
はじめに
交通事故で膝(膝関節)に大きな衝撃が加わると、半月板損傷や十字靭帯(前十字靭帯・後十字靭帯)の断裂、さらには膝蓋骨骨折などが発生する危険があります。膝関節は身体の中でも荷重が集中し、複雑な軟骨・靱帯構造を持っているため、一度重大な損傷を受けると可動域制限や痛みの慢性化につながり、日常動作や仕事に深刻な支障を残すことが少なくありません。また、手術後も長期リハビリが必要となり、保険会社の治療打ち切りが懸念される部位でもあります。
本稿では、膝の代表的損傷として半月板損傷、十字靭帯断裂、膝蓋骨骨折を取り上げ、その症状・治療方法・後遺障害のリスクを解説します。事故後に膝が曲がらない、階段の上り下りがつらいなどの症状がある方は、早期に専門医でMRIなどの検査を受け、医学的根拠とともに弁護士へ相談することで、後遺障害認定や示談金を正当に評価してもらうことが重要です。
Q&A
Q1:半月板ってどんな役割をしているのですか?
半月板は膝関節内の軟骨組織で、大腿骨と脛骨の間にあり、衝撃吸収や関節の安定を担っています。事故で捻転や直接衝撃を受けると裂ける(損傷)し、歩行時や階段昇降時に痛み・ロッキングが起きやすくなります。
Q2:十字靭帯断裂(ACL・PCL断裂)とは具体的に何が起きるのでしょうか?
前十字靭帯(ACL)は大腿骨と脛骨を前後方向に安定させる重要な靱帯、後十字靭帯(PCL)は後方安定を担います。事故の強い衝撃でこれらが断裂すると、関節が不安定になり、歩行やスポーツだけでなく日常生活の動作(方向転換など)にも支障を来します。
Q3:膝蓋骨骨折とは何ですか?
膝のお皿(膝蓋骨)が割れる骨折です。転倒や交通事故でダッシュボードに膝をぶつけると発生しやすいです。骨折の程度次第では縫合やワイヤー固定など手術が必要となり、伸膝(ひざを伸ばす動作)に制限が残る可能性があります。
Q4:膝の損傷でも後遺障害が認められるのですか?
はい。膝関節の可動域制限や痛みの持続、不安定性(靱帯損傷)などで、12級〜14級がよく検討されます。重度で関節の用を廃したレベルなら10級〜8級もあり得ます。
Q5:手術が必須なのはどんなケースでしょう?
半月板の大きな断裂でロッキングが強い、前十字靭帯が完全断裂し膝の不安定性が顕著、膝蓋骨が粉砕骨折して大幅にずれている場合など、手術が不可避です。術後は装具使用や長期リハビリが必須で、保険会社打ち切りを気にする場面が多くなります。
Q6:歩行困難になったら仕事を変えざるを得ません。賃金が下がった分はどう主張すれば良いですか?
逸失利益として賃金減額分を認めてもらう流れです。弁護士が職場での作業内容、収入証明、医師の可動域・痛み評価を基に労働能力喪失率を算定し、保険会社に示談金として請求します。主婦も家事労働で同様に請求可です。
解説
半月板損傷
- 症状・発生機序
- 交通事故で膝をひねる、強くぶつけるなどで半月板が部分断裂や水平断裂を起こし、膝の痛み・ロッキング(動きが途中で引っかかる)が典型。
- MRI検査で断裂部位を特定し、軽度ならリハビリ・注射、重度なら関節鏡手術で縫合/切除。
- リハビリと後遺障害
- 術後や保存療法で痛みが続き、膝の可動域が制限されると14級9号(神経症状)や12級に該当する可能性。
- 痛みで正座ができない、階段昇降が辛いなど日常生活に支障が大きいと認定が有利。
十字靭帯断裂(ACL・PCL損傷)
- ACL(前十字靭帯)断裂
- 膝関節の前後安定を保つ靱帯が断裂 → 膝崩れや不安定感、走ったり踏ん張ったりできなくなる。
- 関節鏡下靱帯再建術が行われ、術後リハビリに6〜12ヶ月以上かかることも。
- PCL(後十字靭帯)断裂
- 衝突で膝をダッシュボードに打ち付けるダッシュボード損傷などで後十字靭帯が切れる。不安定感や痛みが長引くケースが多い。
- 部分断裂なら保存療法もあるが、完全断裂は手術→装具→リハビリの流れ。
- 後遺障害認定
- 膝不安定性や可動域制限が残り、後遺障害等級認定が検討される。仕事・スポーツへの復帰が難しいと逸失利益が大きくなる。
膝蓋骨骨折
- 症状・治療
- 膝のお皿が割れると伸膝動作が困難。レントゲンやCTで骨片の転位を確認し、ワイヤー締結術やプレート固定で整復するケースあり。
- 保存療法でも長期固定が必要。リハビリをしないと膝が曲がらなくなる恐れ。
- 後遺障害のリスク
- 伸膝機能が十分回復せず痛みや可動域制限 → 14級〜12級認定の可能性あり
- 骨癒合不全で変形治癒となれば、外観異常や慢性疼痛が続き家事や仕事に制限をもたらす。
弁護士に相談するメリット
- 症状固定の慎重なタイミング
保険会社が「3〜6ヶ月で治る」と早期打ち切りを図る一方、膝の手術やリハビリは1年超かかる例もある。弁護士が医師の意見書をもとに交渉し、治療を継続しやすくする。 - 後遺障害認定サポート
膝の可動域測定やMRI所見、術後のリハビリ成績を詳細に診断書へ記載し、12級や10級を狙う。 - 家事・仕事への影響
弁護士が「膝が曲がらない→家事動作困難」「仕事で長時間立てない→職種転換など」具体例を提示し、逸失利益を高額化。 - 示談金大幅アップ
保険会社の任意保険基準から、弁護士が裁判所基準で傷害慰謝料+後遺障害慰謝料を計算し、示談金を数倍増やす。 - 弁護士費用特約
膝損傷はリハビリ長期化しやすく賠償金も高額となるケースも多い。特約があれば費用負担を軽減して弁護士に依頼可能。
まとめ
膝の損傷(半月板損傷、十字靭帯断裂、膝蓋骨骨折など)では、
- 半月板損傷:事故後の捻転・打撲で軟骨が裂け、痛みやロッキング → 手術やリハビリが長期化
- 十字靭帯断裂(ACL/PCL):膝の前後安定が崩れ、歩行・階段昇降に不安定 → 術後リハビリに数ヶ月〜1年
- 膝蓋骨骨折:お皿が粉砕骨折、伸膝動作不能 → ワイヤー固定、可動域制限が残ると後遺障害
- 保険会社打ち切りに要警戒 → 弁護士連携で治療継続&後遺障害申請を対応する
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、膝の損傷で痛みや可動域制限、しびれが残り、手術や長期リハビリを余儀なくされる被害者の方に対して、追加検査や医師の所見を活用し、後遺障害等級認定と示談金アップを実現するサポートを多数行っております。事故後に膝の症状が続く場合は、ぜひ早めにご相談ください。
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