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【後遺障害8級】関節可動域の制限と労働能力45%喪失|仕事・家事への影響と補償
はじめに
後遺障害等級第8級は、身体の各部位(脊柱、手足の関節、指など)に、明確な「機能障害」や「欠損」が残った場合に認定されます。
特に多いのが、骨折後の癒合不全や関節拘縮により、「腕や足の関節がスムーズに動かない(可動域制限)」ケースや、背骨の圧迫骨折等により「首や腰の動きが悪くなる(運動障害)」ケースです。
これらは、一見すると普通に生活しているように見えますが、実際には「重いものが持てない」「長時間立っていられない」「高いところに手が届かない」といった具体的な支障があり、労働能力の約半分(45%)を喪失したとみなされる重大な障害です。
適正な賠償を受けるためには、医学的な数値(可動域角度)の正確な測定と、具体的な仕事・生活への支障の立証が鍵となります。
交通事故に関するQ&A(8級編)
後遺障害8級について、被害者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:後遺障害8級の慰謝料はどれくらいですか?
弁護士基準では830万円が目安です。
自賠責保険の基準では331万円が上限ですが、弁護士が介入して交渉する「弁護士基準(裁判基準)」では、約830万円が相場となります。これだけで約500万円の差があり、さらに逸失利益が加算されるため、最終的な受取額には大きな開きが出ます。
Q2:関節が動かしにくいのですが、医師からは「リハビリで良くなる」と言われています。
症状固定のタイミングを慎重に判断する必要があります。
リハビリを続けても改善が見込めなくなった状態を「症状固定」と言います。8級に認定されるには、関節の可動域が「健側(怪我をしていない側)の2分の1以下」などの厳しい数値基準を満たす必要があります。
無理に早期に症状固定とせず、十分なリハビリを行った上で、それでも可動域制限が残った場合に、正確に後遺障害診断書を作成してもらうことが重要です。
Q3:主婦ですが、家事に支障が出ています。休業損害や逸失利益は請求できますか?
はい、請求できます。
主婦(主夫)の方も、家事労働という経済的価値のある労働を行っているとみなされます。8級の障害(関節が曲がりにくい等)があれば、掃除、洗濯、料理などの家事全般に支障が出ることは明らかです。
原則として、女性の平均賃金(賃金センサス)を基礎収入とし、労働能力喪失率45%を用いて計算した逸失利益を請求できます。
解説:後遺障害8級の認定基準と「可動域制限」の壁
8級は多岐にわたる障害を含みますが、ここでは特にトラブルになりやすい「関節機能障害」と「脊柱障害」を中心に解説します。
1. 後遺障害8級の主な認定基準
- 8級1号: 一眼が失明し、または一眼の視力が0.02以下になったもの
- 8級2号: 脊柱(背骨)に運動障害を残すもの
- 8級3号: 片手を含み2本以上の指を失ったもの(親指の場合)
- 8級6号: 片手の上肢(肩・肘・手首)の三大関節中の1関節の用を廃したもの
- 8級7号: 片足の下肢(股・膝・足首)の三大関節中の1関節の用を廃したもの
- 8級8号: 片手の上肢の偽関節を残すもの(骨がくっつかずグラグラする状態)
- 8級9号: 片足の下肢の偽関節を残すもの
- 8級10号:片足の指を全部失った場合
2. 「関節の用を廃したもの」(6号・7号)とは?
ここで言う「用を廃した」とは、全く動かない(完全強直)状態だけでなく、以下の状態も含みます。
- 関節の可動域が、健側(健康な側)の可動域の10%以下になった場合
- 関節の可動域が、健側の可動域の2分の1以下になり、かつ激しい痛みがあるなどの条件を満たす場合(※ただし、単に2分の1以下になっただけでは10級や12級になることが多く、8級認定には「完全強直に近い状態」や「人工関節・人工骨頭を挿入し、かつ可動域が2分の1以下」などの厳しい条件があります)
注意点
8級の認定において重要なのは、医師による「他動値(医師が手を添えて動かした時の角度)」の測定です。
被害者が自分で動かせる範囲(自動値)だけでは認定されません。無理やり動かしてもこれ以上行かない、という限界値を正確に測定してもらう必要があります。数度の違いで等級が下がる(10級や12級になる)こともあるため、専門知識のある弁護士のサポートが推奨されます。
3. 「脊柱の運動障害」(2号)とは?
背骨の圧迫骨折や脱臼などにより、首や腰が曲がりにくくなった状態です。
具体的には、「頸部(首)や胸腰部(背中〜腰)の可動域が、参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの」を指します。
- 上を向けない、下を向けない
- 身体を前後に曲げられない、ひねることができない
これにより、建設作業や運送業などの肉体労働はもちろん、デスクワークでも「長時間同じ姿勢を保つのが辛い」「モニターを見るために首を動かせない」といった支障が生じます。
4. 労働能力喪失率45%と「逸失利益」
8級の労働能力喪失率は45%です。これは、事故前の年収の約半分が将来にわたって失われるという計算になります。
【争点になりやすいポイント】
保険会社は以下のような主張で減額を迫ることがあります。
- 「事務職だから、足首が動かなくても仕事には影響しないはずだ」(職種による限定説)
- 「機能障害はリハビリで慣れるため、喪失期間は10年程度に制限すべきだ」
これに対し、弁護士は以下のように反論します。
- 「事務職でも外回りや移動はあり、通勤の負担も増大している」
- 「脊柱の可動域制限や関節の強直は器質的損傷(身体そのものの変化)であり、将来回復することはなく、慣れで解決する問題ではない」
- 「昇進や転職の機会が失われるリスクがある」
このように主張し、「67歳までの全期間」にわたって45%の逸失利益を認めさせることが、賠償額最大化の鍵となります。
具体的な影響の例(仕事・家事)
8級の障害が生活にどのような影を落とすのか、具体例を挙げます。
① 上肢(腕・手)の障害
- 仕事: 重い荷物が持てない、高いところの作業ができない、キーボード入力で手首が痛む、工具が扱えない。
- 家事: 洗濯物が干せない、布団の上げ下ろしができない、高い棚の物が取れない、料理でフライパンが振れない。
② 下肢(足)の障害
- 仕事: 立ち仕事ができない、階段の上り下りが困難、営業車やトラックの運転(ペダル操作)に支障がある、長時間座っていられない(膝が曲がらない等)。
- 家事: 掃除機がかけられない、買い物に行けない(歩行困難)、お風呂掃除などのしゃがむ動作ができない。
③ 脊柱(背骨)の障害
- 仕事・家事共通: 重いものが持てない、うがいや洗顔の姿勢が取れない、車のバック駐車で後ろを振り向けない、長時間座っていると背中に激痛が走る。
弁護士に相談・依頼するメリット
後遺障害8級は、「等級が認定されるかどうか」と「認定後の賠償額交渉」の2段階で、弁護士の役割が極めて重要になります。
1. 正確な「可動域測定」のサポート
医師は治療の専門家ですが、後遺障害等級認定のプロではありません。測定方法が「日本整形外科学会」の定めた基準と少しでもずれていると、適正な等級が認定されないことがあります。
弁護士は、後遺障害診断書を作成する前に、「正しい測定方法」や「記載すべきポイント」を医師に伝えるためのアドバイスを行います。また、出来上がった診断書をチェックし、記載漏れがないか確認します。
2. 「加重障害」や「併合等級」の確認
過去に交通事故や労災で障害を負っていた場合(既存障害)、今回の事故による障害と合わせてどのように評価するか(加重障害)、また今回複数の箇所を怪我した場合に等級をどう繰り上げるか(併合等級)といった判断は非常に複雑です。
専門知識を持つ弁護士が、最も有利になる等級の認定方法を検討します。
3. 逸失利益と慰謝料の最大化
8級の賠償金は、適正に算定されれば数千万円規模になります。
保険会社の提示額(自賠責基準や任意保険基準)と、弁護士が請求する額(裁判基準)との差額は、1,000万円以上になることも珍しくありません。
特に、将来の生活費の原資となる「逸失利益」については、安易な妥協は禁物です。
まとめ
後遺障害8級は、手足や背骨の機能が大幅に制限され、労働能力の約半分(45%)を失う深刻な障害です。
- 認定の鍵: 関節可動域の正確な測定(他動値)。
- 賠償の焦点: 職種に関わらず、将来にわたる労働能力喪失(逸失利益)をしっかり主張すること。
- 生活への影響: 仕事だけでなく、家事や日常生活動作にも具体的な支障が出る。
「リハビリをすれば治るかもしれない」という言葉に流されず、症状固定の時期を適切に見極め、後遺障害申請を行うことが重要です。また、保険会社からの提示額に対しては、「本当に将来の補償として十分か」を慎重に検討する必要があります。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故による機能障害に苦しむ被害者の方が、適正な等級と賠償金を獲得できるよう、医学的知見に基づいたサポートを提供しています。
ご自身の症状が何級に相当するのか、賠償額はどれくらいになるのか、まずは無料相談にてお問い合わせください。
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【後遺障害7級】労働能力56%喪失のインパクト|脳・脊髄損傷の補償と逸失利益
はじめに
後遺障害等級第7級は、自賠責保険の等級表(別表第2)において、比較的上位に位置する重い障害です。
その労働能力喪失率は「56%」と定められています。つまり、事故前の半分以下の能力でしか働けないとみなされる状態です。
これに該当するのは、片目の失明、片手・片足の指の全部の用を廃したもの、そして神経系統(脳・脊髄)の障害により軽易な労務しかできないものなどが含まれます。
特に脳や脊髄の損傷による7級は、外見からは障害の程度が分かりにくくても、「疲れやすくて長時間働けない」「複雑な判断ができない」「足がもつれて長距離歩行ができない」といった深刻なハンディキャップを抱えることになります。適正な補償を受けるためには、こうした目に見えにくい苦労を法的に立証することが不可欠です。
交通事故に関するQ&A(7級編)
後遺障害7級に該当する可能性がある方から、よくある質問にお答えします。
Q1:後遺障害7級の慰謝料はどれくらいですか?
弁護士基準では1,000万円が目安です。
自賠責基準の上限額は409万円ですが、弁護士が交渉する場合の基準(弁護士基準・裁判基準)では、1,000万円程度が相場となります。これに加えて、数千万円規模の「逸失利益」が請求できるため、総額では非常に大きな金額になります。
Q2:復職して給料が変わらない場合、逸失利益はもらえませんか?
いいえ、もらえる可能性が高いです。
保険会社は「減収がない=労働能力喪失はない」と主張し、逸失利益を否定することがあります。
しかし、7級レベルの障害があれば、現時点で減収がなくても、本人が並々ならぬ努力でカバーしているだけだったり、将来の昇進・昇給が閉ざされていたりすることが容易に想像できます。弁護士はこうした事情を主張し、減収がなくとも逸失利益を認めさせる交渉を行います。
Q3:7級でも将来の介護費や装具代は請求できますか?
介護費は対象外となる傾向にありますが、装具代等は必要性が立証できれば請求可能です。
7級は「自力で生活できる」とみなされるため、将来介護費は認められにくい傾向にあります。しかし、脊髄損傷などで歩行に装具(短下肢装具など)が必要な場合や、杖、入浴補助具などが必要な場合は、その購入費や将来の買い替え費用を請求できます。
解説:後遺障害7級の認定基準と実態
7級には様々な障害が含まれますが、ここでは特に生活への影響が大きい「脳・神経・脊髄」の障害を中心にて解説します。
1. 後遺障害7級の主な認定基準
- 7級1号: 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
- 7級2号: 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 7級4号: 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 7級5号: 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 7級6号: 片手の親指を含み3本以上の指を失ったもの、または親指以外の4本の指を失ったもの
- 7級7号: 片手5本の指の用を廃したもの(指はあるが全く動かない等)
2. 「7級4号」脳機能・脊髄損傷の実像
交通事故の実務で特によく争点になるのが、「7級4号」(神経系統の障害)です。
高次脳機能障害の場合
記憶障害、注意障害、遂行機能障害などが残り、「一般就労は維持できているが、単純作業に限られる」「ミスが多く、周囲のサポートなしでは業務が回らない」といった状態です。
- 日常生活: 金銭管理が苦手になる、約束を忘れる、感情のコントロールが難しくなる等の支障が出ます。
脊髄損傷(不全麻痺)の場合
手足に麻痺が残り、巧緻運動(細かい作業)ができない、または歩行に支障がある状態です。
- 日常生活:
- 歩行: 完全に車椅子ではないものの、杖が必要であったり、少しの距離で疲れてしまったりする(跛行)。
- 排泄: 自分で排泄はできるが、頻尿や失禁のリスクがあり、おむつやパッドが手放せない(排尿障害)。
- 感覚: 手足のしびれや痛みが激しく、天候によって寝込むこともある。
ポイント
7級4号の「軽易な労務以外の労務に服することができない」とは、肉体労働や高度な知的労働ができなくなり、負担の少ない軽作業に限定される状態を指します。
3. 日常生活動作の制限と「モノ」による補償
7級の認定を受けるような障害では、日常生活の質を維持するために様々な器具が必要になることがあります。これらは損害賠償として請求すべき項目です。
① 装具・杖・車椅子関連
脊髄損傷などで足に麻痺がある場合、将来にわたって装具が必要になります。
- 短下肢装具(プラスチック製の足首固定具など)
- ロフストランド杖(腕で支える杖)
- 電動シニアカーや簡易車椅子(長距離移動用として医師が必要と認めた場合)
これらは数年ごとに買い替えが必要になるため、平均余命までの「将来装具費」として一括請求します。
② 自動車改造費
足に麻痺があり、通常のペダル操作が難しい場合、手動運転装置(アクセル・ブレーキを手で操作するレバー)の取り付け費用などを請求できる場合があります。「通勤や通院に車が不可欠である」という事情があれば、認められる可能性が高まります。
③ 家屋改造費(リフォーム)
7級では、大規模なバリアフリー工事(エレベーター設置など)までは認められにくいですが、以下のような小規模な改造費は請求の余地があります。
- 浴室やトイレの手すり設置
- 玄関の段差解消
- 滑りにくい床材への変更
賠償上の最重要ポイント:逸失利益
7級の賠償額を決定づけるのは、「逸失利益」です。
労働能力喪失率56%という高い数字が、どれくらいの期間認められるかが勝負となります。
争点1:労働能力喪失率(56%)の確保
保険会社は、「デスクワークなら足の障害は関係ない」「工夫すれば働ける」として、56%よりも低い喪失率(例えば12級相当の14%など)を提示してくることがあります。
これに対し、弁護士は「職種限定の不利益(転職の幅が狭まる)」「職場での配置転換の実態」「通勤の困難さ」などを具体的に主張し、基準通りの56%を確保します。
争点2:労働能力喪失期間(何歳まで認めるか)
原則は67歳までですが、むち打ち等の神経症状では「10年程度」に制限されることがあります。
しかし、7級に認定されるような「脳の損傷(画像所見あり)」や「脊髄損傷」、「指の機能全廃」などは、症状が将来回復する見込みがない(器質的損傷)ため、原則通り67歳までの全期間を認めるよう主張する必要があります。
例えば、40歳(年収500万円)の方の場合、期間が「10年」か「67歳まで(27年間)」かで、賠償額には数千万円の差が生じます。
弁護士に相談・依頼するメリット
後遺障害7級は、一歩間違えると「後遺障害非該当」や「12級・14級」といった低い等級にされてしまうリスクと、等級認定後も「賠償額を不当に低く見積もられる」リスクの2つを抱えています。
1. 正しい等級認定の獲得(異議申立て)
7級4号(高次脳機能障害や脊髄損傷)は、医師の診断書やMRI画像だけでなく、「日常生活状況報告書」の内容が審査に大きく影響します。
ご本人やご家族が気づいていない「能力の低下」を拾い上げ、書類に反映させることで、適切な等級認定をサポートします。もし納得のいかない等級が出た場合は、異議申立てを行います。
2. 逸失利益の最大化
前述の通り、逸失利益の計算には専門的な交渉が必要です。
「現在は会社が配慮してくれているから給料は減っていないが、もし会社が倒産したら再就職は絶望的である」といった、将来のリスクを法的に構成し、裁判基準での満額回収を目指します。
3. 将来の生活を見据えたアドバイス
賠償金の獲得だけでなく、身体障害者手帳の取得(等級によっては該当する可能性があります)や、障害年金の申請など、社会保障制度の活用についてもアドバイスを行い、経済的な基盤を盤石にします。
まとめ
後遺障害7級は、日常生活はある程度自立できても、労働能力の半分以上を失うという点で、被害者の方の人生設計を大きく狂わせる重大な障害です。
- 労働能力喪失率: 56%。仕事への影響は甚大。
- 脳・脊髄損傷: 見た目以上に疲れやすく、複雑な処理ができない。
- 必要な補償: 逸失利益に加え、装具や杖、自動車改造費などの実費も漏らさず請求する。
保険会社の提示額を鵜呑みにせず、「自分の失った能力に見合う補償」を追求してください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、医学的知見と豊富な交通事故事案の経験に基づき、あなたの正当な権利を守るために全力を尽くします。
まずは無料相談にて、あなたのお悩みをお聞かせください。
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【後遺障害5級・6級】失われる労働能力と将来の不安|収入減・職種転換リスクへの補償
交通事故被害者の方、およびそのご家族の皆様へ。
今回は、後遺障害等級の中でも「第5級・第6級」について解説します。
1級〜4級のような「常時・随時の介護」までは要さないものの、5級や6級は、片手・片足の欠損や機能全廃、あるいは著しい高次脳機能障害など、極めて重篤な障害が残った状態です。
これらは、被害者の方の「働く能力」を根こそぎ奪いかねないものであり、事故前と同じ職種・同じ収入を維持することは極めて困難になります。
そのため、この等級における最大の法的争点は、「逸失利益(将来失われる収入)」の評価に集約されます。保険会社は、被害者がまだ働ける可能性があることを理由に賠償額を抑えようとしますが、実際には再就職の困難さや、職場での立場の悪化など、数字には表れにくい苦労が山積します。
本記事では、5級・6級の認定基準、労働能力喪失率をめぐる攻防、そして将来の生活を守るために不可欠な「適正な賠償金」を獲得するためのポイントを解説します。
はじめに
後遺障害等級において、5級と6級は「重度後遺障害」の中核をなす等級です。
日常生活動作(食事や排泄など)はある程度自立できているケースが多いですが、社会生活、特に「仕事」においては決定的なハンディキャップを背負うことになります。
- 第5級: 労働能力喪失率 79% (特に軽易な労務以外は困難)
- 第6級: 労働能力喪失率 67% (労働能力の3分の2を喪失)
これらは単なる数字ではありません。「これまでのキャリアが断たれる」「配置転換を余儀なくされる」「将来的な昇進が見込めない」といった、被害者の方の人生設計そのものを揺るがす事態を意味します。
しかし、加害者側の保険会社は「残存機能で働けるはずだ」として、これら労働能力喪失率をそのまま認めない(減額主張する)ケースが散見されます。
これからの長い人生を経済的な不安なく過ごすためには、等級に見合った、あるいは実態に見合った「逸失利益」を確実に確保することが最優先課題となります。
交通事故に関するQ&A(5級・6級編)
5級・6級に該当するような大怪我をされた方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:5級と6級では、賠償金にどれくらいの差が出ますか?
数千万円単位の差が生じる可能性があります。
最も影響するのは「逸失利益」です。例えば、年収500万円の40歳男性の場合、労働能力喪失率が79%(5級)か67%(6級)かで、計算上の逸失利益には約1,000万円以上の差が出ます。また、後遺障害慰謝料(弁護士基準)も、5級は1,400万円、6級は1,180万円と異なります。
したがって、微妙な判定となるケース(関節の可動域測定の結果など)では、妥協せずに上位等級を目指すことが重要です。
Q2:元の職場に復帰できましたが、それでも逸失利益は全額もらえますか?
保険会社は減額を主張しますが、安易に応じてはいけません。
保険会社は「給料が下がっていないなら、労働能力喪失はない(または低い)」と主張し、逸失利益を減額しようとします。
しかし、これは間違いです。たとえ現在減収がなくても、「本人が無理をして働いている」「温情で雇用されている」「将来の昇給が見込めない」「転職市場での競争力を失った」といった事情があれば、本来の喪失率(79%や67%)通りの逸失利益が認められるべきです。これを「減収がない場合の逸失利益」の問題といいます。
Q3:高次脳機能障害で5級です。介護費用はもらえないのでしょうか?
原則は対象外ですが、具体的な症状によっては認められる可能性があります。
5級2号(高次脳機能障害)は、定義上は「介護を要しない」とされています。しかし、実際には記憶障害や感情失禁により、家族の見守りが必要なケースがあります。
過去の裁判例では、5級等の高次脳機能障害であっても、事故の内容や症状の程度、家族の負担状況を具体的に立証することで、日額数千円程度の「将来介護費」が認められた事例があります。あきらめずに弁護士に相談すべき点です。
解説:5級・6級の認定基準と「労働能力喪失」の実態
ここでは、具体的な認定基準を確認し、それが生活や仕事にどのような影響を及ぼすかを解説します。
1. 後遺障害等級5級・6級の認定基準
5級・6級は、身体の一部欠損や機能全廃、重度の精神障害などが該当します。
第5級の主な認定基準(労働能力喪失率 79%)
- 5級1号: 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
- 5級2号: 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの(高次脳機能障害、脊髄損傷など)
- 5級3号〜6号: 胸腹部臓器の著しい障害、片手・片足の完全な欠損など
- 5級7号: 片足の用を全廃したもの(足はあるが、三大関節すべてが強直するなど全く動かない状態)
第6級の主な認定基準(労働能力喪失率 67%)
- 6級1号: 両眼の視力が0.1以下になったもの
- 6級5号: 脊柱(背骨)に著しい変形または運動障害を残すもの(重度の圧迫骨折など)
- 6級6号: 片手の三大関節のうち、2関節の用を廃したもの
- 6級7号: 片足の三大関節のうち、2関節の用を廃したもの
ポイント
5級2号の「特に軽易な労務以外の労務に服することができない」とは、簡単な単純作業しかできない状態を指します。高度な判断や複雑な身体動作を伴う仕事は不可能とみなされます。
2. 「逸失利益」の計算と立証
5級・6級の事案において、賠償金の大部分(数千万円〜)を占めるのが逸失利益です。
しかし、金額が大きいだけに、保険会社もシビアに争ってきます。
① 「労働能力喪失率」の攻防
基準では5級79%、6級67%と決まっていますが、保険会社は以下のような理由で低い率を提示することがあります。
- 「事務職だから足の障害は仕事に影響しない」(職種による限定説)
- 「リハビリで将来回復する可能性がある」
【反論のポイント】
弁護士は、単に今の仕事ができるかだけでなく、「労働の質の低下」「持久力の低下」「配置転換の不利益」「転職の困難さ」などを具体的に主張します。
例えば、事務職であっても、脊柱の変形(6級5号)による背中の痛みで長時間座っていられない場合、労働能力への影響は甚大であると主張し、基準通りの喪失率を確保します。
② 「基礎収入」の認定
- 会社員: 原則として事故前年の源泉徴収票の金額。
- 主婦(主夫): 賃金センサス(女性労働者の全年齢平均賃金)を使用。約380万〜400万円程度で算定されることが多く、実際のパート収入より高くなるケースが多いです。
- 若年者・学生: 将来の可能性を考慮し、全年齢平均賃金などを使用します。
3. リハビリの長期化と症状固定のタイミング
5級・6級相当の怪我(粉砕骨折、脳挫傷など)の場合、治療期間は1年〜数年に及ぶことがあります。
ここで注意すべきは「症状固定」のタイミングです。
- 保険会社の対応: 「そろそろ治療費を打ち切ります」「症状固定にして後遺障害申請をしましょう」と早期に誘導してくることがあります。
- リスク: 十分なリハビリを行わないまま症状固定にしてしまうと、本来もっと回復できた機能が失われたり、後遺障害診断書に必要な所見(可動域の制限など)が正確に記載されなかったりする恐れがあります。
医師と相談し、「医学的にこれ以上良くならない」と判断されるまで、粘り強く治療を続けることが、適正な等級認定の前提となります。
4. 職種転換リスクと将来の減収
5級・6級の障害を負うと、多くの場合、事故前の職種を続けることが困難になります。
- 現場作業員 → 事務職へ: 肉体労働ができなくなり、未経験の事務職へ転換。給与ダウンのリスク。
- 営業職 → 内勤へ: 外回りができず、インセンティブ(歩合給)が得られなくなる。
- 退職・解雇: 会社に居場所がなくなり、退職を余儀なくされる。
これらの「将来起こりうるリスク」を逸失利益として先取りして請求するためには、「再就職がいかに困難か」「今の会社での雇用がいかに不安定か」を客観的に証明する必要があります。
5. 高次脳機能障害における「生活面」の影響
5級2号(高次脳機能障害)などの場合、仕事だけでなく家庭生活にも深刻な影響が出ます。
見た目は普通に見えても、以下のような症状が出ることがあります。
- 怒りっぽくなる、暴力を振るう(易怒性)
- 段取りよく家事ができない
- 子供の面倒が見られない
これらの事情は、後遺障害慰謝料の増額事由や、Q&Aで触れた将来介護費の請求根拠となり得ます。
ご家族が作成する「日常生活状況報告書」の内容が、等級認定や賠償額算定において極めて重要な意味を持ちます。
弁護士に相談・依頼するメリット
5級・6級の事案は、賠償額が高額になるため、保険会社側も専門部署や顧問弁護士が出てきて徹底的に争ってくる傾向があります。被害者個人で対応するのは事実上不可能です。
1. 賠償額の大幅な増額(弁護士基準の適用)
これまで述べてきた通り、自賠責基準や任意保険基準と、弁護士基準(裁判基準)には大きな乖離があります。
| 項目 | 自賠責基準(上限) | 弁護士基準(目安) |
| 5級 後遺障害慰謝料 | 618万円 | 1,400万円 |
| 6級 後遺障害慰謝料 | 512万円 | 1,180万円 |
これに加えて逸失利益の計算も、弁護士が介入することで「労働能力喪失期間」を長く認めさせたり、「基礎収入」を高く認定させたりすることが可能になります。結果として、総額で数千万円の増額になることも珍しくありません。
2. 適切な等級認定へのサポート
5級や6級は、医学的な立証が不十分だと、7級やそれ以下に認定されてしまうリスクがあります。
特に「関節の可動域」や「高次脳機能障害の程度」は、測定方法や検査内容によって結果が変わることがあります。
弁護士は、専門医と連携し、必要な検査(MRI、CT、各種神経学的検査)の実施を提案したり、後遺障害診断書の記載内容に不備がないかチェックしたりすることで、適正な等級獲得をサポートします。
3. 将来の不安に対するサポート
金銭的な賠償だけでなく、障害年金の申請サポートや、身体障害者手帳の取得アドバイスなど、被害者の方が今後の生活を再建するために利用できる公的制度についても助言を行います。
まとめ
後遺障害5級・6級は、介護までは必要なくとも、社会生活において「致命的」とも言えるハンディキャップを負う重度な障害です。
- 労働能力への影響: 67%〜79%の能力を喪失し、大幅な減収や職種転換のリスクがある。
- 最大の課題: 逸失利益の正当な評価(現在減収がなくても将来のリスクを主張する)。
- 慰謝料: 弁護士基準であれば1,000万円を超える高額な慰謝料が認められる。
保険会社から提示される金額は、あなたの失われた労働能力や、将来の苦労を十分に反映していない可能性があります。「こんなものか」と諦めて示談してしまう前に、必ず専門家の意見を聞いてください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、重篤な後遺障害を負われた方々が、経済的な不安なくリハビリや新生活に専念できるようサポートいたします。
適正な賠償金を勝ち取ることは、あなたの権利であり、将来への備えです。まずは無料相談にて、現状をお聞かせください。
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【後遺障害3級・5級】社会復帰の壁と「隠れた介護」の負担|認定基準と損害賠償のポイント
はじめに
交通事故による後遺障害等級において、第3級と第5級は「別表第2」という区分の上位に位置する重篤な障害です。
- 第3級: 生命維持に必要な日常動作はほぼ可能だが、一生涯、労務に服することができないもの。
- 第5級: 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの。
これらは、視力や聴力の喪失、手足の欠損・機能全廃といった身体的な障害だけでなく、脳損傷による「高次脳機能障害」で認定されるケースが多く見られます。
被害者ご本人は「以前と同じように動けない、考えられない」という喪失感に苦しみ、ご家族は「一見元気そうに見えるが、目が離せない」という特殊なケアに追われることになります。しかし、保険会社は「別表第1(要介護等級)ではない」という理由で、将来の介護費用を否定する傾向にあります。
適正な賠償を受け、将来の生活基盤を整えるためには、これらの等級の特殊性を正しく理解し、粘り強く交渉する必要があります。
交通事故に関するQ&A(3級・5級編)
まずは、3級・5級の認定や補償について、よくある疑問にお答えします。
Q1:3級・5級でも、将来の介護費用(付添看護費)は請求できますか?
原則は認められませんが、障害の内容によっては裁判等で認められる可能性があります。
自賠責保険の基準では、介護費用が支払われるのは「別表第1(1級・2級)」のみとされています。そのため、3級・5級(別表第2)の場合、保険会社は「介護費用は支払わない」と主張します。
しかし、高次脳機能障害などで、身体は動いても認知機能が低下し、外出時の付き添いや家庭内での見守り(声掛け、火の不始末の防止など)が必要な場合は、裁判実務において「将来介護費」が認められるケースがあります。これを認めてもらうには、弁護士による緻密な立証が不可欠です。
Q2:3級と5級の損害賠償額はどれくらい違いますか?
数千万円単位で異なる場合があります。
特に大きく異なるのが「労働能力喪失率」です。
- 3級:100%喪失(全く働けない前提)
- 5級:79%喪失(限定的な仕事しかできない前提)
この8%の差は、若年者や高収入の方ほど大きな金額差(逸失利益の差)となります。また、後遺障害慰謝料の基準額(弁護士基準)も、3級は1,990万円、5級は1,400万円と差があります。
Q3:高次脳機能障害で3級認定されました。社会復帰は可能でしょうか?
一般就労への復帰は極めて困難なのが現実です。
3級の定義は「一生涯、労務に服することができない」です。高次脳機能障害の場合、新しいことを覚えられない(記憶障害)、計画的に行動できない(遂行機能障害)、感情を抑制できない(社会的行動障害)といった症状により、以前の職場に戻っても業務を遂行できないケースが大半です。
無理をして復職し、トラブルになって退職を余儀なくされるよりも、「就労は困難である」という前提で十分な逸失利益(休業補償の代わりとなる将来分の賠償)を確保することが、生活の安定には重要です。
解説:後遺障害3級・5級の実態と法的留意点
ここからは、具体的な認定基準や、3級・5級特有の賠償問題について深掘りして解説します。
1. 後遺障害3級・5級の認定基準(別表第2)
3級・5級は多岐にわたる障害を含みますが、ここでは代表的なものを紹介します。
第3級の主な認定基準
- 3級1号: 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
- 3級2号: 咀嚼(そしゃく)または言語の機能を廃したもの(言葉が全く話せない、流動食しか食べられない等)
- 3級3号: 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの(重度の高次脳機能障害など)
- 3級5号: 両手の手指の全部を失ったもの
第5級の主な認定基準
- 1号 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
- 2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することが出来ないもの
- 4号 一上肢を手関節以上で失ったもの
- 5号 一下肢を足関節以上で失ったもの
- 6号 一上肢の用を全廃したもの
- 7号 一下肢の用を全廃したもの
- 8号 両足の足指の全部を失ったもの
解説のポイント
「3級3号」と「5級2号」などの神経系統の障害は、MRIなどの画像所見に加え、日常生活状況や各種検査結果(知能検査等)を総合して判定されるため、等級認定の段階で非常に揉めやすい部分です。
2. 「労働能力喪失率」と逸失利益の最大化
交通事故の賠償金において、3級・5級の事案で最も金額が大きくなるのが「逸失利益」です。
これは、「事故がなければ将来稼げたはずのお金」のことです。
3級と5級の決定的違い
- 3級:労働能力喪失率 100%
完全に働く能力が失われたとみなされます。事故前の年収が全額、就労可能年数分(原則67歳まで)補償されます。 - 5級:労働能力喪失率 79%
「21%分は働ける」とみなされます。しかし、実際には5級レベルの障害(両手指の全廃や著しい高次脳機能障害など)を負って、事故前と同じように稼ぐことは困難です。
【弁護士の視点:5級でも100%を狙う】
形式的には79%ですが、具体的な障害の内容や職種によっては、「事実上、全く働くことができない」と主張し、裁判で100%の喪失率を認めさせる交渉を行います。
3. 「将来介護費」の請求
前述の通り、自賠責保険の定型的な基準では、3級・5級には介護費用が計上されません。しかし、実生活では家族のサポートが不可欠なケースがあります。ここが弁護士の腕の見せ所です。
なぜ「介護」が必要なのか(高次脳機能障害の例)
高次脳機能障害で3級や5級となると、以下のような症状が現れることがあります。
- 記憶障害: 直前のことを忘れ、何度も同じ質問をする。薬の管理ができない。
- 注意障害: 料理中に火を点けたまま忘れる。信号を見落として道路に飛び出す。
- 遂行機能障害: 物事の段取りができず、着替えや入浴に何時間もかかる、あるいは指示されないと何もできない。
- 社会的行動障害: 感情のコントロールが効かず、家族や他人に暴言・暴力を振るう。
これらは、食事や排泄といった身体的な介助は不要でも、「24時間の見守り・監視」や「行動の指示・誘導」という精神的な介護を必要とします。
裁判で「随時介護費」を勝ち取るために
裁判所は、等級の数字(3級か1級か)だけでなく、「具体的な生活実態」を見て判断します。
3級・5級であっても、以下のような証拠を積み上げることで、日額数千円〜の将来介護費が認められる可能性があります。
- 陳述書・介護日誌: 家族が毎日どのようなサポートを行っているか(声掛けの回数、トラブルの処理、見守りの時間)を詳細に記録したもの。
- 主治医の意見書: 医学的な観点から「単独での生活は危険である」「見守りが必要である」という意見。
- ホームヘルパー等の利用実績: 実際に福祉サービスを利用している事実。
注意点
保険会社は「それは家族の協力義務の範囲内だ」「身体は動くのだから介護費は不要だ」と強く反論してきます。これに対抗するには、過去の類似裁判例(3級や5級で介護費を認めた判例)を引用した法的主張が必要です。
4. 住宅改造費や福祉用具の請求
車椅子生活となる脊髄損傷(不全麻痺など)や、両足欠損などの場合、自宅のバリアフリー化が必要になります。
- 家屋改造費: スロープ設置、手すりの取り付け、トイレの拡張など。
- 自動車改造費: 運転補助装置の取り付け(手動運転装置など)や、福祉車両への買い替え。
3級・5級であっても、具体的な障害により必要性が認められれば請求可能です。ただし、「便益向上(より快適にするため)」ではなく、「必要不可欠である」ことの証明が求められます。
弁護士に相談するメリット
後遺障害3級・5級の事案は、被害者側と保険会社側で、認識や提示額に大きな乖離が生まれやすい分野です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
1. 適正な「等級」の獲得
後遺障害等級は、少しの判断の違いで等級が変わります。
例えば、高次脳機能障害において「3級(労働能力喪失率100%)」か「5級(労働能力喪失率79%)」かは、賠償額に数千万円の差をもたらします。
医師任せにするのではなく、弁護士が診断書の内容をチェックし、日常生活報告書の記載方法をアドバイスすることで、実態に見合った上位等級(3級以上)の認定を目指します。
2. 「将来介護費」の可能性を模索できる
個人で交渉した場合、保険会社が3級・5級の事案で将来介護費を提示することはまずありません。ゼロです。
弁護士であれば、前述の通り裁判基準を用いて、「見守り介護」の必要性を主張し、将来にわたる介護費用の獲得に挑戦できます。たとえ少額の日額設定であっても、平均余命までの期間となれば、総額は数千万円になります。
3. 将来の生活設計へのアドバイス
賠償金はゴールではなく、その後の長い人生を支えるための原資です。
当事務所では、成年後見制度の利用検討や、賠償金の管理方法(信託の利用など)についても、提携する専門家と共にサポート体制を整えています。特に高次脳機能障害で金銭管理ができなくなった場合、誰がどのように財産を守るかは非常に重要な問題です。
まとめ
後遺障害3級・5級は、自賠責保険の区分では「要介護等級」に含まれませんが、実態としては社会復帰が極めて困難であり、ご家族による手厚いサポートを必要とする重度な障害です。
- 3級・5級の実態: 労働能力の79%〜100%を喪失し、経済的自立は困難。
- 隠れた争点: 高次脳機能障害などの「見守り」に対する将来介護費の請求。
- 解決の鍵: 等級認定の正確性と、生活実態の詳細な立証。
「保険会社の提示額は、自賠責基準や任意保険基準に過ぎない」ということを忘れないでください。
被害者ご本人の将来の生活を守り、介護を担うご家族の負担を少しでも軽減するために、適正な賠償金(弁護士基準)を獲得することは正当な権利です。
これからの生活に不安を感じておられる方は、示談書にサインをする前に、ぜひ一度、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が、皆様の事情に合わせた解決策をご提案いたします。
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【後遺障害1級・2級】常時介護・随時介護が必要な場合の補償と注意点|将来介護費と近親者慰謝料
はじめに
交通事故によって、脳や脊髄に甚大な損傷を負い、「寝たきり」や「高度な麻痺」が残ってしまった場合、被害者の方は自力で日常生活を送ることが困難になります。このようなケースでは、後遺障害等級認定において「別表第1」と呼ばれる特別な等級表が適用され、第1級(常時介護)または第2級(随時介護)が認定される可能性があります。
これらの等級は、一般的な後遺障害(手足のしびれや可動域制限など)とは異なり、賠償金の内訳や計算方法が非常に複雑です。特に「将来介護費」は数千万円から1億円を超えることも珍しくなく、適正な金額が認められるかどうかが、被害者ご本人とご家族の将来を左右します。
本稿では、重度後遺障害事案における法的留意点を解説します。
交通事故に関するQ&A
解説に入る前に、重度後遺障害に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:後遺障害1級と2級の違いは何ですか?
生命維持や日常生活動作において、「常に」介護が必要か、「随時」必要かの違いです。
第1級は、食事、排泄、着替えなどの身体的動作において、常に他人の介助を必要とする状態です。一方、第2級は、ある程度自分でできることはあるものの、自宅内で一人で過ごすことが危険であったり、排泄や食事などで頻繁に介助が必要であったりする状態(随時介護)を指します。この差は、将来支払われる「介護費用」の計算に大きく影響します。
Q2:家族が自宅で介護する場合でも、介護費用は請求できますか?
はい、請求可能です。
職業付添人(ヘルパー等)を雇わず、ご家族が自宅で介護をする場合でも、「近親者介護費」として日額(弁護士基準で1日8,000円程度)が認められます。これは、ご家族の介護労働を金銭的に評価するものです。また、将来的に家族が高齢化して介護できなくなった場合に備え、職業付添人の費用も合わせて請求する交渉を行うことが一般的です。
Q3:被害者本人の意識がない場合、誰が示談交渉を行うのですか?
原則として「成年後見人」を選任する必要があります。
遷延性意識障害(植物状態)や高次脳機能障害などで、被害者ご本人に判断能力(意思能力)がない場合、ご家族であっても勝手に代理人として示談書にサインすることはできません。家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人(親族や弁護士など)を選任し、その後見人が代理して交渉や契約を行うことになります。
解説:重度後遺障害(要介護1級・2級)の全貌
ここからは、具体的な認定基準や、請求できる特殊な損害項目について詳細に解説します。
1. 「別表第1」における後遺障害等級の認定基準
後遺障害等級には「別表第1」と「別表第2」が存在します。介護を要する1級・2級は、「別表第1」に基づいて認定されます。
第1級1号(常時介護)
- 定義: 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。
- 具体例:
- 遷延性意識障害(植物状態): 自力移動、摂食、排泄ができず、意思疎通も不可能な状態。
- 重度の高次脳機能障害・脊髄損傷(四肢麻痺): 意識はあっても、麻痺により身体が動かず、生命維持に必要な動作すべてに介助が必要な状態。
第2級1号(随時介護)
- 定義: 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。
- 具体例:
- 高次脳機能障害: 身体的な麻痺は軽度でも、認知機能の低下により、火の不始末や徘徊の危険があり、一人で外出や留守番ができない状態。
- 脊髄損傷(対麻痺など): 車椅子で一定の移動は可能だが、排泄や入浴、階段昇降などに介助が必要な状態。
ポイント
1級と2級の境界線は、医学的な所見だけでなく、「日常生活状況報告書」などの書類で、具体的な介護の頻度や内容がいかに正確に伝えられるかによって左右されます。
2. 重度後遺障害特有の賠償項目
1級・2級の事案では、一般的な怪我の事案とは異なり、将来にわたる生活保障のための特殊な項目が認められます。
① 将来介護費
賠償金の中で最も高額になる項目の一つです。症状固定(これ以上治療しても良くならないと判断された時点)から、平均余命までの期間に要する介護費用を請求します。
- 職業付添人(ヘルパー)の場合: 実費全額が基本です。
- 近親者(家族)介護の場合: 弁護士基準では、日額8,000円が目安です。
- ※具体的状況により増額される場合もあります。
保険会社の主張に対する反論
保険会社はしばしば、「重度障害者は平均余命まで生きられない可能性がある」として、補償期間を短く見積もる主張をしてくることがあります。しかし、これに対しては統計データや医学的根拠を用いて、平均余命までの全期間を認めるよう主張する必要があります。
② 家屋改造費・自動車改造費
車椅子での生活や、自宅での介護を可能にするためのリフォーム費用です。
- 家屋改造費: 玄関のスロープ設置、廊下の拡幅、浴室・トイレのバリアフリー化、ホームエレベーターの設置など。
- ※持ち家か賃貸か、マンションか一戸建てかによって対応が異なります。場合によっては、改造ではなく「転居費用」や「新築時の差額」を請求するケースもあります。
- 自動車改造費: 車椅子ごと乗車できるリフト付き車両への改造費や、福祉車両の購入差額など。
これらを請求するためには、「必要性」と「相当性」を立証する必要があります。単に「便利だから」という理由では認められません。医師の意見書や、具体的なリフォーム会社の見積書、現況の写真などを用いて、障害の状態に合わせて不可欠であることを主張立証します。
③ 装具・器具購入費
将来にわたって買い替えが必要となる用具の費用です。
- 車椅子、電動ベッド、床ずれ防止マット
- おむつ代、カテーテル等の衛生用品代
これらは「年間の費用」だけでなく、将来の「交換サイクル(耐用年数)」も考慮して計算します。例えば、車椅子であれば5年に1回の買い替え費用を、平均余命まで請求します。
④ 近親者固有の慰謝料
通常、慰謝料は被害者本人の精神的苦痛に対して支払われます。しかし、被害者が重度の後遺障害を負った場合、ご家族(父母、配偶者、子)もまた、筆舌に尽くしがたい精神的苦痛を受け、さらに将来にわたる介護負担を背負うことになります。
民法711条の類推適用等により、被害者本人の慰謝料とは別に、ご家族自身の慰謝料(数百万円程度)が認められるケースがあります。これは重度後遺障害事案特有の重要な権利です。
3. 「成年後見制度」の利用について
被害者ご本人が、高次脳機能障害や遷延性意識障害により意思能力を喪失している場合、法律上、有効な契約を結ぶことができません。これは、加害者側との示談契約も同様です。
そのため、示談交渉を正式に進めるには、家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人を選任する必要があります。
- 誰がなるのか: 親族が選ばれることもありますが、賠償金が高額になる場合、財産管理の複雑さから、弁護士や司法書士などの専門家が選任される、あるいは親族と専門家が共同で後見人になるケースが増えています。
- 注意点: 成年後見制度は、一度開始すると原則として被害者ご本人が亡くなるまで続きます。賠償金の管理も厳格に行う必要があり、ご家族が生活費のために自由に使うことは制限されます。この制度のメリット・デメリットを正しく理解した上で手続きを進めることが重要です。
4. 逸失利益における「労働能力喪失率」の問題
逸失利益とは、「事故がなければ将来得られたはずの収入」のことです。
後遺障害1級・2級の場合、労働能力喪失率は原則として「100%」と認められます。つまり、一生涯働くことができないという前提で計算されます。
ここで問題となるのが、「生活費控除」です。
死亡事故の場合、生きていればかかったはずの生活費が不要になるため、逸失利益から生活費分(30〜50%)が差し引かれます。
しかし、重度後遺障害の場合は被害者が生存しているため、生活費がかかります。したがって、原則として生活費控除は行われません。
保険会社が「将来の生活費の一部を控除すべきだ」と主張してくることがありますが、これには反論する必要があります。
弁護士に相談・依頼するメリット
後遺障害1級・2級の事案において、弁護士への依頼は「選択肢の一つ」ではなく、「必須の手続き」と言っても過言ではありません。その理由は以下の通りです。
1. 賠償額が数千万円〜億円単位で変わる可能性がある
日本の交通事故賠償には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責基準(最低限の補償)
- 任意保険基準(保険会社独自の基準)
- 弁護士基準(裁判基準)(過去の判例に基づく適正な基準)
重度後遺障害の場合、慰謝料だけでも以下のような差が生じます。
| 項目 | 自賠責基準 | 弁護士基準(目安) |
| 後遺障害慰謝料(1級) | 1,600万円(上限) | 2,800万円 |
| 後遺障害慰謝料(2級) | 1,163万円(上限) | 2,370万円 |
これに加え、将来介護費や逸失利益の計算において、弁護士基準を適用するかどうかで総額には大きな差が生まれます。
2. 「将来介護費」の立証における専門性
将来介護費は、単に「介護が必要です」と言うだけでは認められません。
「具体的にどのような介護動作が」「1日何時間必要で」「将来どのような変化が予測されるか」を、医師の意見書や介護日誌を用いて緻密に立証する必要があります。また、「親亡き後」の介護体制(施設入所費用や職業付添人の費用)をどのように見積もるかも、高度な専門知識を要します。
交通事故に精通した弁護士であれば、将来のリスクを見越した適正なプランを提示し、請求することができます。
3. 成年後見申立てや刑事手続きのサポート
ご家族は、日々の介護や病院への付き添いで心身ともに疲弊されています。その中で、複雑な成年後見の手続きや、加害者の刑事裁判への被害者参加手続きなどを自分たちだけで行うのは困難です。
弁護士は、賠償交渉だけでなく、こうした周辺の手続きもトータルでサポートし、ご家族の負担を軽減します。
まとめ
後遺障害1級・2級(別表第1)は、被害者ご本人の尊厳と、ご家族の生活を守るために、極めて手厚い補償がなされなければならない事案です。
- 等級の定義: 常に介護が必要なら1級、随時必要なら2級。
- 最大の争点: 将来介護費の計算(日額、期間、介護体制)。
- 重要な権利: 家屋改造費や近親者慰謝料も漏れなく請求する。
- 手続き: 成年後見人の選任が必要になるケースが多い。
保険会社から提示される金額は、ご本人が一生涯を生きていくための費用として不十分なケースが多々あります。「提示額にサインをしてしまってから」では取り返しがつきません。
当事務所では、重度後遺障害を負われた被害者の方とそのご家族に寄り添い、将来にわたる安心を確保するために全力を尽くします。適正な介護体制の構築や、将来の生活設計についても、法的な観点からアドバイスさせていただきます。
まずは一度、弁護士にご相談ください。
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【複数部位の骨折】後遺障害等級の「併合」ガイド|計算ルールと実務上の注意点
はじめに
交通事故、特にバイクや自転車での転倒事故や、歩行中に自動車にはねられた場合などは、身体の一箇所だけでなく、腕と足、首と腰など、複数の部位を同時に骨折してしまうことが少なくありません。
治療を尽くしても複数の箇所に後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級はどのように決まるのでしょうか。「足の障害が12級、手の障害が12級だから、合わせて24級?」あるいは「足して6級?」といった計算にはなりません。
後遺障害等級制度には、複数の障害がある場合の計算ルールとして「併合(へいごう)」という仕組みが存在します。
この併合ルールは複雑で、どのルールが適用されるかによって、最終的な等級(併合等級)が変わり、受け取れる賠償金の額が数百万、数千万円単位で変動することも珍しくありません。
本記事では、複数の部位を骨折し、複数の後遺症が残った場合に適用される「併合認定」の基本的なルールから、間違いやすい「系列(けいれつ)」の考え方、実務上の注意点について、交通事故に強い弁護士法人が分かりやすく解説します。
併合認定に関するQ&A
まずは、複数の怪我をした場合の後遺障害等級について、よくある疑問にQ&A形式でお答えします。
Q1:右腕の骨折で12級、左足の骨折でも12級に該当する場合、最終的な等級はどうなりますか?
ルールに基づき等級が繰り上がり、「併合11級」となります。
13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1つ繰り上げる(重くする)というルールがあります。このケースでは、重い方(どちらも同じですが)の12級を1つ繰り上げて、11級と認定されます。
Q2:むちうちで14級、腰の骨折による痛みで14級が認定されました。合わせると13級になりますか?
いいえ、この場合は繰り上げられず、「併合14級」のままとなります。
最も軽い等級である14級に関しては、いくつあっても等級を繰り上げるというルールが適用されません。したがって、14級の障害が複数あっても、最終結果は14級となります。
Q3:腕の骨折で「関節の機能障害(動きが悪い)」と「変形障害(曲がってくっついた)」の両方が残りました。これも併合されますか?
原則として併合されず、上位の等級がそのまま認定されるか、あるいは別の評価方法がとられます。
同一の部位(この場合は同じ腕)に生じた障害については、併合ではなく「派生(はせい)」や「加重(かじゅう)」といった別の関係として扱われることが多く、単純な併合ルールが適用されない場合があります(詳細は後述の「系列」の項目で解説します)。
解説:後遺障害等級「併合」の基本ルール
交通事故で複数の部位に後遺障害が残った場合、それぞれの部位ごとに等級を判断した上で、「併合(へいごう)」という処理を行って最終的な等級を決定します。
併合処理には、主に「併合繰上げ(等級が重くなる)」と「併合維持(等級が変わらない)」の2つのパターンがあります。
1. 併合繰上げ(等級が重くなるケース)
認定された等級のうち、最も重い等級を基準にして、以下のルールに従って等級を繰り上げます。
① 13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 最も重い等級を「1級」繰上げる
- 【例】12級(手首の痛み) + 12級(足首の痛み)
⇒ 重い方の12級を1つ繰り上げて、「併合11級」となります。 - 【例】10級(腕の可動域制限) + 12級(骨折部の変形)
⇒ 重い方の10級を1つ繰り上げて、「併合9級」となります。
② 8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 最も重い等級を「2級」繰上げる
- 【例】8級(肘関節の用廃) + 8級(膝関節の用廃)
⇒ 重い方の8級を2つ繰り上げて、「併合6級」となります。 - 【例】6級(腕の欠損) + 8級(脚の短縮)
⇒ 重い方の6級を2つ繰り上げて、「併合4級」となります。
③ 5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 最も重い等級を「3級」繰上げる
- 【例】5級(片足の全廃) + 5級(片腕の全廃)
⇒ 重い方の5級を3つ繰り上げて、「併合2級」となります。
※ただし、繰り上げの結果、等級が1級を超えることはありません。また、それぞれの障害ごとの賠償額の合計が、繰り上げ後の等級の賠償額を上回るような逆転現象が起きる場合は、調整が行われることがあります。
2. 併合維持(等級が変わらないケース)
以下のパターンの場合、等級の繰り上げは行われず、最も重い等級がそのまま最終的な等級(併合等級)となります。
① 14級の後遺障害が含まれる場合
14級は後遺障害の中で最も軽い等級であり、これがいくつあっても上位等級への繰り上げは行われません。
- 【例】14級(首の神経症状) + 14級(腰の神経症状)
⇒ 「併合14級」(13級にはなりません) - 【例】12級(腕の骨折後の痛み) + 14級(首の神経症状)
⇒ 「併合12級」(14級は計算上、吸収される形になります)
② その他、繰上げルールに該当しない組み合わせ
例えば、「9級」と「13級」の組み合わせの場合などです。
- 【例】9級(顔面の醜状) + 13級(指の欠損)
⇒ この場合、13級以上が2つあるため「1級繰上げ」のルールが適用されそうですが、9級を1つ繰り上げると「8級」になります。しかし、8級と9級の差は大きいため、単純に繰り上げると不均衡が生じることがあります。
実は、異なる系列の障害の場合、基本的には繰上げルール①(1級繰上げ)が適用され、「併合8級」となります。
3. 注意が必要な「系列(けいれつ)」の概念
併合の計算をする際、最も注意しなければならないのが「系列(けいれつ)」という考え方です。
後遺障害等級表では、身体の部位や機能ごとにグループ分け(系列)がされています。
- 原則: 「異なる系列」の障害は併合する。
- 例外: 「同一系列」の障害は、併合ではなく、その部位全体として総合的に評価する(評価方法が異なる)。
同一系列とみなされる例
- 両眼の障害: 右目の視力低下と左目の視力低下は、それぞれ別々に等級を出すのではなく、「両眼の視力障害」として定められた等級表(例:両眼の視力が0.1以下なら6級)を直接適用します。
- 同一上肢(腕)の障害: 「右肩の機能障害(12級)」と「右手首の機能障害(12級)」は、同じ「右上肢」という系列です。この場合、単純な併合繰上げ(11級)ではなく、併合した結果が序列を乱さないか等の調整が入ることがあります(実務上は併合扱いになることが多いですが、専門的な判断が必要です)。
派生関係にある場合
「骨折による変形障害(12級)」と、その変形部分が神経を圧迫して生じている「神経症状(12級)」は、通常、別々の障害とはみなされません。
「通常派生する関係」にあるため、これらは包括的に評価され、上位の等級(この場合は12級)のみが認定されます。これを「法条競合(ほうじょうきょうごう)」といいます。
【実例で見る併合計算シミュレーション】
より理解を深めるために、よくある交通事故のケースでシミュレーションしてみましょう。
ケースA:バイク事故で右足と腰を負傷
障害1: 右足首の機能障害(可動域が健側の3/4以下) ⇒ 12級7号
障害2: 腰椎圧迫骨折による変形障害 ⇒ 11級7号
【計算結果】
どちらも「13級以上」の障害です。
したがって、重い方の等級(11級)を1つ繰り上げます。
結果:併合10級
ケースB:歩行中に跳ねられ、全身を打撲・骨折
障害1: 左大腿骨骨折後の脚の短縮(1cm以上) ⇒ 13級8号
障害2: むちうちによる首の痛み ⇒ 14級9号
障害3: 鎖骨骨折後の変形障害 ⇒ 12級5号
【計算結果】
3つの障害があります。
まず、14級(障害2)は繰上げの計算に入りません。
次に、13級(障害1)と12級(障害3)を見ます。これらはどちらも「13級以上」です。
したがって、最も重い等級(12級)を1つ繰り上げます。
結果:併合11級(14級は併合11級の中に含まれる形で処理されます)
ケースC:重度の後遺障害が複数残った場合
障害1: 右腕の全廃(用を廃したもの) ⇒ 5級6号
障害2: 右足の全廃(用を廃したもの) ⇒ 5級7号
【計算結果】
どちらも「5級以上」の障害です。
したがって、重い方の等級(5級)を3つ繰り上げます。
結果:併合2級
実務上の注意点と弁護士の役割
併合認定は自動的に正しく行われるとは限りません。被害者の方が損をしないために、実務上注意すべきポイントがあります。
1. 「併合」と「既存障害(素因減額)」の違い
今回認定された等級が「併合」によるものなのか、それとも元々持っていた障害(既存障害)を加味して調整されたものなのかを区別する必要があります。
例えば、以前の事故で14級を持っていて、今回の事故で新たに別の14級相当の怪我をした場合、結果は「併合14級」ですが、保険会社によっては「既に14級があったのだから、新たな支払いは不要」といった主張をしてくることがあります(これを「加重障害」の計算といいます)。
正しいルールが適用されているか、専門家のチェックが必要です。
2. 「みなし系列」や「派生関係」の誤った適用
保険会社側の認定機関(自賠責損害調査事務所)は、複数の症状を「別々の障害」として併合認定するのではなく、「一つの原因から派生した一連の症状」としてまとめて扱い、低い等級で認定してくることがあります。
例えば、「骨折による痛み」と「可動域制限」を別々に評価せず、「可動域制限の中に痛みも含まれる」として、低い方の等級を無視するケースなどです。
弁護士は、それぞれの症状が独立した評価対象であることを医学的・法的に主張し、正しい併合等級の獲得を目指します。
3. 賠償額の大幅な違い
等級が1つ違うだけで、賠償額(特に後遺障害慰謝料と逸失利益)は大きく変わります。
併合のルールを適用して12級が11級になれば、弁護士基準の慰謝料だけでも290万円から420万円へと増額します。逸失利益を含めればその差はさらに広がります。
「たかが1級の違い」と思わず、適正な計算がなされているかを確認することが重要です。
まとめ
複数部位の骨折における後遺障害等級の認定は、単なる足し算ではなく、複雑な「併合ルール」に基づいて決定されます。
- 基本は「繰上げ」: 13級以上が2つなら1級アップ、8級以上なら2級アップ。
- 14級の壁: 14級はいくつあっても繰り上がらない。
- 系列の罠: 同じ部位や関連する機能の障害は、単純な併合にならないことがある。
ご自身の症状が最終的にどの等級になるのか、保険会社の提示している等級や賠償額が正しい計算に基づいているのかを判断するのは、一般の方には非常に困難です。
複数の部位にお怪我をされた方は、適正な補償を受け取るためにも、示談をする前に一度、交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、複雑な後遺障害事案の解決実績が豊富にございます。等級認定の申請から賠償交渉まで、トータルでサポートいたします。
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【下肢の骨折】交通事故による後遺障害等級認定ガイド|脚・膝・足首の機能障害と短縮障害
はじめに
交通事故において、歩行中や自転車・バイクの運転中に車と接触したり、自動車乗車中に強い衝撃を受けたりすることで、下肢(脚)を骨折するケースは非常に多く発生します。
下肢は、大腿骨(太ももの骨)、膝蓋骨(膝の皿)、脛骨・腓骨(すねの骨)、足首、足指などで構成されており、これらを損傷すると、「歩く」「立つ」「走る」といった日常生活の基本動作に直結する深刻な影響が生じます。
治療によって骨が癒合し、以前と同じように歩けるようになれば良いのですが、残念ながら治療を尽くしても、「膝が曲がらない」「足首が固まった」「脚の長さが左右で変わってしまった」「歩くと痛みが走る」といった後遺症が残ってしまうことがあります。
このように、治療を行っても完治せず、医学的にこれ以上の改善が見込めなくなった状態(症状固定)で残存した障害については、適切な「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益(将来得られるはずだった収入の減少分)を請求することが可能となります。
しかし、下肢の後遺障害は、関節の可動域制限、骨の変形、脚の短縮、欠損など多岐にわたり、認定基準も非常に複雑です。適正な補償を受けるためには、ご自身の症状がどの等級に該当する可能性があるのかを正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、交通事故による下肢(大腿骨、膝蓋骨、脛骨、足関節、足指など)の骨折で残りやすい後遺障害の種類や認定基準、適正な等級認定を受けるためのポイントについて、弁護士法人長瀬総合法律事務所が詳しく解説します。
下肢の骨折に関するQ&A
まずは、下肢を骨折された被害者の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1:骨折した方の脚が短くなってしまい、歩くときにびっこを引いてしまいます。これは後遺障害になりますか?
はい、「短縮障害」として等級認定の対象となります。
大腿骨や脛骨などの骨折に伴い、骨が重なって癒合したり、骨の一部が欠損したりすることで、脚の長さが短くなることがあります。
これを「下肢の短縮障害」といい、短縮した長さによって等級が決まります。1cm以上短縮した場合は13級8号、3cm以上で10級8号、5cm以上で8級5号が認定される可能性があります。測定は、医師によるロールレントゲン撮影などを用いて厳密に行う必要があります。
Q2:膝の皿(膝蓋骨)を割りました。骨はくっつきましたが、階段の上り下りで膝に激痛が走ります。
痛みの原因が医学的に証明できれば、神経症状として認定される可能性があります。
骨癒合が完了していても、関節面の不適合(形がいびつになること)や、周囲の軟部組織の損傷により痛みが残ることがあります。
画像検査(レントゲンやCT、MRI)で痛みの原因となる異常が確認できる場合は12級13号、画像上の異常が明らかでなくても、事故状況や治療経過から痛みの存在が医学的に説明できる場合は14級9号が認定される可能性があります。
Q3:足首の骨折後、足首が固まってしまい、正座ができなくなりました。
足関節の「機能障害(可動域制限)」として等級認定が検討されます。
関節の動く範囲(可動域)が、怪我をしていない方の足(健側)と比べて制限されている場合、その制限の程度に応じて等級が認定されます。
健側の可動域の4分の3以下に制限されていれば12級7号、2分の1以下であれば10級11号、関節がほぼ動かない(強直)状態であれば8級7号に該当する可能性があります。
解説:下肢の骨折による後遺障害の分類と認定基準
下肢の骨折による後遺障害は、大きく分けて「機能障害(関節の動き)」「短縮障害(長さ)」「変形障害(骨の形)」「欠損障害(足指など)」「神経症状(痛み)」の5つに分類されます。それぞれの具体的な基準を解説します。
1. 下肢の機能障害(関節可動域制限)
股関節、膝関節、足関節(足首)のいずれかの動きが悪くなった場合です。これを「3大関節」といいます。
原則として、健側(怪我をしていない側)の可動域と比較して判定します。
| 等級 | 認定基準(抜粋) | 具体的な状態 |
| 第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 関節が完全強直(固まって動かない)した場合、またはそれに近い状態 |
| 第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 可動域が健側の2分の1以下に制限された場合 |
| 第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 可動域が健側の4分の3以下に制限された場合 |
※人工関節や人工骨頭を挿入した場合は、可動域の制限度合いにかかわらず、原則として10級11号以上が認定されます(可動域制限が著しい場合はさらに上位等級の可能性もあります)。
【部位別の注意点】
- 膝関節: 膝蓋骨(パテラ)骨折や脛骨高原骨折などで生じやすい障害です。
- 足関節: 脛骨・腓骨の遠位端骨折(足首付近の骨折)で生じやすく、背屈(つま先を上げる)や底屈(つま先を下げる)の動きが重要視されます。
2. 下肢の短縮障害
前述の通り、骨折等の影響で脚が短くなった場合です。
測定は、上前腸骨棘(骨盤の出っ張り)から下腿内果(内くるぶし)までの長さを計測し、健側と比較します。
- 第8級5号: 1下肢を5cm以上短縮したもの
- 第10級8号: 1下肢を3cm以上短縮したもの
- 第13級8号: 1下肢を1cm以上短縮したもの
※逆に、成長期の子供の骨折などで過成長が起き、脚が「長く」なってしまった場合(過長障害)も評価対象となり得ますが、短縮障害とは基準が異なります(例:3cm以上の過長で10級相当など)。
3. 下肢の変形障害(偽関節・長管骨の変形)
骨が正常に癒合しなかったり、曲がってくっついたりした場合です。
偽関節(ぎかんせつ)
骨折部の癒合が止まり、本来関節ではない部分がグラグラと動いてしまう状態です。
- 第7級10号: 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(大腿骨や脛骨・腓骨に偽関節があり、常に硬性補装具が必要な場合)
- 第8級9号: 1下肢に偽関節を残すもの(7級に至らない程度の偽関節)
- 第12級8号: 長管骨に変形を残すもの(腓骨のみに偽関節を残す場合など)
長管骨の変形
大腿骨や脛骨が曲がって癒合してしまった場合です。
- 第12級8号: 長管骨に変形を残すもの
- 大腿骨または脛骨が15度以上屈曲して不正癒合した場合
- 外部から見て明らかにわかる程度の変形がある場合 など
4. 足指の後遺障害
足の指(足趾)の骨折等による障害は、「欠損障害」と「機能障害」に分けられます。手指と同様に、親指(母趾)は歩行時の蹴り出しに重要な役割を果たすため、他の指よりも重く評価されます。
足指の欠損障害(指を失った場合)
- 第5級5号: 1足の足指の全部を失ったもの
- 第8級10号: 1足の第1の足指(親指)を含み2以上の足指を失ったもの
- 第10級9号: 1足の第1の足指を失ったもの など
足指の機能障害(用を廃した場合)
足指の根元の関節(MTP関節)やその先の関節の可動域が、健側の2分の1以下になった場合などが該当します。
- 第7級11号: 1足の足指の全部の用を廃したもの
- 第9級15号: 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
- 第12級12号: 1足の第1の足指の用を廃したもの
- 第13級10号: 1足の第2の足指(人差し指)の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの、または第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
5. 神経症状(痛み・痺れ)
関節の動きや骨の形に基準を満たすほどの異常がなくても、痛みが残ることは多々あります。
下肢の骨折では、骨折部の痛みのほか、足首の捻挫を併発した場合の痛みや、骨折に伴う神経損傷による痺れなどが対象となります。
- 第12級13号: 局部に頑固な神経症状を残すもの(他覚的所見あり)
- 第14級9号: 局部に神経症状を残すもの(自覚症状中心だが医学的に説明可能)
弁護士に相談するメリット
下肢の骨折による後遺障害認定は、専門的な知識と経験が結果を大きく左右します。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
1. 「可動域」と「短縮」の正確な立証
関節の機能障害(可動域制限)は、測定の仕方ひとつで等級が変わります。例えば、10級(2分の1以下)と12級(4分の3以下)では、賠償額に数百万円の差が生じることがあります。
また、脚の短縮についても、単にメジャーで測るだけでは不正確とされる場合があり、スキャングラム(ロールレントゲン)などの特殊な撮影方法で証明する必要があります。
弁護士は、適正な測定方法が行われているかを確認し、必要であれば再検査のアドバイスを行います。
2. 複数の障害がある場合の「併合」判断
下肢の骨折では、「足首の機能障害(12級)」と「骨折部の痛み(14級)」、あるいは「脚の短縮(13級)」など、複数の障害が同時に残ることがあります。
この場合、それぞれの等級をどのように組み合わせるかという「併合(へいごう)」のルールが適用されます。保険会社が提示する等級が、必ずしも正しいルールに基づいているとは限りません。弁護士は、複数の症状をもれなくピックアップし、最適な等級が認定されるよう主張します。
3. 逸失利益の減額に対する反論
後遺障害が認定されると、将来の収入減少分として「逸失利益」が請求できます。しかし、保険会社は「骨折の痛みがあってもデスクワークなら支障はない」「短縮障害があっても靴の調整で対応できる」などと主張し、逸失利益を減額しようとしてくることがあります。
弁護士は、被害者の方の具体的な職務内容や日常生活への支障を詳細に主張し、安易な減額を許さず、本来受け取るべき賠償金の獲得を目指します。
まとめ
下肢の骨折は、歩行という基本的な生活動作に直結するため、後遺症が残った場合の精神的・経済的苦痛は計り知れません。
- 3大関節(股・膝・足)の可動域制限: 健側との比較が重要。
- 脚の短縮: 1cm以上の短縮から認定対象。正確な画像診断が必要。
- 足指の障害: 親指かそれ以外かで等級が大きく異なる。
- 痛みの残存: 画像所見がない場合でも14級の可能性がある。
「足が痛くて長時間歩けないのに、後遺障害ではないと言われた」「保険会社の提示額が低すぎる気がする」といった不安をお持ちの方は、示談をする前に弁護士にご相談ください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故被害者の方の「これからの生活」を守るため、適正な等級認定と賠償金の獲得に向けて全力でサポートいたします。
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【手・指の骨折】交通事故による後遺障害等級認定ガイド|手首の可動域制限・変形治癒・機能障害
はじめに
私たちは朝起きてから夜眠るまで、食事、着替え、スマートフォンの操作、仕事でのパソコン入力など、あらゆる場面で「手」や「指」を使っています。そのため、交通事故で手や指を骨折すると、日常生活や仕事に甚大な支障をきたすことになります。
交通事故による手や指の怪我には、手首の骨折(橈骨遠位端骨折など)や、指の骨折、脱臼、腱の断裂など様々なものがあります。治療によって元通りに回復すれば良いのですが、懸命なリハビリを行っても「手首が以前のように曲がらない」「指が変形したまま固まってしまった」「握力が戻らない」「雨の日になると痛む」といった症状が残ってしまうことが少なくありません。
このように、治療を続けても症状が改善しなくなった状態(症状固定)で残っている障害については、適切な「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益(将来の収入減少分に対する補償)を受け取ることができます。
しかし、手や指の後遺障害認定基準は非常に細分化されており、わずかな関節の動きの差や、欠損した部位の長さによって、認定される等級(=賠償額)が大きく変わります。
本記事では、交通事故による手・指の骨折等で残りやすい後遺障害の種類や等級認定の基準、そして適正な補償を受けるためのポイントについて、弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。
手・指の骨折に関するQ&A
まずは、手や指を骨折された被害者の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1:手首の骨折は治りましたが、以前ほど手首を反らせなくなりました。これは後遺障害になりますか?
はい、「機能障害(可動域制限)」として認定される可能性があります。
骨折の影響で関節が固まり、動く範囲(可動域)が狭くなることを「機能障害」といいます。
手首(手関節)の場合、怪我をしていない方の手首(健側)と比べて、可動域が2分の1以下になっていれば10級10号、4分の3以下になっていれば12級6号が認定される可能性があります。単に「動きにくい」という自覚症状だけでなく、医師による厳密な計測が必要です。
Q2:小指を骨折し、曲がったまま伸びなくなってしまいました。仕事に支障があるのですが、等級は認定されますか?
指の機能障害として、等級認定の対象となります。
指の関節が動かなくなったり、可動域が半分以下になったりした場合は、「指の用(よう)を廃したもの」として扱われます。
小指1本が用を廃した場合は13級6号、もし完全に小指を失ってしまった場合(欠損障害)は12級10号となります。どの指が、どのような状態になったかによって等級が細かく決められています。
Q3:骨はくっつきましたが、手首に痛みが残っています。握力も事故前の半分くらいしか出ません。
痛みは「神経症状」として認定される可能性がありますが、握力低下単独での認定は困難です。
骨折部の変形癒合や神経損傷により痛みが残っている場合、医学的に証明できれば12級13号、医学的に説明可能であれば14級9号が認定される可能性があります。
一方で、「握力の低下」だけを理由に後遺障害等級が認定されることは、実務上ほとんどありません。ただし、痛みのせいで力が入らない、あるいは神経麻痺の結果として握力が低下しているといった場合は、痛みや神経麻痺の症状として評価されることになります。
解説:手関節(手首)の後遺障害等級
ここからは、部位や症状ごとに具体的な認定基準を解説します。まずは手首(手関節)についてです。
交通事故では、ハンドルを持ったまま強い衝撃を受けたり、転倒した際に手をついたりすることで、橈骨(とうこつ)や尺骨(しゃっこつ)といった前腕の骨の手首側を骨折することがよくあります。
1. 手関節の機能障害(可動域制限)
手首の関節の動きが悪くなった場合です。原則として、健側(怪我をしていない側)の可動域角度と比較して判断します。
| 等級 | 認定基準 | 具体的な状態 |
| 第10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 手首の可動域が健側の2分の1以下に制限された場合 |
| 第12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 手首の可動域が健側の4分の3以下に制限された場合 |
測定方法の注意点
手首の動きには「掌屈(手を内側に曲げる)・背屈(手を甲側に反らす)」と「橈屈(親指側に曲げる)・尺屈(小指側に曲げる)」があります。
原則として、主要運動である掌屈・背屈の合計角度で判断します。ただし、掌屈・背屈が基準値(健側の制限の枠内)をわずかに上回る場合でも、参考運動である橈屈・尺屈の制限が著しければ、等級が認定されることもあります。
2. 手関節周辺の変形障害
骨折した骨が、ズレたままくっついてしまった(変形癒合)場合や、骨がつながらずグラグラしている(偽関節)場合です。
第12級8号:長管骨に変形を残すもの
橈骨や尺骨の骨折部に変形癒合があり、外部から見て変形がわかる場合や、レントゲン等で変形が確認できる場合に認定されます。手首が曲がって見える、骨が出っ張っているといったケースです。
第7級9号 / 第8級8号:偽関節(ぎかんせつ)を残すもの
骨癒合が完了せず、関節ではない部分が関節のように動いてしまう状態です。常に硬性補装具が必要な重度なものは7級、それ以外は8級となります。
3. 神経症状(痛み・痺れ)
可動域制限や変形が認定基準に達しない場合でも、痛みが残っている場合は以下の等級が検討されます。
- 第12級13号: 局部に頑固な神経症状を残すもの(画像検査などで痛みの原因が他覚的に証明できるもの)
- 第14級9号: 局部に神経症状を残すもの(事故状況や治療経過から痛みの存在が医学的に説明できるもの)
特に、手首の小指側にある軟骨組織であるTFCC(三角線維軟骨複合体)を損傷した場合、レントゲンには写らないためMRI検査が必要不可欠です。発見が遅れると「単なる捻挫」として扱われ、後遺障害が認められないリスクがあるため注意が必要です。
解説:手指の骨折と後遺障害等級
次に、指の後遺障害について解説します。
指の後遺障害は、「指を失った場合(欠損障害)」と「指の機能が失われた場合(機能障害)」に分けられます。また、親指は他の指よりも機能的に重要であるため、他の指よりも重い等級が設定されています。
1. 手指の欠損障害
指の一部、または全部を失ってしまった場合です。
| 等級 | 認定基準(抜粋) | 具体的な状態 |
| 第3級5号 | 両手の指の全部を失ったもの | 両手とも全ての指を失った場合 |
| 第6級8号 | 1手の5の手指を失ったもの | 片手の全ての指を失った場合 |
| 第8級3号 | 1手の親指を含み2以上の手指を失ったもの | 片手の親指+人差し指などを失った場合 |
| 第9級12号 | 1手の親指を失ったもの | 親指の指節間関節(IP関節)以上を失った場合 |
| 第11級8号 | 1手の人差し指、中指または薬指を失ったもの | 近位指節間関節(PIP関節)以上を失った場合 |
| 第12級9号 | 1手の小指を失ったもの | 近位指節間関節(PIP関節)以上を失った場合 |
| 第13級7号 | 1手の親指の指骨の一部を失ったもの | 親指の骨の一部を失った場合(遊離骨折等) |
※「指を失った」とは、親指であれば指節間関節、その他の指であれば近位指節間関節より根元から失った場合などを指します。切断の場所によって細かく定義されています。
2. 手指の機能障害(用を廃したもの)
指自体は残っているものの、動かなくなったり、感覚がなくなったりして、指としての機能が失われた場合です。
「手指の用を廃した」とは、以下のいずれかに該当する場合を指します。
- 手指の末節骨(指の先端の骨)の長さの2分の1以上を失ったもの。
- 中手指節関節(MP関節)または近位指節間関節(PIP関節)(親指は指節間関節)の可動域が、健側の2分の1以下になったもの。
- 手指の末節の指腹部(指の腹)や側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失したもの(感覚が全くない)。
| 等級 | 認定基準(抜粋) |
| 第4級6号 | 両手の指の全部の用を廃したもの |
| 第7級7号 | 1手の5の手指の用を廃したもの |
| 第8級4号 | 1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの |
| 第9級13号 | 1手の親指を含み2以上の手指の用を廃したもの |
| 第10級7号 | 1手の親指の用を廃したもの |
| 第12級10号 | 1手の人差し指、中指または薬指の用を廃したもの |
| 第13級6号 | 1手の小指の用を廃したもの |
※例えば、交通事故で指の腱を断裂し、手術をしたものの指が曲がったまま伸びなくなった場合や、逆に伸びたまま曲がらなくなった場合などが該当します。
3. 指の末節骨骨折等による神経症状
指の先端部分(末節骨)を骨折した場合などは、可動域制限の基準には満たないものの、痛みや痺れが残ることがあります。この場合は、手首と同様に12級13号または14級9号の認定を検討します。
弁護士に相談するメリット
手や指の後遺障害認定において、弁護士に相談・依頼することには、以下のような具体的かつ大きなメリットがあります。
1. 正確な可動域測定のサポート
手や指の機能障害(可動域制限)の認定において最も重要なのは、「可動域の角度」です。
認定基準は「2分の1以下」「4分の3以下」と数値で明確に決まっています。例えば、健側が180度動く場合、患側が90度なら「2分の1」で10級の可能性がありますが、95度だと12級、あるいは非該当になる可能性があります。
医師は治療の専門家ですが、後遺障害等級認定の専門家ではありません。そのため、測定方法が厳密でなかったり、補助運動(無理やり動かした場合の角度)と自動運動(自力で動かせる角度)の区別が曖昧だったりすることがあります。
弁護士は、正しい測定方法で計測されているか、診断書の数値に矛盾がないかをチェックします。
2. 適切な後遺障害診断書の作成依頼
「手指の用を廃した」という認定を受けるためには、単に「動かない」と書くだけでなく、その原因(神経断裂、関節の強直など)が医学的に記載されていなければなりません。
弁護士は、どのような検査結果(MRI、神経伝導速度検査など)を添付し、どのような所見を診断書に記載してもらうべきかについて、主治医に伝えるためのアドバイスを行います。
3. 賠償金の増額交渉(弁護士基準の適用)
後遺障害等級が認定されると、等級に応じた「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」が支払われます。しかし、相手方の保険会社は、自社の基準(任意保険基準)で算出した低い金額を提示してくるのが通常です。
【後遺障害慰謝料の比較例(10級の場合)】
- 自賠責基準: 190万円
- 任意保険基準(推定): 300万円程度
- 弁護士基準(裁判基準): 550万円
このように、弁護士が代理人として交渉し、「弁護士基準」を適用することで、慰謝料だけで数百万単位の増額が見込める場合があります。特に手や指の障害は、仕事への影響(労働能力喪失)が大きいため、逸失利益の計算においても専門的な主張・立証が金額を大きく左右します。
まとめ
交通事故による手や指の骨折は、たとえ小さな骨折であっても、繊細な機能を持つ手においては大きな障害となり得ます。
- 手首の骨折: 可動域制限の角度測定が命。TFCC損傷などの見落としにも注意。
- 指の骨折: 欠損障害と機能障害(用を廃したもの)の区分を理解する。親指は特に等級が高い。
- 等級認定: わずかな角度の差や、診断書の記載内容一つで結果が変わる。
「保険会社から提示された金額が妥当かわからない」「指が動かしにくいのに、後遺障害は無理だと言われた」といったお悩みをお持ちの方は、示談書にサインをする前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故の被害者救済に力を入れており、適正な後遺障害等級の認定と賠償金の獲得に向けて、専門チームが全力でサポートいたします。
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【骨盤骨折】交通事故による後遺障害等級の認定ポイント|仙腸関節・股関節の機能障害と痛み
はじめに
交通事故、特にバイクや自転車での事故や、歩行中に自動車にはねられた場合など、身体に強烈な衝撃が加わるケースで発生しやすいのが「骨盤骨折」です。
骨盤は、背骨(上半身)と大腿骨(下半身)をつなぐ身体の要(かなめ)となる部位であり、腸や膀胱、生殖器などの重要な臓器を保護する役割も担っています。そのため、骨盤を骨折すると、歩行が困難になるだけでなく、内臓損傷を伴う重篤な状態になることも少なくありません。
治療を経て骨が癒合(ゆごう)した後も、「股関節が動かしにくい」「長く歩くと腰やお尻が痛む」「左右で足の長さが変わってしまった」といった後遺症に悩まされる方は非常に多いです。
このような症状が残った場合、適切な「後遺障害等級」の認定を受けることで、適正な賠償金(慰謝料や逸失利益)を受け取ることができます。しかし、骨盤骨折による後遺障害は、骨の変形、関節の機能障害、神経症状、さらには妊娠・出産への影響など多岐にわたり、認定基準も複雑です。
本記事では、骨盤骨折によって残りやすい後遺障害の種類や、適正な等級認定を受けるためのポイントについて、交通事故に詳しい弁護士が解説します。
骨盤骨折に関するQ&A
まずは、骨盤骨折をされた被害者の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1:骨盤が変形して治ってしまいましたが、痛みはありません。それでも後遺障害になりますか?
はい、「骨盤骨の変形障害」として認定される可能性があります。
骨盤骨折の後遺障害には、痛みの有無に関わらず、骨そのものの形状が変わってしまったことに対する「変形障害」という区分があります。
具体的には、裸体になったときに、外部から見て変形が分かる程度のものであれば、12級5号が認定される可能性があります。ただし、レントゲン画像だけで変形が分かるものの、外見上は分からない(触っても分からない)程度の変形は、等級認定の対象外となることが多い点に注意が必要です。
Q2:骨折自体は治癒しましたが、腰とお尻のつなぎ目あたりが常に痛みます。
仙腸関節(せんちょうかんせつ)の障害による「神経症状」の可能性があります。
骨盤の後ろ側にある仙骨と腸骨をつなぐ「仙腸関節」は、強い衝撃でズレや損傷が生じやすい部位です。画像上、明らかな骨折が治っていても、仙腸関節の適合が悪くなったり、周囲の靭帯や神経が損傷したりすることで、慢性的な痛み(疼痛)が残ることがあります。
この場合、痛みの原因が医学的に証明できれば12級13号、医学的な説明がつく程度であれば14級9号が認定される可能性があります。
Q3:女性の場合、将来の出産への影響も後遺障害として認められますか?
はい、骨盤の変形により自然分娩が困難になる場合は等級認定の対象となります。
骨盤骨折の結果、産道が狭くなってしまう場合は、11級10号(胸腹部臓器の機能に障害を残すもの)として認定される可能性があります。
解説:骨盤骨折による後遺障害の認定基準
ここからは、骨盤の構造を簡単に触れた上で、具体的な後遺障害の分類と等級認定基準について詳しく解説します。
1. 骨盤の構造と骨折の種類
骨盤は、左右一対の寛骨(かんこつ)と、中央にある仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)で構成されています。さらに寛骨は、腸骨(ちょうこつ)、坐骨(ざこつ)、恥骨(ちこつ)という3つの骨が組み合わさってできています。
交通事故では、以下のような骨折が多く見られます。
- 寛骨臼(かんこつきゅう)骨折: 大腿骨頭がはまるソケット部分(股関節)の骨折。関節機能に影響が出やすい。
- 骨盤輪(こつばんりん)骨折: 骨盤のリング構造が壊れる骨折。不安定性が強く、重症化しやすい。
- 仙腸関節脱臼骨折: 仙骨と腸骨のつなぎ目が外れたり折れたりするもの。
これらの損傷部位や程度によって、認定される後遺障害の種類が異なります。
2. 骨盤骨の「変形障害」
骨折した部分が、元の形とは違う形でくっついてしまった(変形癒合した)場合です。
第12級5号:骨盤骨に著しい変形を残すもの
ここで言う「著しい変形」とは、裸体になったときに、外部から見て明らかにその変形が分かる程度のものを指します。
衣服を着ていて分からないのはもちろん、レントゲン写真では変形が確認できても、外見上分からなければこの等級は認定されません。ただし、変形によって痛みがある場合は、別途「神経症状」としての等級認定を検討します。
3. 股関節の「機能障害(可動域制限)」
骨盤骨折が股関節の一部である「寛骨臼」に及んだ場合や、長期間の固定により関節が固まってしまった場合、股関節の動く範囲(可動域)が狭くなることがあります。
第10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
股関節の可動域が、健康な側(健側)の可動域と比べて2分の1以下に制限された場合です。
第12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
股関節の可動域が、健康な側の可動域と比べて4分の3以下に制限された場合です。
※可動域の測定は、日本整形外科学会が定める厳密な測定方法に基づいて行われる必要があります。医師に測定を依頼する際は、主要運動(屈曲・伸展など)だけでなく、参考運動もしっかり測定してもらうことが重要です。
4. 神経症状(痛み・痺れ)
骨の変形や可動域制限が認定基準に達しない場合でも、患部に痛みが残っている場合は「神経症状」として等級認定を求めます。
第12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
レントゲン、CT、MRIなどの画像検査により、痛みの原因となる異常所見(骨の不整癒合や関節面の不適合など)が他覚的に証明できる場合です。
第14級9号:局部に神経症状を残すもの
画像上の明らかな異常までは指摘できなくても、事故の状況、治療経過、症状の一貫性などから、痛みの存在が医学的に説明できる場合です。
骨盤骨折では、骨折部の痛みだけでなく、仙腸関節の痛みや、骨盤内を通る神経の損傷による下肢の痺れ(坐骨神経痛など)が生じることがあります。
5. 下肢の短縮障害
骨盤骨折(特にマルゲーヌ骨折などの垂直方向の不安定性を伴う骨折)により、骨盤が上にずれたまま固まってしまうと、結果として脚の長さが短くなったのと同じ状態(見かけ上の短縮)になることがあります。
また、骨盤の傾きにより機能的な脚長差が生じることもあります。
- 第8級5号: 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
- 第10級8号: 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
- 第13級8号: 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
この場合、上前腸骨棘(骨盤の出っ張り)から内果(足首の内くるぶし)までの長さを測定し、健側と比較して判定します。
6. 生殖機能への影響(分娩困難)
女性の場合、骨盤骨折によって骨盤腔(産道となる通り道)が狭くなり、正常な分娩ができなくなることがあります。
第11級10号:胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
産道が狭窄し、帝王切開による出産を余儀なくされる場合などが該当します。これを確認するためには、骨盤計測の検査結果などが必要となります。
弁護士に相談するメリット
骨盤骨折は、単に「骨が折れた」というだけでなく、身体のバランスや歩行機能、さらには内臓機能にまで影響を及ぼす複雑な外傷です。そのため、適正な後遺障害等級を獲得するためには、専門的な知識と戦略が必要不可欠です。
1. 必要な検査の提案と「変形」の立証
骨盤の変形や仙腸関節の異常は、通常のレントゲンだけでは分かりにくいことがあります。弁護士は、3D-CT(骨を立体的に撮影する検査)などの精密検査を受けるようアドバイスを行い、視覚的に分かりやすい証拠を揃えます。
また、「変形障害」における「外見上の変形」を立証するために、患部の写真を適切な角度から撮影して提出するなどのサポートも行います。
2. 股関節の可動域測定のチェック
股関節の機能障害(可動域制限)は、測定数値がわずか数度違うだけで、等級が認定されるかどうかが変わってきます(例:10級か12級か、あるいは非該当か)。
医師であっても、後遺障害認定のための厳密な測定方法に精通していない場合があります。弁護士は、測定方法が適正か、診断書の記載に不備がないかをチェックし、必要に応じて修正を依頼します。
3. 慰謝料・逸失利益の増額交渉
骨盤骨折による後遺障害は、労働能力に大きな影響を与えます。しかし、保険会社は「デスクワークなら影響は少ないはずだ」などと主張し、逸失利益(将来の収入減少分)を低く見積もることがあります。
弁護士は、被害者の方の具体的な職業や業務内容、日常生活への支障を具体的に主張・立証し、裁判所基準(弁護士基準)に基づいた適正な賠償金の獲得を目指します。
例えば、後遺障害12級が認定された場合、保険会社の提示額(任意保険基準)と弁護士が交渉する場合の基準(裁判所基準)では、後遺障害慰謝料だけでも約200万円(12級の場合、基準額290万円に対し、提示額は100万円以下等のケースが多い)もの差が出ることがあります。
まとめ
骨盤骨折による後遺障害は、以下のポイントが重要です。
- 多岐にわたる障害: 変形、関節の動き、痛み、脚の短縮、分娩への影響など、様々な形で症状が現れます。
- 画像診断の重要性: 3D-CTなどを活用し、骨のズレや変形を正確に記録することが認定への第一歩です。
- 外見上の変形の確認: 変形障害の認定には「裸体で見て分かる」ことが要件となります。
- 専門家のサポート: 複雑な認定基準をクリアし、適正な賠償を得るためには、交通事故に強い弁護士のサポートが有効です。
「治療が終わっても痛みが引かない」「以前のように歩けなくなった」とお悩みの方は、諦めずに弁護士へご相談ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、重傷事案の解決実績が豊富にあります。適正な等級認定と賠償金の獲得に向けて、全力でサポートいたします。
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【複数部位の骨折】後遺障害等級の「併合」完全ガイド|計算ルールと実務上の注意点
はじめに
交通事故、特にバイクや自転車での転倒事故や、歩行中に自動車にはねられた場合などは、身体の一箇所だけでなく、腕と足、首と腰など、複数の部位を同時に骨折してしまうことが少なくありません。
治療を尽くしても複数の箇所に後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級はどのように決まるのでしょうか。「足の障害が12級、手の障害が12級だから、合わせて24級?」あるいは「足して6級?」といった単純な計算にはなりません。
後遺障害等級制度には、複数の障害がある場合の計算ルールとして「併合(へいごう)」という仕組みが存在します。
この併合ルールは非常に複雑で、どのルールが適用されるかによって、最終的な等級(併合等級)が変わり、受け取れる賠償金の額が数百万、数千万円単位で変動することも珍しくありません。
本記事では、複数の部位を骨折し、複数の後遺症が残った場合に適用される「併合認定」の基本的なルールから、間違いやすい「系列(けいれつ)」の考え方、実務上の注意点について、交通事故に強い弁護士が分かりやすく解説します。
併合認定に関するQ&A
まずは、複数の怪我をした場合の後遺障害等級について、よくある疑問にQ&A形式でお答えします。
Q1:右腕の骨折で12級、左足の骨折でも12級に該当する場合、最終的な等級はどうなりますか?
ルールに基づき等級が繰り上がり、「併合11級」となります。
13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1つ繰り上げる(重くする)というルールがあります。このケースでは、重い方(どちらも同じですが)の12級を1つ繰り上げて、11級と認定されます。
Q2:むちうちで14級、腰の骨折による痛みで14級が認定されました。合わせると13級になりますか?
いいえ、この場合は繰り上げられず、「併合14級」のままとなります。
最も軽い等級である14級に関しては、いくつあっても等級を繰り上げるというルールが適用されません。したがって、14級の障害が複数あっても、最終結果は14級となります。
Q3:腕の骨折で「関節の機能障害(動きが悪い)」と「変形障害(曲がってくっついた)」の両方が残りました。これも併合されますか?
原則として併合されず、上位の等級がそのまま認定されるか、あるいは別の評価方法がとられます。
同一の部位(この場合は同じ腕)に生じた障害については、併合ではなく「派生(はせい)」や「加重(かじゅう)」といった別の関係として扱われることが多く、単純な併合ルールが適用されない場合があります(詳細は後述の「系列」の項目で解説します)。
解説:後遺障害等級「併合」の基本ルール
交通事故で複数の部位に後遺障害が残った場合、それぞれの部位ごとに等級を判断した上で、「併合(へいごう)」という処理を行って最終的な等級を決定します。
併合処理には、主に「併合繰上げ(等級が重くなる)」と「併合維持(等級が変わらない)」の2つのパターンがあります。
1. 併合繰上げ(等級が重くなるケース)
認定された等級のうち、最も重い等級を基準にして、以下のルールに従って等級を繰り上げます。
① 13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 最も重い等級を「1級」繰上げる
- 【例】12級(手首の痛み) + 12級(足首の痛み)
⇒ 重い方の12級を1つ繰り上げて、「併合11級」となります。 - 【例】10級(腕の可動域制限) + 12級(骨折部の変形)
⇒ 重い方の10級を1つ繰り上げて、「併合9級」となります。
② 8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 最も重い等級を「2級」繰上げる
- 【例】8級(肘関節の用廃) + 8級(膝関節の用廃)
⇒ 重い方の8級を2つ繰り上げて、「併合6級」となります。 - 【例】6級(腕の欠損) + 8級(脚の短縮)
⇒ 重い方の6級を2つ繰り上げて、「併合4級」となります。
③ 5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合 ⇒ 最も重い等級を「3級」繰上げる
- 【例】5級(片足の全廃) + 5級(片腕の全廃)
⇒ 重い方の5級を3つ繰り上げて、「併合2級」となります。
※ただし、繰り上げの結果、等級が1級を超えることはありません。また、それぞれの障害ごとの賠償額の合計が、繰り上げ後の等級の賠償額を上回るような逆転現象が起きる場合は、調整が行われることがあります。
2. 併合維持(等級が変わらないケース)
以下のパターンの場合、等級の繰り上げは行われず、最も重い等級がそのまま最終的な等級(併合等級)となります。
14級の後遺障害が含まれる場合
14級は後遺障害の中で最も軽い等級であり、これがいくつあっても上位等級への繰り上げは行われません。
- 【例】14級(首の神経症状) + 14級(腰の神経症状)
⇒ 「併合14級」(13級にはなりません) - 【例】12級(腕の骨折後の痛み) + 14級(首の神経症状)
⇒ 「併合12級」(14級は計算上、吸収される形になります)
3. 注意が必要な「系列(けいれつ)」の概念
併合の計算をする際、最も注意しなければならないのが「系列(けいれつ)」という考え方です。
後遺障害等級表では、身体の部位や機能ごとにグループ分け(系列)がされています。
- 原則: 「異なる系列」の障害は併合する。
- 例外: 「同一系列」の障害は、併合ではなく、その部位全体として総合的に評価する(評価方法が異なる)。
同一系列とみなされる例
- 両眼の障害
右目の視力低下と左目の視力低下は、それぞれ別々に等級を出すのではなく、「両眼の視力障害」として定められた等級表(例:両眼の視力が0.1以下なら6級)を直接適用します。 - 同一上肢(腕)の障害
「右肩の機能障害(12級)」と「右手首の機能障害(12級)」は、同じ「右上肢」という系列です。この場合、単純な併合繰上げ(11級)ではなく、併合した結果が序列を乱さないか等の調整が入ることがあります。
派生関係にある場合
「骨折による変形障害(12級)」と、その変形部分が神経を圧迫して生じている「神経症状(12級)」は、通常、別々の障害とはみなされません。
「通常派生する関係」にあるため、これらは包括的に評価され、上位の等級(この場合は12級)のみが認定されます。
実例で見る併合計算シミュレーション
より理解を深めるために、よくある交通事故のケースでシミュレーションしてみましょう。
ケースA:バイク事故で右足と腰を負傷
- 障害1: 右足首の機能障害(可動域が健側の3/4以下) ⇒ 12級7号
- 障害2: 腰椎圧迫骨折による変形障害 ⇒ 11級7号
【計算結果】
- どちらも「13級以上」の障害です。
- したがって、重い方の等級(11級)を1つ繰り上げます。
結果:併合10級
ケースB:歩行中に跳ねられ、全身を打撲・骨折
- 障害1: 左大腿骨骨折後の脚の短縮(1cm以上) ⇒ 13級8号
- 障害2: むちうちによる首の痛み ⇒ 14級9号
- 障害3: 鎖骨骨折後の変形障害 ⇒ 12級5号
【計算結果】
- 3つの障害があります。
- まず、14級(障害2)は繰上げの計算に入りません。
- 次に、13級(障害1)と12級(障害3)を見ます。これらはどちらも「13級以上」です。
- したがって、最も重い等級(12級)を1つ繰り上げます。
結果:併合11級(14級は併合11級の中に含まれる形で処理されます)
ケースC:重度の後遺障害が複数残った場合
- 障害1: 右腕の全廃(用を廃したもの) ⇒ 5級6号
- 障害2: 右足の全廃(用を廃したもの) ⇒ 5級7号
【計算結果】
- どちらも「5級以上」の障害です。
- したがって、重い方の等級(5級)を3つ繰り上げます。
結果:併合2級
実務上の注意点と弁護士の役割
併合認定は自動的に正しく行われるとは限りません。被害者の方が損をしないために、実務上注意すべきポイントがあります。
1. 「併合」と「既存障害(素因減額)」の違い
今回認定された等級が「併合」によるものなのか、それとも元々持っていた障害(既存障害)を加味して調整されたものなのかを区別する必要があります。
例えば、以前の事故で14級を持っていて、今回の事故で新たに別の14級相当の怪我をした場合、結果は「併合14級」ですが、保険会社によっては「既に14級があったのだから、新たな支払いは不要」といった主張をしてくることがあります(これを「加重障害」の計算といいます)。
正しいルールが適用されているか、専門家のチェックが必要です。
2. 「みなし系列」や「派生関係」の誤った適用
保険会社側は、複数の症状を「別々の障害」として併合認定するのではなく、「一つの原因から派生した一連の症状」としてまとめて扱い、低い等級で認定してくる場合がありえます。
例えば、「骨折による痛み」と「可動域制限」を別々に評価せず、「可動域制限の中に痛みも含まれる」として、低い方の等級を無視するケースなどです。
弁護士は、それぞれの症状が独立した評価対象であることを医学的・法的に主張し、正しい併合等級の獲得を目指します。
3. 賠償額の大幅な違い
等級が1つ違うだけで、賠償額(特に後遺障害慰謝料と逸失利益)は大きく変わります。
併合のルールを適用して12級が11級になれば、弁護士基準の慰謝料だけでも290万円から420万円へと増額します。逸失利益を含めればその差はさらに広がります。
「たかが1級の違い」と思わず、適正な計算がなされているかを確認することが重要です。
まとめ
複数部位の骨折における後遺障害等級の認定は、単なる足し算ではなく、複雑な「併合ルール」に基づいて決定されます。
- 基本は「繰上げ」: 13級以上が2つなら1級アップ、8級以上なら2級アップ。
- 14級の壁: 14級はいくつあっても繰り上がらない。
- 系列の罠: 同じ部位や関連する機能の障害は、単純な併合にならないことがある。
ご自身の症状が最終的にどの等級になるのか、保険会社の提示している等級や賠償額が正しい計算に基づいているのかを判断するのは、一般の方には困難です。
複数の部位にお怪我をされた方は、適正な補償を受け取るためにも、示談をする前に一度、交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、複雑な後遺障害事案の解決実績が豊富にあります。
等級認定の申請から賠償交渉まで、トータルでサポートいたします。
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