交通事故被害者の方、およびそのご家族の皆様へ。
今回は、後遺障害等級の中でも「第5級・第6級」について解説します。
1級〜4級のような「常時・随時の介護」までは要さないものの、5級や6級は、片手・片足の欠損や機能全廃、あるいは著しい高次脳機能障害など、極めて重篤な障害が残った状態です。
これらは、被害者の方の「働く能力」を根こそぎ奪いかねないものであり、事故前と同じ職種・同じ収入を維持することは極めて困難になります。
そのため、この等級における最大の法的争点は、「逸失利益(将来失われる収入)」の評価に集約されます。保険会社は、被害者がまだ働ける可能性があることを理由に賠償額を抑えようとしますが、実際には再就職の困難さや、職場での立場の悪化など、数字には表れにくい苦労が山積します。
本記事では、5級・6級の認定基準、労働能力喪失率をめぐる攻防、そして将来の生活を守るために不可欠な「適正な賠償金」を獲得するためのポイントを解説します。
はじめに
後遺障害等級において、5級と6級は「重度後遺障害」の中核をなす等級です。
日常生活動作(食事や排泄など)はある程度自立できているケースが多いですが、社会生活、特に「仕事」においては決定的なハンディキャップを背負うことになります。
- 第5級: 労働能力喪失率 79% (特に軽易な労務以外は困難)
- 第6級: 労働能力喪失率 67% (労働能力の3分の2を喪失)
これらは単なる数字ではありません。「これまでのキャリアが断たれる」「配置転換を余儀なくされる」「将来的な昇進が見込めない」といった、被害者の方の人生設計そのものを揺るがす事態を意味します。
しかし、加害者側の保険会社は「残存機能で働けるはずだ」として、これら労働能力喪失率をそのまま認めない(減額主張する)ケースが散見されます。
これからの長い人生を経済的な不安なく過ごすためには、等級に見合った、あるいは実態に見合った「逸失利益」を確実に確保することが最優先課題となります。
交通事故に関するQ&A(5級・6級編)
5級・6級に該当するような大怪我をされた方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:5級と6級では、賠償金にどれくらいの差が出ますか?
数千万円単位の差が生じる可能性があります。
最も影響するのは「逸失利益」です。例えば、年収500万円の40歳男性の場合、労働能力喪失率が79%(5級)か67%(6級)かで、計算上の逸失利益には約1,000万円以上の差が出ます。また、後遺障害慰謝料(弁護士基準)も、5級は1,400万円、6級は1,180万円と異なります。
したがって、微妙な判定となるケース(関節の可動域測定の結果など)では、妥協せずに上位等級を目指すことが重要です。
Q2:元の職場に復帰できましたが、それでも逸失利益は全額もらえますか?
保険会社は減額を主張しますが、安易に応じてはいけません。
保険会社は「給料が下がっていないなら、労働能力喪失はない(または低い)」と主張し、逸失利益を減額しようとします。
しかし、これは間違いです。たとえ現在減収がなくても、「本人が無理をして働いている」「温情で雇用されている」「将来の昇給が見込めない」「転職市場での競争力を失った」といった事情があれば、本来の喪失率(79%や67%)通りの逸失利益が認められるべきです。これを「減収がない場合の逸失利益」の問題といいます。
Q3:高次脳機能障害で5級です。介護費用はもらえないのでしょうか?
原則は対象外ですが、具体的な症状によっては認められる可能性があります。
5級2号(高次脳機能障害)は、定義上は「介護を要しない」とされています。しかし、実際には記憶障害や感情失禁により、家族の見守りが必要なケースがあります。
過去の裁判例では、5級等の高次脳機能障害であっても、事故の内容や症状の程度、家族の負担状況を具体的に立証することで、日額数千円程度の「将来介護費」が認められた事例があります。あきらめずに弁護士に相談すべき点です。
解説:5級・6級の認定基準と「労働能力喪失」の実態
ここでは、具体的な認定基準を確認し、それが生活や仕事にどのような影響を及ぼすかを解説します。
1. 後遺障害等級5級・6級の認定基準
5級・6級は、身体の一部欠損や機能全廃、重度の精神障害などが該当します。
第5級の主な認定基準(労働能力喪失率 79%)
- 5級1号: 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
- 5級2号: 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの(高次脳機能障害、脊髄損傷など)
- 5級3号〜6号: 胸腹部臓器の著しい障害、片手・片足の完全な欠損など
- 5級7号: 片足の用を全廃したもの(足はあるが、三大関節すべてが強直するなど全く動かない状態)
第6級の主な認定基準(労働能力喪失率 67%)
- 6級1号: 両眼の視力が0.1以下になったもの
- 6級5号: 脊柱(背骨)に著しい変形または運動障害を残すもの(重度の圧迫骨折など)
- 6級6号: 片手の三大関節のうち、2関節の用を廃したもの
- 6級7号: 片足の三大関節のうち、2関節の用を廃したもの
ポイント
5級2号の「特に軽易な労務以外の労務に服することができない」とは、簡単な単純作業しかできない状態を指します。高度な判断や複雑な身体動作を伴う仕事は不可能とみなされます。
2. 「逸失利益」の計算と立証
5級・6級の事案において、賠償金の大部分(数千万円〜)を占めるのが逸失利益です。
しかし、金額が大きいだけに、保険会社もシビアに争ってきます。
① 「労働能力喪失率」の攻防
基準では5級79%、6級67%と決まっていますが、保険会社は以下のような理由で低い率を提示することがあります。
- 「事務職だから足の障害は仕事に影響しない」(職種による限定説)
- 「リハビリで将来回復する可能性がある」
【反論のポイント】
弁護士は、単に今の仕事ができるかだけでなく、「労働の質の低下」「持久力の低下」「配置転換の不利益」「転職の困難さ」などを具体的に主張します。
例えば、事務職であっても、脊柱の変形(6級5号)による背中の痛みで長時間座っていられない場合、労働能力への影響は甚大であると主張し、基準通りの喪失率を確保します。
② 「基礎収入」の認定
- 会社員: 原則として事故前年の源泉徴収票の金額。
- 主婦(主夫): 賃金センサス(女性労働者の全年齢平均賃金)を使用。約380万〜400万円程度で算定されることが多く、実際のパート収入より高くなるケースが多いです。
- 若年者・学生: 将来の可能性を考慮し、全年齢平均賃金などを使用します。
3. リハビリの長期化と症状固定のタイミング
5級・6級相当の怪我(粉砕骨折、脳挫傷など)の場合、治療期間は1年〜数年に及ぶことがあります。
ここで注意すべきは「症状固定」のタイミングです。
- 保険会社の対応: 「そろそろ治療費を打ち切ります」「症状固定にして後遺障害申請をしましょう」と早期に誘導してくることがあります。
- リスク: 十分なリハビリを行わないまま症状固定にしてしまうと、本来もっと回復できた機能が失われたり、後遺障害診断書に必要な所見(可動域の制限など)が正確に記載されなかったりする恐れがあります。
医師と相談し、「医学的にこれ以上良くならない」と判断されるまで、粘り強く治療を続けることが、適正な等級認定の前提となります。
4. 職種転換リスクと将来の減収
5級・6級の障害を負うと、多くの場合、事故前の職種を続けることが困難になります。
- 現場作業員 → 事務職へ: 肉体労働ができなくなり、未経験の事務職へ転換。給与ダウンのリスク。
- 営業職 → 内勤へ: 外回りができず、インセンティブ(歩合給)が得られなくなる。
- 退職・解雇: 会社に居場所がなくなり、退職を余儀なくされる。
これらの「将来起こりうるリスク」を逸失利益として先取りして請求するためには、「再就職がいかに困難か」「今の会社での雇用がいかに不安定か」を客観的に証明する必要があります。
5. 高次脳機能障害における「生活面」の影響
5級2号(高次脳機能障害)などの場合、仕事だけでなく家庭生活にも深刻な影響が出ます。
見た目は普通に見えても、以下のような症状が出ることがあります。
- 怒りっぽくなる、暴力を振るう(易怒性)
- 段取りよく家事ができない
- 子供の面倒が見られない
これらの事情は、後遺障害慰謝料の増額事由や、Q&Aで触れた将来介護費の請求根拠となり得ます。
ご家族が作成する「日常生活状況報告書」の内容が、等級認定や賠償額算定において極めて重要な意味を持ちます。
弁護士に相談・依頼するメリット
5級・6級の事案は、賠償額が高額になるため、保険会社側も専門部署や顧問弁護士が出てきて徹底的に争ってくる傾向があります。被害者個人で対応するのは事実上不可能です。
1. 賠償額の大幅な増額(弁護士基準の適用)
これまで述べてきた通り、自賠責基準や任意保険基準と、弁護士基準(裁判基準)には大きな乖離があります。
| 項目 | 自賠責基準(上限) | 弁護士基準(目安) |
| 5級 後遺障害慰謝料 | 618万円 | 1,400万円 |
| 6級 後遺障害慰謝料 | 512万円 | 1,180万円 |
これに加えて逸失利益の計算も、弁護士が介入することで「労働能力喪失期間」を長く認めさせたり、「基礎収入」を高く認定させたりすることが可能になります。結果として、総額で数千万円の増額になることも珍しくありません。
2. 適切な等級認定へのサポート
5級や6級は、医学的な立証が不十分だと、7級やそれ以下に認定されてしまうリスクがあります。
特に「関節の可動域」や「高次脳機能障害の程度」は、測定方法や検査内容によって結果が変わることがあります。
弁護士は、専門医と連携し、必要な検査(MRI、CT、各種神経学的検査)の実施を提案したり、後遺障害診断書の記載内容に不備がないかチェックしたりすることで、適正な等級獲得をサポートします。
3. 将来の不安に対するサポート
金銭的な賠償だけでなく、障害年金の申請サポートや、身体障害者手帳の取得アドバイスなど、被害者の方が今後の生活を再建するために利用できる公的制度についても助言を行います。
まとめ
後遺障害5級・6級は、介護までは必要なくとも、社会生活において「致命的」とも言えるハンディキャップを負う重度な障害です。
- 労働能力への影響: 67%〜79%の能力を喪失し、大幅な減収や職種転換のリスクがある。
- 最大の課題: 逸失利益の正当な評価(現在減収がなくても将来のリスクを主張する)。
- 慰謝料: 弁護士基準であれば1,000万円を超える高額な慰謝料が認められる。
保険会社から提示される金額は、あなたの失われた労働能力や、将来の苦労を十分に反映していない可能性があります。「こんなものか」と諦めて示談してしまう前に、必ず専門家の意見を聞いてください。
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