後遺障害認定を勝ち取るポイント
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、むち打ちでお悩みの方の症状固定後の後遺障害申請や、保険会社との示談交渉を裁判所基準で進め、慰謝料・逸失利益を大幅にアップさせる実績が多数あります。首の痛みやしびれが続く方は、ぜひ早期にご相談ください。
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