はじめに
交通事故の損害賠償請求には「時効」が存在することをご存知でしょうか。どんなに重大な事故であっても、時効が成立してしまうと、加害者に賠償請求する法的権利を失ってしまう可能性があります。治療や示談交渉に時間がかかりすぎると、知らないうちに時効が近づいているケースもあるため、注意が必要です。
本記事では、交通事故における損害賠償請求の時効期間や、その起算点(いつからカウントが始まるのか)、さらに時効を止めたりリセットしたりする方法としての「時効援用・時効更新」について基礎的な解説を行います。万が一、相手保険会社との話し合いが長期化している場合は、時効リスクを意識して行動しましょう。
Q&A
Q1:交通事故の損害賠償請求にはどのような時効期間がありますか?
大きく分けると、民法上の不法行為による損害賠償請求権の時効期間(3年または5年)と、自賠法上の被害者請求権の時効期間(3年)があります。なお、2020年4月の民法改正によって時効期間の取り扱いが変わっています。
Q2:時効の起算点はいつになりますか?
一般的には、損害および加害者を知ったとき(事故日または後遺障害が確定した日など)が起算点とされます。後遺障害がある場合は症状固定時からカウントされます。
Q3:示談交渉中でも時効が進行するのですか?
はい。示談交渉中であっても時効のカウントは止まりません。ただし、時効を更新(リセット)する方法はいくつかありますので、期限が迫っている場合は対応策を講じる必要があります。
Q4:時効が完成するとどうなるのですか?
加害者(または保険会社)が「時効援用」の意思を示せば、被害者は賠償請求を法的に認められなくなります。いくら正当な事故被害であっても、時効を過ぎてしまうと請求できなくなるリスクがあります。
Q5:時効を更新する方法には何がありますか?
代表的なものとして「裁判上の請求(訴訟提起)」「支払い督促」「差押え」「和解契約書の締結」などがあります。訴訟を起こすなど法的手続きを取ると、時効がリセットされる形となります。
Q6:時効間近でも弁護士に依頼したら間に合うのでしょうか?
場合によりますが、弁護士がすぐに訴訟の準備や時効更新の手続きを行えば間に合う可能性はあります。ただし、時効期間満了間近では不備が生じる危険も高いため、できるだけお早めに弁護士に相談することが望ましいといえます。
解説
交通事故の時効期間
民法上の不法行為による損害賠償請求権
2020年4月の民法改正により、以下のように整理されました。
- 損害および加害者を知った時から3年
- 不法行為の時から5年
いずれか早いほうが経過した時点で時効が完成するという扱いが一般的です。
自賠法上の被害者請求
自賠法による保険金請求権の時効期間は3年です。時効の起算点は保険金請求権が発生した時(通常は事故日または症状固定日)です。
起算点の考え方
損害および加害者を知ったとき
通常の人身事故の場合、事故日または症状が顕在化した日を基準と考えます。後遺障害等級が確定した時点を起算点とする裁判例もあるため、個々の事案で変わる可能性があります。
後遺障害がある場合
後遺障害が残る場合は、症状固定日を起算点と見る場合が多いといえます。つまり、後遺障害が確定して初めて「本当の損害」が確定すると判断されることがあるためです。
時効更新の手段
- 裁判上の請求(訴訟提起)
訴状を裁判所に提出し受理されれば、その時点で時効が更新し、新たに時効期間がスタートします。 - 支払い督促
簡易裁判所に支払い督促を申し立てることでも時効更新が可能です。 - 強制執行(差押えなど)
一度得た判決や和解調書に基づき、強制執行を行えば、それも時効更新事由となります。 - 裁判外の和解契約書
通常の示談書よりもしっかりとした法的要件を備えた和解契約書を締結することで、時効をリセットできる場合があります。
弁護士に相談するメリット
時効管理のアドバイス
被害者自身が時効を意識しながら示談交渉を行うのは難しい場合が少なくありません。弁護士は案件を受任すると、時効管理も含めてスケジュールを立て、時効が迫っている場合には訴訟や他の更新手続きの準備を迅速に行います。
適正な請求額の算定
示談交渉が長引く背景には、保険会社との合意額に大きな隔たりがあることが挙げられます。弁護士なら裁判所基準で正確に損害を算定しつつ、時効が成立しないよう並行して対応できます。
裁判対応
時効間際に訴訟を提起する場合、準備書面や証拠の整理が急を要します。弁護士なら法律的知識と経験を活かしてスピーディーに対応が可能です。
保険会社との粘り強い交渉
保険会社が「時効がもうすぐだから早く示談しましょう」と迫ってくるケースもあります。弁護士が入ることで、いたずらに焦らされず適正な交渉を続けられるメリットがあります。
他の法律問題への対応
重度の後遺障害が残る場合、被害者本人や家族の生活設計に関する法的問題が派生することもあります。相続や成年後見制度など、弁護士に相談すれば総合的な視点からサポートを受けられます。
まとめ
交通事故の損害賠償請求には時効があり、これを知らずに放置すると加害者に対して合法的に請求する権利を失いかねません。示談交渉が長期化したり、後遺障害の認定に時間がかかったりすると、いつの間にか時効が近づいているケースも考えられます。
- 時効期間
3年・5年(民法改正後の扱いに注意) - 起算点
事故日や症状固定日など個別事情で変動 - 時効更新方法
裁判手続き、支払い督促、和解契約など
もしも保険会社と示談がまとまらず、時効が心配になった場合は、早めに弁護士へ相談するのが得策です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、時効リスクを含めた総合的な視点で示談交渉や裁判をサポートし、被害者が正当な補償を受けられるよう最善を尽くします。
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