交通事故で複数の後遺障害がある場合の等級は?「併合等級」の仕組みと計算方法

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はじめに

交通事故の被害に遭った際、怪我をする箇所は一つとは限りません。「首のむちうちと、腕の骨折による機能障害」や「足の短縮障害と、顔面の傷跡」など、身体の複数の部位に後遺障害が残ってしまうケースも少なくありません。

このように、複数の後遺障害が認められる場合、等級はどのように決まるのでしょうか?単純に等級を足し算するわけではありませんし、一番重い等級だけが採用されるわけでもありません。

複数の後遺障害がある場合には、「併合(へいごう)」という特別なルールに基づいて最終的な等級(併合等級)が決定されます。この併合の仕組みを理解していないと、「なぜこの等級になったのか」が分からず、本来受け取るべき賠償金よりも低い金額で示談してしまうリスクがあります。

本記事では、複雑で分かりにくいとされる「後遺障害の併合等級」のルールや計算方法について解説します。

併合等級に関するQ&A

まずは、併合等級に関して被害者の方からよく寄せられる疑問にお答えします。

Q1:後遺障害が2つある場合、等級は必ず上がりますか?

必ずしも上がるとは限りません。

基本的には、重い方の等級が繰り上がることが多いですが、条件によります。例えば、最も軽い等級である「14級」の後遺障害が2つ以上あっても、等級は繰り上がらず「併合14級」のままとなります。等級が繰り上がる(重くなる)ためには、原則として「13級以上の後遺障害が2つ以上」あるなどの条件を満たす必要があります。

Q2:全く別の場所の怪我でも、まとめて評価されますか?

はい、原則としてまとめて評価(併合)されます。

例えば「右腕の機能障害」と「左足の痛み」のように、部位が異なっていても、同一の交通事故によるものであれば、それぞれの等級を認定した上で、ルールに従って総合的な等級(併合等級)を決定します。ただし、医学的に「通常派生する関係にある症状(例:骨折部分の痛みと変形)」などは、個別に評価せずまとめて一つの等級として扱われる場合もあります。

Q3:すでに後遺障害認定を受けた後、別の事故で新たな後遺障害を負った場合はどうなりますか?

これは「加重(かじゅう)」という別の扱いになります。

「併合」は、同一の事故で複数の障害が残った場合のルールです。過去の事故ですでに障害がある部位に、新たな事故でさらに障害が加わった場合は「加重」として扱われ、計算方法が異なります(現存する障害等級から、既存の障害等級に相当する金額を差し引くなど)。今回は「併合」に絞って解説します。

解説:併合等級の基本的なルールと計算方法

後遺障害等級認定の実務において、複数の障害がある場合の処理は、以下の順序で行われます。

  1. 個別の等級認定: まず、それぞれの障害について個別に等級を判定します。
  2. 併合処理: 個別の等級をもとに、以下のルールに従って最終的な等級を決定します。

1. 併合の基本ルール(繰り上げの原則)

労働者災害補償保険法施行規則の規定を準用し、以下の3つのパターンで等級が決定されます。

パターンA:13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 → 【1級繰り上げ】

最も重い方の等級を1つ繰り上げます。

例: 12級と13級がある場合
重い方の「12級」を1つ繰り上げて、「併合11級」となります。

パターンB:8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 → 【2級繰り上げ】

最も重い方の等級を2つ繰り上げます。

例: 8級と6級がある場合
重い方の「6級」を2つ繰り上げて、「併合4級」となります。

パターンC:5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 → 【3級繰り上げ】

最も重い方の等級を3つ繰り上げます。

例: 5級と4級がある場合
重い方の「4級」を3つ繰り上げて、「併合1級」となります。

2. 注意が必要な「繰り上がらない」ケース

すべてのケースで等級が上がるわけではありません。以下の場合は、等級の繰り上げが行われません。

① 14級の後遺障害が含まれる場合

14級の後遺障害は、いくつあっても等級を繰り上げる効果を持ちません。

  • ケース1: 12級と14級がある場合
    重い方の等級である「併合12級」となります。(14級は数に含まれますが、繰り上げのトリガーにはなりません)
  • ケース2: 14級と14級がある場合
    「併合14級」のままです。13級にはなりません。

② 繰り上げても序列が逆転してしまう場合

繰り上げた結果、それぞれの等級の合算額(または序列)を超えてしまうような不合理が生じる場合は調整が入りますが、基本的には上記のルールが適用されます。

3. 「みなし系列」と「派生関係」

併合のルールを適用する前に、「そもそも別々の障害としてカウントするか」という判断があります。

  • 派生関係(法条競合):
    • 一つの怪我が原因で、通常発生する症状が複数ある場合、それらを個別に評価せず、最も包括的な等級一つで評価します。
    • 例:上腕骨の骨折により、「偽関節(変形)」と「痛み(神経症状)」が残った場合。通常は変形に含まれる痛みとして扱われ、個別に等級をつけて併合するのではなく、上位の等級(または特掲されている等級)一つで認定されます。
  • 系列(部位ごとのグループ分け):
    • 後遺障害等級表では、身体の部位や機能ごとに「系列」が決まっています。同一系列に複数の障害がある場合、原則として併合繰り上げは行わず、その系列の中で最も等級の高いもので評価することがあります(例外もあります)。

具体的な計算例(ケーススタディ)

より理解を深めるために、よくある具体的なケースで最終的な等級を見てみましょう。

ケース1:むちうち(首・腰)と腕の骨折による痛み

  • 症状:
    • 頚椎捻挫後の痛み(14級9号)
    • 腰椎捻挫後の痛み(14級9号)
    • 腕の骨折後の痛み(12級13号)
  • 判定:
    • 14級が2つ、12級が1つあります。
    • 13級以上の障害(ここでは12級)が「2つ以上」ではないため、繰り上げルール(パターンA)は適用されません。
    • 最も重い等級が採用されます。
  • 結果: 併合12級

ケース2:歯の欠損と顔の傷跡

  • 症状:
    • 歯を5本折って治療した(12級3号)
    • 顔面に線状の傷跡が残った(12級14号)
  • 判定:
    • 13級以上の障害が2つあります。
    • パターンA(1級繰り上げ)が適用されます。
    • 12級を1つ繰り上げます。
  • 結果: 併合11級

ケース3:足の機能障害と視力低下

  • 症状:
    • 片足の関節の機能障害(10級11号)
    • 片目の視力が0.6以下になった(13級1号)
  • 判定:
    • 13級以上の障害が2つあります。
    • パターンA(1級繰り上げ)が適用されます。
    • 重い方の10級を1つ繰り上げます。
  • 結果: 併合9級

併合等級における賠償金(慰謝料・逸失利益)の注意点

併合等級が決まると、それに基づいて賠償金が計算されますが、ここでも注意点があります。

1. 慰謝料の額

原則として、決定した「併合等級」の基準額が適用されます。


併合11級であれば、11級の慰謝料基準(弁護士基準で420万円)が適用されます。単体の12級(290万円)よりも高額になります。

2. 逸失利益の労働能力喪失率

ここが最も争いになりやすいポイントです。

通常は「併合等級」に対応する労働能力喪失率(例:11級なら20%)を使いますが、必ずしも自動的に決まるわけではありません。

部位や症状の組み合わせによる影響

  • 例えば、「顔の醜状(傷跡)」と「足指の欠損」で併合等級が上がった場合、これらが合わさって労働能力にどれだけ影響するかは職種によります。
  • 保険会社は「併合等級としては〇級だが、労働への支障は限定的だ」として、下位の等級の喪失率しか認めない(あるいは中間的な値を主張する)ことがあります。
  • 逆に、複数の障害が相乗的に仕事へ悪影響を及ぼしている場合は、併合等級通りの喪失率、あるいはそれ以上を主張する必要があります。

弁護士に相談するメリット

複数の後遺障害がある事案は、認定ルールも賠償計算も非常に複雑です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

1. 「見落とし」を防ぎ、すべての症状を等級に反映させる

被害者ご本人が痛みを感じていても、医師が診断書に書き忘れていたり、検査が不十分だったりすると、その部位は等級認定の対象外になってしまいます。弁護士は、カルテや画像を確認し、申請すべき症状が漏れていないか、他覚的所見が揃っているかを精査します。「14級が一つ増えても結果は変わらない」と思わずに、正確な認定を受けることが重要です。

2. 正しい「併合ルール」の適用をチェックする

認定機関(自賠責損害調査事務所)であっても、稀に判断が難しいケースや、系列の判断において議論の余地があるケースがあります。認定結果が「併合〇級」となっていても、それが本当に正しいルール適用結果なのか、あるいは異議申し立てによってより上位の等級(または併合繰り上げ)が狙えるのかを、専門的知見から分析します。

3. 労働能力喪失率の妥当性を主張・立証する

前述の通り、併合等級が認定されても、保険会社がその等級通りの逸失利益を支払うとは限りません。「併合等級は認めるが、労働能力への影響は少ない」という反論に対し、弁護士は被害者の具体的な業務内容や支障の具体例を挙げて反論し、正当な賠償金の獲得を目指します。

まとめ

交通事故で複数の部位に後遺障害が残った場合、「併合」というルールによって等級が決まります。

ポイントを整理すると以下の通りです。

  1. 13級以上の障害が複数あれば等級が繰り上がる(重くなる)可能性がある。
  2. 14級の障害はいくつあっても繰り上げの効果はない(併合14級)。
  3. 同一系列や派生関係にある症状は、単純な併合計算とはならない場合がある。
  4. 併合等級が認定されても、逸失利益の計算では保険会社と争いになりやすい。

「自分の等級計算は合っているのか?」「もっと上位の等級になるのではないか?」といった疑問をお持ちの方は、示談をする前に専門家に相談してください。複雑な併合事案こそ、弁護士のサポートが結果を大きく左右します。

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