交通事故の加害者になった場合に留意すべき3つの責任と7つのポイント

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交通事故は予測が難しく、誰もが加害者になる可能性があります。特に死亡事故の場合、行政責任、民事責任、刑事責任の三つの責任を負うことになります。以下に、それぞれの責任と弁護士に依頼するメリットについて詳しく説明します。

行政責任

交通事故により、運転免許の取り消しや停止などの行政処分を受ける可能性があります。

1 免許取消し

死亡事故を起こした場合、基本的に免許取消しの対象となります。最低でも1年間の免許欠格期間が設けられます。

2 罰点の加算

事故の内容に応じて罰点が加算され、免許停止や取消しの期間が延長されることがあります。飲酒運転やひき逃げの場合、非常に高い罰点が加算され、長期間の免許欠格期間が設けられます。

根拠条文

行政責任に関する規定は、道路交通法第90条に基づきます。

道路交通法第90条
一定の交通違反点数が累積した者に対して、運転免許の取り消し又は停止の処分を行う。

民事責任

交通事故で相手を死亡させた場合、被害者の遺族に対して損害賠償責任を負います。損害賠償には主に以下の項目が含まれます。

1 慰謝料

被害者の死亡に対する慰謝料と遺族・近親者固有の慰謝料が含まれます。慰謝料は通常2000万〜3000万円が相場です。

2 逸失利益

被害者が将来得るはずだった収入(逸失利益)を遺族に支払う必要があります。

3 葬儀費用

被害者の葬儀にかかる費用も損害賠償に含まれます。

根拠条文

民事責任に関する規定は、民法第709条ないし第711条に基づきます。

民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法第711条
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

刑事責任

1 過失運転致死罪

交通事故で相手を死亡させてしまった場合、過失運転致死罪が適用される可能性があります。これは、運転に必要な注意を怠り、人を死亡させた場合に成立する犯罪です。不注意で起こした場合でも、7年以下の懲役または禁錮、100万円以下の罰金が科される可能性があります。

根拠条文

過失運転致死罪は、自動車運転処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)第5条に基づきます。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転により、過失によって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

2 危険運転致死罪

飲酒運転や極端なスピード違反など、明らかに危険な行為で事故を起こした場合には、危険運転致死罪が適用されます。この場合、1年以上20年以下の懲役刑が科されます。罰金刑はなく、非常に重い刑罰です。

根拠条文

危険運転致死罪は、自動車運転処罰法第2条に基づきます。

自動車運転処罰法第2条
次の各号に掲げる行為を行い、その結果、人を死亡させた者は、1年以上の有期懲役に処する。 
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

3 ひき逃げ

事故後に被害者を救護せずに逃げた場合、ひき逃げとして追加の刑罰が科されます。10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

根拠条文

ひき逃げに関する規定は、道路交通法第72条および第117条に基づきます。

道路交通法第72条
自動車の運転者は、交通事故が発生した場合、直ちに車両を停止させ、負傷者を救護し、必要な措置を講じなければならない。

道路交通法第117条
道路交通法第72条に違反して、負傷者を救護せずに事故現場を離れた者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

4 準危険運転致死罪

正常な運転が困難とは言えないものの、アルコールや薬物の影響によって正常な運転に支障が生じる恐れがある状態での運転により人を死亡させた場合に適用されます。この場合、15年以下の懲役が科されます。

根拠条文

準危険運転致死罪は、自動車運転処罰法第3条に基づきます。

自動車運転処罰法第3条
酒気又は薬物の影響により、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果、人を死亡させた者は、15年以下の懲役に処する。

5 過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪

事故後にアルコールや薬物の影響が発覚するのを防ぐために、事故後にさらにアルコールを摂取したり、警察への報告を怠ったりした場合に適用されます。この場合、15年以下の懲役が科されます。

根拠条文

過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪は、自動車運転処罰法第4条に基づきます。

自動車運転処罰法第4条
アルコールや薬物の影響が発覚するのを防ぐために、事故後にアルコールや薬物を摂取したり、警察への報告を怠ったりした者は、12年以下の懲役に処する。

死亡事故加害者に科される可能性のある刑罰

1 過失運転致死罪

過失運転致死罪は、自動車運転処罰法第5条に基づき、運転中の不注意で人を死亡させた場合に適用されます。法定刑は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。この罪は、不注意であったとしても重大な結果を招いた場合に適用されるため、厳しい処罰が伴います。

2 危険運転致死罪

危険運転致死罪は、自動車運転処罰法第2条に基づき、酒気帯び運転や無謀な運転により人を死亡させた場合に適用されます。法定刑は1年以上20年以下の懲役です。この罪は、意図的に危険な運転を行った結果、重大な事故を引き起こした場合に適用されるため、非常に重い刑罰が科されます。

3 準危険運転致死罪

準危険運転致死罪は、自動車運転処罰法第3条に基づき、アルコールや薬物の影響下での運転により人を死亡させた場合に適用されます。法定刑は15年以下の懲役です。この罪は、正常な運転が困難な状態で運転を続けた結果、事故を引き起こした場合に適用されます。

4 過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪

過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪は、自動車運転処罰法第4条に基づき、事故後にアルコールや薬物の影響が発覚するのを避けるために、追加のアルコール摂取や警察への報告を遅らせる行為を行った場合に適用されます。法定刑は15年以下の懲役です。

5 ひき逃げ

ひき逃げは、道路交通法第72条および第117条に基づき、事故後に被害者を救護せずに現場を離れた場合に適用されます。法定刑は最大で15年以下の懲役又は200万円以下の罰金です。

交通死亡事故で加害者が逮捕されたあとの流れ

交通死亡事故で加害者が逮捕された場合、以下のような流れで手続きが進みます。

1 逮捕

事故直後、警察は加害者を逮捕し、身柄を拘束します。逮捕された場合、警察は被疑者として取り調べを行います。

2 検察への送致

逮捕から48時間以内に、警察は事件を検察に送致します。検察官は、警察から事件を引き継ぎ、さらに取り調べを行います。

3 勾留

検察官は、被疑者の勾留を裁判所に請求します。裁判所が勾留を認めると、被疑者は最長10日間勾留され、その後さらに10日間の延長が可能です。合計で最長20日間、勾留されることがあります。

4 起訴・不起訴の決定

検察官は、取り調べの結果に基づき、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定します。不起訴の場合、被疑者は釈放されますが、起訴された場合、正式に裁判が行われます。

5 公判

起訴された場合、裁判が行われます。公判では、検察官が証拠を提示し、被疑者の弁護人が反論します。裁判官が最終的に判決を下します。

6 判決

公判の結果、裁判官が判決を下します。判決には、無罪、罰金刑、懲役刑、禁錮刑があります。刑の重さは、事故の内容や被疑者の過去の経歴などによって決まります。

交通死亡事故で想定される量刑相場

交通死亡事故の場合、過失運転致死罪や危険運転致死罪が適用される可能性が高く、刑罰の重さも事故の内容によって大きく異なります。

過失運転致死罪の統計データ

過失運転致死罪では、一般的に以下のような刑罰が科されることが多いです。

罰金刑:少なくないケースで適用されます。特に、軽微な過失による事故の場合、罰金刑で済むことがあります。

執行猶予付き懲役刑:初犯であり、過失が軽微な場合、執行猶予付きの懲役刑が科されることが多いです。

実刑:重度の過失や再犯の場合、実刑が科されることがあります。

令和5年度版「犯罪白書」によると、令和4年における過失運転致死罪の一審判決では、以下のような結果が報告されています。

過失運転致死傷(自動車運転死傷処罰法5条及び平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項に規定する罪に限る。)事件について見ると、言渡しを受けた者のうち実刑の者の割合は、同致傷事件では1.8%(無免許過失運転致傷事件では17.7%)だったのに対し、同致死事件では3.9%(無免許過失運転致死事件では63.6%)であった。

危険運転致死罪の統計データ

危険運転致死罪では、罰金刑がなく、必ず懲役刑が科されます。過失運転致死罪に比べて刑罰が重くなります。

執行猶予付き懲役刑:適用されることは非常に少ないです。特に重大な危険運転の場合、執行猶予はほとんど期待できません。

実刑:大半のケースで実刑が科されます。懲役期間は3年以上が一般的です。

令和5年度版「犯罪白書」によると、令和4年における危険運転致死罪の第一審判決では、以下のような結果が報告されています。

危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条及び3条並びに平成25年法律第86号による改正前の刑法208条の2に規定する罪に限る。)事件について見ると、言渡しを受けた者のうち実刑の者の割合は、同致傷事件では9.6%(無免許危険運転致傷(自動車運転死傷処罰法6条1項及び2項に規定する罪)事件では52.6%)だったのに対し、同致死事件では100%であった。同致死事件では、言渡しを受けた者21人のうち19人の刑は5年を超えている。

弁護士に依頼するメリット

1 早期対応

事故直後の対応が非常に重要です。弁護士に依頼することで、現場での対応や警察・保険会社とのやり取りをスムーズに進めることができます。事故現場での対応や警察への報告、二次災害の防止策など、適切な行動を取るためのアドバイスを受けることができます。

2 刑事手続のサポート

逮捕や勾留された場合、弁護士は早期の釈放に向けて活動してくれます。また、起訴されないようにするための対応や、刑を軽減するための弁護活動を行います。弁護士は、警察の取り調べや検察官の起訴決定に対して、適切な対応を取ることができます。

3 民事責任における示談交渉のサポート

被害者の遺族との示談交渉を弁護士が代行します。示談が成立すれば、刑事処分が軽減される可能性があります。弁護士は、被害者とのコミュニケーションを円滑に進め、適切な賠償額を提示することで、示談成立の可能性を高めます。

4 法的アドバイス

事故後の対応や法的手続きについてのアドバイスを受けることで、適切な判断を下すことができます。特に、過失割合や保険金請求に関する問題についても適切に対処できます。弁護士は、法律の専門知識を活用し、あなたの権利を守るための最善の策を提案します。

5 メンタルサポート

交通事故の加害者としての精神的な負担を軽減するためにも、弁護士のサポートは有益です。法的な手続きに関する不安や疑問を解消し、安心して対処することができます。弁護士は、あなたの気持ちに寄り添い、精神的なサポートを提供することで、事故後のストレスを軽減します。

まとめ

交通事故の加害者となった場合、刑事、民事、行政の三つの責任を負うことになりますが、適切な対応をすることでその影響を最小限に抑えることが可能です。特に、弁護士に依頼することで、法的手続きのサポートや示談交渉など、様々なメリットを享受することができます。事故後は迅速に弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故に関するご相談を随時受け付けております。事故後の対応にお困りの方は、ぜひご相談ください。


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