【骨盤骨折】交通事故による後遺障害等級の認定ポイント|仙腸関節・股関節の機能障害と痛み

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はじめに

交通事故、特にバイクや自転車での事故や、歩行中に自動車にはねられた場合など、身体に強烈な衝撃が加わるケースで発生しやすいのが「骨盤骨折」です。

骨盤は、背骨(上半身)と大腿骨(下半身)をつなぐ身体の要(かなめ)となる部位であり、腸や膀胱、生殖器などの重要な臓器を保護する役割も担っています。そのため、骨盤を骨折すると、歩行が困難になるだけでなく、内臓損傷を伴う重篤な状態になることも少なくありません。

治療を経て骨が癒合(ゆごう)した後も、「股関節が動かしにくい」「長く歩くと腰やお尻が痛む」「左右で足の長さが変わってしまった」といった後遺症に悩まされる方は非常に多いです。

このような症状が残った場合、適切な「後遺障害等級」の認定を受けることで、適正な賠償金(慰謝料や逸失利益)を受け取ることができます。しかし、骨盤骨折による後遺障害は、骨の変形、関節の機能障害、神経症状、さらには妊娠・出産への影響など多岐にわたり、認定基準も複雑です。

本記事では、骨盤骨折によって残りやすい後遺障害の種類や、適正な等級認定を受けるためのポイントについて、交通事故に詳しい弁護士が解説します。

骨盤骨折に関するQ&A

まずは、骨盤骨折をされた被害者の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1:骨盤が変形して治ってしまいましたが、痛みはありません。それでも後遺障害になりますか?

はい、「骨盤骨の変形障害」として認定される可能性があります。

骨盤骨折の後遺障害には、痛みの有無に関わらず、骨そのものの形状が変わってしまったことに対する「変形障害」という区分があります。

具体的には、裸体になったときに、外部から見て変形が分かる程度のものであれば、12級5号が認定される可能性があります。ただし、レントゲン画像だけで変形が分かるものの、外見上は分からない(触っても分からない)程度の変形は、等級認定の対象外となることが多い点に注意が必要です。

Q2:骨折自体は治癒しましたが、腰とお尻のつなぎ目あたりが常に痛みます。

仙腸関節(せんちょうかんせつ)の障害による「神経症状」の可能性があります。

骨盤の後ろ側にある仙骨と腸骨をつなぐ「仙腸関節」は、強い衝撃でズレや損傷が生じやすい部位です。画像上、明らかな骨折が治っていても、仙腸関節の適合が悪くなったり、周囲の靭帯や神経が損傷したりすることで、慢性的な痛み(疼痛)が残ることがあります。

この場合、痛みの原因が医学的に証明できれば12級13号、医学的な説明がつく程度であれば14級9号が認定される可能性があります。

Q3:女性の場合、将来の出産への影響も後遺障害として認められますか?

はい、骨盤の変形により自然分娩が困難になる場合は等級認定の対象となります。

骨盤骨折の結果、産道が狭くなってしまう場合は、11級10号(胸腹部臓器の機能に障害を残すもの)として認定される可能性があります。

解説:骨盤骨折による後遺障害の認定基準

ここからは、骨盤の構造を簡単に触れた上で、具体的な後遺障害の分類と等級認定基準について詳しく解説します。

1. 骨盤の構造と骨折の種類

骨盤は、左右一対の寛骨(かんこつ)と、中央にある仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)で構成されています。さらに寛骨は、腸骨(ちょうこつ)坐骨(ざこつ)、恥骨(ちこつ)という3つの骨が組み合わさってできています。

交通事故では、以下のような骨折が多く見られます。

  • 寛骨臼(かんこつきゅう)骨折: 大腿骨頭がはまるソケット部分(股関節)の骨折。関節機能に影響が出やすい。
  • 骨盤輪(こつばんりん)骨折: 骨盤のリング構造が壊れる骨折。不安定性が強く、重症化しやすい。
  • 仙腸関節脱臼骨折: 仙骨と腸骨のつなぎ目が外れたり折れたりするもの。

これらの損傷部位や程度によって、認定される後遺障害の種類が異なります。

2. 骨盤骨の「変形障害」

骨折した部分が、元の形とは違う形でくっついてしまった(変形癒合した)場合です。

第12級5号:骨盤骨に著しい変形を残すもの

ここで言う「著しい変形」とは、裸体になったときに、外部から見て明らかにその変形が分かる程度のものを指します。

衣服を着ていて分からないのはもちろん、レントゲン写真では変形が確認できても、外見上分からなければこの等級は認定されません。ただし、変形によって痛みがある場合は、別途「神経症状」としての等級認定を検討します。

3. 股関節の「機能障害(可動域制限)」

骨盤骨折が股関節の一部である「寛骨臼」に及んだ場合や、長期間の固定により関節が固まってしまった場合、股関節の動く範囲(可動域)が狭くなることがあります。

第10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

股関節の可動域が、健康な側(健側)の可動域と比べて2分の1以下に制限された場合です。

第12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

股関節の可動域が、健康な側の可動域と比べて4分の3以下に制限された場合です。

※可動域の測定は、日本整形外科学会が定める厳密な測定方法に基づいて行われる必要があります。医師に測定を依頼する際は、主要運動(屈曲・伸展など)だけでなく、参考運動もしっかり測定してもらうことが重要です。

4. 神経症状(痛み・痺れ)

骨の変形や可動域制限が認定基準に達しない場合でも、患部に痛みが残っている場合は「神経症状」として等級認定を求めます。

第12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

レントゲン、CT、MRIなどの画像検査により、痛みの原因となる異常所見(骨の不整癒合や関節面の不適合など)が他覚的に証明できる場合です。

第14級9号:局部に神経症状を残すもの

画像上の明らかな異常までは指摘できなくても、事故の状況、治療経過、症状の一貫性などから、痛みの存在が医学的に説明できる場合です。

骨盤骨折では、骨折部の痛みだけでなく、仙腸関節の痛みや、骨盤内を通る神経の損傷による下肢の痺れ(坐骨神経痛など)が生じることがあります。

5. 下肢の短縮障害

骨盤骨折(特にマルゲーヌ骨折などの垂直方向の不安定性を伴う骨折)により、骨盤が上にずれたまま固まってしまうと、結果として脚の長さが短くなったのと同じ状態(見かけ上の短縮)になることがあります。

また、骨盤の傾きにより機能的な脚長差が生じることもあります。

  • 第8級5号: 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
  • 第10級8号: 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
  • 第13級8号: 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

この場合、上前腸骨棘(骨盤の出っ張り)から内果(足首の内くるぶし)までの長さを測定し、健側と比較して判定します。

6. 生殖機能への影響(分娩困難)

女性の場合、骨盤骨折によって骨盤腔(産道となる通り道)が狭くなり、正常な分娩ができなくなることがあります。

第11級10号:胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

産道が狭窄し、帝王切開による出産を余儀なくされる場合などが該当します。これを確認するためには、骨盤計測の検査結果などが必要となります。

弁護士に相談するメリット

骨盤骨折は、単に「骨が折れた」というだけでなく、身体のバランスや歩行機能、さらには内臓機能にまで影響を及ぼす複雑な外傷です。そのため、適正な後遺障害等級を獲得するためには、専門的な知識と戦略が必要不可欠です。

1. 必要な検査の提案と「変形」の立証

骨盤の変形や仙腸関節の異常は、通常のレントゲンだけでは分かりにくいことがあります。弁護士は、3D-CT(骨を立体的に撮影する検査)などの精密検査を受けるようアドバイスを行い、視覚的に分かりやすい証拠を揃えます。

また、「変形障害」における「外見上の変形」を立証するために、患部の写真を適切な角度から撮影して提出するなどのサポートも行います。

2. 股関節の可動域測定のチェック

股関節の機能障害(可動域制限)は、測定数値がわずか数度違うだけで、等級が認定されるかどうかが変わってきます(例:10級か12級か、あるいは非該当か)。

医師であっても、後遺障害認定のための厳密な測定方法に精通していない場合があります。弁護士は、測定方法が適正か、診断書の記載に不備がないかをチェックし、必要に応じて修正を依頼します。

3. 慰謝料・逸失利益の増額交渉

骨盤骨折による後遺障害は、労働能力に大きな影響を与えます。しかし、保険会社は「デスクワークなら影響は少ないはずだ」などと主張し、逸失利益(将来の収入減少分)を低く見積もることがあります。

弁護士は、被害者の方の具体的な職業や業務内容、日常生活への支障を具体的に主張・立証し、裁判所基準(弁護士基準)に基づいた適正な賠償金の獲得を目指します。

例えば、後遺障害12級が認定された場合、保険会社の提示額(任意保険基準)と弁護士が交渉する場合の基準(裁判所基準)では、後遺障害慰謝料だけでも約200万円(12級の場合、基準額290万円に対し、提示額は100万円以下等のケースが多い)もの差が出ることがあります。

まとめ

骨盤骨折による後遺障害は、以下のポイントが重要です。

  • 多岐にわたる障害: 変形、関節の動き、痛み、脚の短縮、分娩への影響など、様々な形で症状が現れます。
  • 画像診断の重要性: 3D-CTなどを活用し、骨のズレや変形を正確に記録することが認定への第一歩です。
  • 外見上の変形の確認: 変形障害の認定には「裸体で見て分かる」ことが要件となります。
  • 専門家のサポート: 複雑な認定基準をクリアし、適正な賠償を得るためには、交通事故に強い弁護士のサポートが有効です。

「治療が終わっても痛みが引かない」「以前のように歩けなくなった」とお悩みの方は、諦めずに弁護士へご相談ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、重傷事案の解決実績が豊富にあります。適正な等級認定と賠償金の獲得に向けて、全力でサポートいたします。

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