はじめに
交通事故で脊椎(背骨)を強く損傷し、脊髄にも重大なダメージを受けた場合、下半身や四肢の麻痺だけでなく、脳への衝撃が加わっているケースも考えられます。とくに激しい衝撃で頭部が揺さぶられた場合、高次脳機能障害を合併するリスクがあり、事故後に記憶障害や注意力低下などの認知機能障害が生じることがあるのです。脊椎・脊髄損傷の治療に注力するあまり、この脳機能障害が見落とされ、後遺障害の認定や示談金において不利になる被害者も少なくありません。
本稿では、重度の脊髄損傷によって頭部衝撃の可能性が高まるメカニズムを踏まえ、高次脳機能障害との合併リスクを解説します。脳と背骨は一見独立した部位に思われがちですが、強い全身衝撃が脳にも及んでいる場合があるため、事故後の通院・検査では脳外傷を視野に入れた診断が重要です。保険会社は「脊椎損傷以外の症状は別物」と扱いがちですが、実際には脳と脊髄の両方が損傷しているケースもあります。
Q&A
Q1:脊髄損傷があると、なぜ高次脳機能障害の合併リスクが高まるのですか?
脊髄損傷を伴うほどの強い衝撃は、全身が大きく揺さぶられる事故形態であることが多いため、頭部も衝撃を受けている可能性が高いのです。特に頸椎損傷の場合、頭部に急激な前後・回旋運動が起きて脳が揺れることで高次脳機能障害を生じるリスクがあると考えられます。
Q2:実際に脊椎損傷と高次脳機能障害を同時に負うケースは多いのでしょうか?
軽度例は統計が整備されていませんが、重度の脊髄損傷で頸椎骨折を伴う場合、頭部にも何らかの衝撃が加わり軽度外傷性脳損傷(TBI)が隠れているケースは少なくありません。後に記憶障害や集中力低下などが顕在化し、高次脳機能障害と診断される例があります。
Q3:脊髄損傷だけに集中していたら、脳機能検査を後回しにされてしまうことがあるのですか?
はい。生命の危機や四肢麻痺に注目が集まり、脳神経外科や神経心理学的検査が行われないまま退院することも珍しくありません。そこで事故後数ヶ月してから「頭がぼんやりする」「記憶が落ちた」と自覚し、改めて検査した結果、高次脳機能障害が発覚するケースがあります。
Q4:もし事故後に頭痛や物忘れがあるなら、どんな検査を受ければいいですか?
MRI(頭部)で脳実質の出血や微小損傷、萎縮をチェックし、神経心理学的検査(WAIS-Ⅳ、WMS-Rなど)で認知機能(記憶・注意・遂行機能)を客観的に評価します。脳外傷専門の医師や臨床心理士がいる施設へ相談するのが望ましいです。
Q5:脊椎損傷と高次脳機能障害が同時に認定された場合、後遺障害等級はどうなるのですか?
併合等級の考え方が適用されます。等級が上がるほど示談金や介護費用も大きく認められます。
Q6:脊椎損傷と脳損傷を同時に主張すると、保険会社に「別々の損傷」と言われそうですが…。
事故形態や症状の総合性をしっかり説明し、「強力な衝撃で脊椎のみならず頭部も揺さぶられた」と因果関係を示すのが大切です。弁護士が専門医の意見書や神経心理学的検査結果を取りまとめ、併合等級を狙い保険会社の反論に対処します。
解説
脊髄損傷があるほどの衝撃と頭部への影響
- 頸椎の骨折・脱臼での頭部動揺
- 後方からの強い追突や転落事故などで頸椎を破壊するほどの衝撃が頭部にも伝わり、脳が急加速・減速する。
- 軽微な頭部外傷でも軸索が微小断裂を起こし、高次脳機能障害を発症する可能性(びまん性軸索損傷の軽度版など)。
- 全身の大きな揺れ
- 背骨が折れるほどのエネルギーが身体全体を動揺させ、脳も頭蓋内で衝突(クー・コントレクー損傷)を起こしうる。
- 見た目は脊椎中心の怪我でも、後に記憶障害や注意障害が判明する事例がある。
高次脳機能障害の合併リスクと見落とし
- 脊椎損傷の治療優先で脳検査を後回し
- 首や腰の手術・リハビリが急務になり、頭部MRIや神経心理学的検査が行われず、外傷性脳損傷が見逃される。
- 「首が痛いから集中力が落ちているだけ」と誤解し、脳外傷に気付かないケースがある。
- 事故後数週間〜数ヶ月で認知症状が顕在化
- 記憶障害、注意力散漫、感情コントロールの失調などが徐々に表れ、本人も家族も気づかないまま時間が経過。
- 示談後に「実は高次脳機能障害だった」と判明しても、追加請求が難しい場合があるので注意が必要。
- 医師・弁護士との連携
- 脊椎損傷が重いほど頭部検査も念のため行うよう、専門医や弁護士が勧めるのがベスト。
- 軽度な脳外傷でも神経心理学検査で認知機能低下が証明されれば併合等級が上がり、賠償金大幅増を狙える。
後遺障害・示談交渉への影響
- 併合等級の高位化
- 例:脊髄損傷で下半身不随(5級)+ 高次脳機能障害(9級) → 併合4級へ格上げ、介護費や逸失利益がさらに増加。
- あえて別々の損傷を「まとめて軽度評価」されないよう専門医が神経症状を区別して書類を作成する必要あり。
- 介護費や車いす、家屋改造
- 重度麻痺と高次脳機能障害が合併すれば介護の難易度が高まり、介護費は1日1万円近く認められる例もある。
- 日常生活すべてでサポートが要るため、バリアフリー改造や車いすのカスタマイズなど多額の費用がかかる。
- 弁護士による医学的根拠整備
- 弁護士がMRI、神経心理学検査の結果を医師から取得し、両方の損傷を示談交渉の根拠に含める。
- 保険会社は「脳損傷は関係ない」と切り分けがちだが、事故の衝撃全体が原因と論理的に示すことで併合等級を確保。
弁護士に相談するメリット
- 専門医への橋渡し
弁護士が脊椎・脊髄分野だけでなく脳神経外科にも詳しい医師を紹介し、MRI・神経心理学検査の追加を提案。 - 併合等級を目指す
脊髄損傷による下半身麻痺などの障害に加え、高次脳機能障害(9級〜7級等)も認定されれば、上位等級に繰り上がり示談金が飛躍的に増える。 - 早期打ち切り対策
首や腰の治療のみで頭部検査をせず、保険会社が3〜6ヶ月で打ち切る流れを止める。弁護士が「まだ脳外傷の疑いがある」と医学的根拠を提示し、検査費用負担を認めさせる。 - 総合賠償
併合等級により介護費、家屋改造費、将来逸失利益を高額で認めさせる。1億円級となる事例も稀ではない。 - 弁護士費用特約
脊椎・脊髄損傷と高次脳機能障害の合併は非常に高額化するため、特約があれば費用リスクゼロで依頼できる大きなメリット。
まとめ
重度脊椎損傷によって、
- 頸椎・脊髄に強い衝撃
→ 四肢麻痺などの神経障害 - 頭部も揺さぶられる
→ 高次脳機能障害(記憶障害・注意障害・遂行機能障害など)合併リスク - 併合等級により示談金が大幅アップ
- 保険会社は「脊椎のみの損傷」扱いにしがち → 医学的検査で脳外傷を見逃さず、併合を狙う
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、脊椎損傷と脳外傷を併発したケースで実績があり、MRI・神経心理学的検査を含む医学的根拠を整備し、重度の併合等級を目指して保険会社と交渉しています。もし首・背中だけでなく頭痛や記憶力低下を感じる場合は、早期にご相談ください。
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