Q&A
Q: 「水晶体亜脱臼」とはどのような障害なのでしょうか?
水晶体亜脱臼は、目の中でレンズの役割を果たす「水晶体」が正常な位置からわずかにずれてしまう状態です。カメラでいえばレンズが少しずれた状態で、ピントが合わせにくくなることがあります。
Q: なぜ交通事故が原因で水晶体亜脱臼が起こるのですか?
交通事故の衝撃で、毛様体と水晶体を結び支える「チン小帯」が損傷することがあります。この損傷によって水晶体が安定を失い、その結果として水晶体亜脱臼や、場合によっては完全な脱臼が起こる可能性があります。
Q: 後から白内障になる可能性もあると聞きましたが、本当ですか?
はい、事故直後は異常が見られなくても、数年後に「遅発性外傷性白内障」として症状が出ることがあります。そのため、示談手続きや後遺障害申請には、将来的なリスクも視野に入れた慎重な対応が不可欠です。
Q: 弁護士に依頼する必要はありますか?
専門的な知識を有する弁護士に依頼することで、示談書の作成から後遺障害等級の認定までスムーズかつ有利な展開を図ることができます。「弁護士法人長瀬総合法律事務所」では、このような交通事故被害者の方をサポートしています。
水晶体亜脱臼とは何か
水晶体亜脱臼(すいしょうたいあだっきゅう)とは、目の中でレンズの働きをする水晶体が、本来あるべき位置からわずかにずれてしまった状態です。水晶体は、毛様体筋とチン小帯によって固定され、その厚みを変えることでピント合わせを行います。交通事故などの外傷でチン小帯が部分的に切れたり弱まったりすると、水晶体は完全には脱臼せずとも、正常位置から微妙にズレた「亜脱臼」の状態になることがあります。
「脱臼」と「亜脱臼」の違い
「水晶体脱臼」は、水晶体が本来の位置から完全に外れてしまった状態を指します。一方、「水晶体亜脱臼」はその手前の段階で、水晶体が少しだけずれている状態です。
- 脱臼(完全脱臼)
水晶体が支点を失い、明らかに正常な位置を外れる状態 - 亜脱臼
一部のチン小帯は残っているため、水晶体がわずかにずれるものの、完全には外れない状態
交通事故で強い衝撃が加わりチン小帯が大きく損傷すると完全脱臼し、軽度の損傷では亜脱臼にとどまることが多いのです。
水晶体の仕組みと調節作用
水晶体は、近くを見るときに厚くなり、遠くを見るときに薄くなる調節作用を持っています。この調節は毛様体筋とチン小帯のバランスで行われ、近くを見る際には毛様体筋が収縮してチン小帯が緩み、水晶体が厚く膨らみます。逆に遠くを見るときは毛様体筋が緩み、チン小帯が張ることで水晶体が薄くなり、遠方にピントを合わせます。
この精緻なバランスが崩れると、正常な視力調整が困難になり、視界がぼやけたり、乱視や複視の原因となります。
チン小帯の役割と損傷リスク
チン小帯(しょうたい)は、毛様体と水晶体をつなぐ細い繊維状組織で、水晶体を支え、視線の距離に合わせて厚みを変える役割があります。交通事故などで外傷を受け、眼球を激しく揺さぶられると、このチン小帯が切れたり伸びたりすることがあります。わずかな損傷でも水晶体の位置を不安定にし、亜脱臼を引き起こします。
水晶体亜脱臼が引き起こす症状
水晶体亜脱臼は、損傷の度合いによって視力への影響が異なります。
- 軽度の亜脱臼
視力低下がほぼ見られない場合もあり、本人が気づかないケースもあります。 - 重度の亜脱臼
チン小帯の大半が損傷すると、水晶体の位置が不安定になり、近視化、乱視、さらには物が二重に見える複視(ふくし)などの深刻な視覚障害が生じることがあります。
複視は頭痛やめまいを引き起こし、日常生活や仕事に支障を来すほど視界が不安定になることもあります。
診断方法:確定診断までのプロセス
水晶体亜脱臼を疑う場合、眼科ではまず散瞳薬によって瞳孔を開き、細隙燈顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)で水晶体の位置を詳しく観察します。水晶体がずれている様子が確認できれば亜脱臼の確定診断となります。
その後、眼底鏡検査や、合併症(緑内障・ぶどう膜炎など)の有無を調べるために超音波、レントゲン(XP)、CTスキャンなどを行うこともあります。
治療法:軽症から重症例まで
軽度の亜脱臼の場合、特に手術を必要としないケースもあります。視力低下が顕著でない場合は、経過観察や眼鏡・コンタクトレンズでの矯正を検討します。
一方、重症例では水晶体が不安定な状態で、著しい視力障害や合併症(ぶどう膜炎、緑内障)がある場合、手術による水晶体の摘出が行われることがあります。摘出後、視界はぼやけますが、眼鏡やコンタクト、さらには人工水晶体(眼内レンズ)を挿入することで、ある程度の視力回復が期待できます。
後遺障害の可能性と等級区分(複視の問題)
交通事故由来の水晶体亜脱臼では、後遺症として「複視」が代表的な症状となり得ます。
- 正面視での複視
正面を見たときに像が二重に見える。これにより深刻な頭痛やめまいが生じ、日常生活への影響が大きく、後遺障害等級は10級2号となります。 - 左右・上下視での複視
視線を左右や上下に動かしたときのみ二重に見えるため、正面視ほど大きな不具合はありませんが、軽度の眼精疲労や頭痛の原因になります。後遺障害等級は13級2号となります。
複視の判定には、ヘスコオルジメーター(ヘススクリーンテスト)による検査が行われ、これにより客観的な診断が可能になります。
示談手続きの際の注意点と「遅発性外傷性白内障」
水晶体亜脱臼を発症した場合、注意すべき点として、後から「外傷性白内障」を発症するリスクがあります。事故直後は症状がなくても、数年以上経ってから白内障が進行することがあります。これを「遅発性外傷性白内障」と呼びます。
示談手続きでは、将来発症する可能性を考慮した文言を示談書に盛り込むことが重要です。たとえば、「示談締結後に後遺障害が認定された場合は、別途協議を行う」といった条項を定めておくことで、後年になってからの交渉が容易になります。万が一、記載がなくても再交渉は不可能ではありませんが、立証が難しく手続きは複雑化します。
これらの点を踏まえると、示談手続きは慎重に進める必要があります。法律の専門家に相談し、将来的なリスクを考慮した示談書を作成することが、後々のトラブル回避に有効です。
弁護士に相談するメリット
交通事故により水晶体亜脱臼などの複雑な後遺症が生じた場合、弁護士に相談することで得られるメリットは多岐にわたります。
- 専門的な知識に基づく適切な示談交渉
弁護士は、法律や判例に精通しており、複雑な後遺障害に関する論点を整理し、被害者に有利な示談案を提示できます。 - 将来リスクを見越した示談書作成
遅発性外傷性白内障など、将来的に発症する可能性のあるリスクを踏まえた示談書の文言作成は専門家でなければ難しいものです。弁護士に依頼することで、長期的な視点を盛り込んだ合意書が成立しやすくなります。 - 後遺障害等級認定への的確なサポート
複視などの後遺障害認定には、医学的所見や検査結果を適切に書類化し、因果関係を明確に示す必要があります。弁護士は医師に伝えるべきポイントや後遺障害診断書の記載事項についてアドバイスし、申請を有利に進めます。 - 精神的な負担軽減
示談交渉や証拠集めは被害者本人にとって精神的な負担となります。弁護士が窓口となることで、負担を軽減し、安心して治療や日常生活に専念できるようになります。
水晶体亜脱臼をはじめとする眼の後遺障害は、医学的知見と法律的視点の両輪で対応する必要があります。「弁護士法人長瀬総合法律事務所」では、交通事故に精通した弁護士が、依頼者の症状や事情に応じてオーダーメイドの示談書作成をサポートします。特に後遅発性外傷性白内障を視野に入れた示談や、因果関係の立証、後遺障害等級認定の申請など、実務上困難な手続きをスムーズに行うノウハウを有しています。
初回相談は無料ですので、今後の見通しや対策の立案を行うためにも、ぜひ専門家への相談をご検討ください。
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