はじめに
交通事故の示談交渉では、保険会社が示談金の「総額」だけを提示してくるケースが多いです。しかし、その総額がどのように計算されているのか、内訳が曖昧なままサインしてしまうと、本来受け取れるはずの損害項目がカバーされていない可能性があります。
示談金の主な内訳としては「治療費」「通院交通費」「休業損害」「慰謝料」「後遺障害がある場合は逸失利益や後遺障害慰謝料」が挙げられます。本稿では、保険会社が提示してくる金額の中身をきちんと理解し、不足や漏れがないか確認するためのポイントを整理します。
Q&A
Q1:保険会社から「これが総額〇〇万円です」と言われました。内訳を聞いてもいいのでしょうか?
もちろんです。示談金の内訳は被害者が正当な賠償を受けるうえで極めて重要な情報です。遠慮なく確認し、不明点があれば説明を求めましょう。
Q2:治療費は最終的にどうやって確定するのですか?
症状固定または治癒するまでの治療費が対象となります。保険会社は、医療機関から送られてくる診療報酬明細書などをもとに精算します。治療期間が長引いたり、保険会社が治療費の打ち切りを通告してくる場合は争いになることがあります。
Q3:休業損害とは何ですか?
事故によるケガや治療のために仕事を休んだことで、得られるはずだった収入が減少またはゼロになった分の補償です。会社員であれば給与明細や会社の証明書、自営業なら確定申告書などで収入を証明します。
Q4:慰謝料と損害賠償は別物ですか?
慰謝料も損害賠償の一部ではありますが、精神的苦痛に対する補償という点で治療費や休業損害とは性質が異なります。大きく分けて「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」が存在します。
Q5:後遺障害が認定されると、どんな損害項目が増えるのですか?
後遺障害慰謝料と「逸失利益」が追加されます。逸失利益とは、後遺障害によって将来の収入が減少する分を補償するものです。後遺障害等級の違いで金額が大きく変わります。
Q6:保険会社が計算根拠を明示してくれない場合はどうすれば?
弁護士に相談し、裁判所基準や法的な算定方法をもとに再計算するのが有効です。明確な根拠なしに提示された金額を鵜呑みにするのは危険です。
解説
示談金を構成する主な項目
- 治療費
- 入院費、手術費、投薬費、リハビリ費用など
- 症状固定までの合理的な範囲の治療費が対象となる
- 通院交通費
- 公共交通機関やタクシー、自家用車での通院時のガソリン代・駐車場代など
- 治療のために必要な範囲で認められる
- 休業損害
- 事故のケガで仕事を休んだ期間の補償
- 会社員なら給与明細や有給取得状況、自営業なら確定申告書などで算出
- 入通院慰謝料
- 治療・通院によって被った精神的苦痛を補償
- 治療日数や通院頻度に応じて計算
- 後遺障害慰謝料(後遺障害が認定された場合)
- 後遺障害の等級に応じた定額または裁判所基準による相場
- 逸失利益(後遺障害が認定された場合)
- 後遺障害によって将来の収入が減る分を年収や労働能力喪失率などで計算
保険会社提示額と裁判所基準の違い
保険会社の任意保険基準
多くの場合、保険会社は独自の内規や経験則(任意保険基準)で慰謝料などを算定します。裁判所基準よりも低い額になる傾向があり、被害者がそのまま受け取ってしまうと適正な補償に届かないケースが少なくありません。
裁判所基準(弁護士基準)
過去の裁判例や判例集(赤い本・青い本など)を参考に算定されるのが裁判所基準です。任意保険基準より高額になるケースが多く、弁護士に依頼すればこの基準を主張できます。
項目ごとのチェックポイント
- 治療費
- 治療期間に無駄や中断がないか
- 保険会社の治療費打ち切り通告が妥当かどうか
- 休業損害
- 有給を使用した場合でも休業損害が認められる場合がある
- パート・アルバイト・自営業など勤務形態ごとに計算が異なる
- 入通院慰謝料
- 通院日数だけではなく、通院頻度や治療実績が参考にされる
- 後遺障害慰謝料・逸失利益
- 後遺障害等級が適正に認定されているかが最大のポイント
- 等級が1つ違うだけで金額が数十万円から数百万円単位で変わることも
弁護士に相談するメリット
正確な損害額の算定
弁護士は裁判所基準を熟知しており、治療費・休業損害・慰謝料・逸失利益などを総合的に計算します。保険会社から提示された金額が妥当かどうかを比較検討できるため、増額交渉の根拠を得やすいです。
後遺障害認定のサポート
後遺障害等級の認定が適切に行われないと、逸失利益や後遺障害慰謝料が大きく減額されてしまいます。弁護士なら医療知識や専門医との連携を活かして認定作業をサポートします。
書類作成・交渉代行
損害項目を漏れなく請求するためには、多くの書類整理や計算が必要になります。弁護士が書類を整え、保険会社との交渉を代理することで、被害者の負担を軽減できます。
交渉決裂時の訴訟対応
示談が決裂しても、弁護士がいる場合はすぐに訴訟手続きを進めることができます。裁判所基準での判断を仰ぐことで、より公平な結果を得られる可能性が高まります。
弁護士費用特約の活用
弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用を保険会社が負担するため、自分の財布を痛めずに専門家のサポートを得られます。
まとめ
保険会社から示談金の総額を提示された際、その内訳をしっかり確認することは、適正な賠償を得るために欠かせません。次のポイントを押さえましょう。
- 主な損害項目をすべてカバーしているか
- 後遺障害があるなら、認定等級に基づく逸失利益や後遺障害慰謝料が加算されているか
- 任意保険基準ではなく、裁判所基準での金額を比較検討
- 保険会社に疑問点を質問し、説明を求める
万が一、金額や根拠に納得がいかなければ、早めに弁護士へ相談し、裁判所基準をベースに交渉することをおすすめします。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、被害者が見落としがちな項目も含めて丁寧に損害額を算定し、必要に応じて増額交渉や裁判手続きまで対応いたします。
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