はじめに
交通事故の示談交渉において、被害者が最も関心を持つのは「示談金をどこまで引き上げられるか」という点です。保険会社は営利企業として支出を抑えたい思惑があり、最初に提示してくる金額は必ずしも裁判所基準に即したものではありません。
しかし、ただ「もっとお金を増やしてほしい」と感情的に訴えるだけでは、保険会社を動かすことは難しいでしょう。示談金を増額するためには、客観的な根拠と交渉テクニックが欠かせません。本稿では、示談金の増額を狙ううえでの具体的な方策や、医証(医療証拠)の重要性、交渉時の注意点などを解説します。
Q&A
Q1:示談金の増額を求めるために、まず何をすればよいでしょうか?
事故の状況や損害の程度を示す「証拠」を整理し、医師の診断書や意見書など「医証」を充実させることが最優先です。また、過失割合の見直しなども重要な交渉材料になります。
Q2:保険会社が最初に提示してくる示談金額は、交渉しても上がらないこともあるのでしょうか?
交渉材料や証拠が乏しいと、保険会社が提示額を一切上げない場合もあります。しかし、裁判所基準との差が大きい場合や後遺障害が認定される場合など、根拠を示して粘り強く主張すれば増額が期待できることも少なくありません。
Q3:医師に「意見書」を書いてもらうメリットは何ですか?
診断書よりも踏み込んだ形で、後遺障害の症状や治療の必要性などを詳述してもらえるため、保険会社との交渉に有利な客観的資料となります。
Q4:裁判所基準で計算してもらいたいときは、被害者自身で主張できるのでしょうか?
可能ではありますが、法的知識や判例研究が必要です。被害者自身が交渉するにはハードルが高いため、弁護士に依頼する方がスムーズに進む傾向があります。
Q5:示談金交渉の際、保険会社からの電話やメールは全部記録したほうがいいですか?
はい。日時や担当者名、やりとりの内容をメモしておきましょう。トラブルが発生したときの証拠になりますし、自分自身の交渉方針を整理するうえでも役立ちます。
Q6:過失割合の交渉も示談金増額に繋がりますか?
大いに繋がります。被害者の過失が1割減るだけで、最終的に受け取れる金額が大きく増える場合があります。ドライブレコーダーや目撃証言などを駆使して交渉する価値は十分あります。
解説
増額交渉の基本戦略
- 損害額の根拠を客観的に示す
診療報酬明細書、領収書、通院日数、休業損害の証明など、数字を根拠として提示する。 - 医証(医師の診断書・意見書)を整備
後遺障害の認定を受ける場合や治療の必要性を主張する場合、専門医の意見書や検査結果を収集しておく。 - 裁判所基準と比較する
保険会社の任意保険基準と裁判所基準の差を具体的に示し、増額を求める。 - 過失割合の再検討
被害者の過失が適正かどうか、実況見分調書やドライブレコーダー映像を精査して主張する。
医証の活用ポイント
後遺障害認定における医証
- 後遺障害診断書:医師が後遺症の部位・症状・程度を記載。
- MRI・レントゲンなどの画像資料:痛みやしびれを裏付ける客観的証拠。
- 専門医の意見書:どのようなリハビリが必要か、日常生活にどの程度支障があるかなどを詳細に記載。
逸失利益の主張にも重要
後遺障害が残る場合、将来の労働能力低下による逸失利益を請求できます。医証が充実していれば、その労働能力喪失率や喪失期間を高めに認定してもらいやすいです。
交渉時の具体的テクニック
- 「最初の提示額」はあくまでスタートライン
保険会社は、まず低めの金額を提示してくることが多い。その数字に即答せず、根拠を尋ね、納得のいく理由がない場合は増額を求める。 - 「裁判も辞さない」姿勢を示す
必要に応じて訴訟の可能性をほのめかすことで、保険会社が譲歩する場合がある。ただし、実際に裁判に踏み切る意志と準備が必要。 - 「段階的な説明」で相手を説得
いきなり大幅な増額を要求するのではなく、「後遺障害等級が認められればこれだけ増える」「過失割合が5%変わるだけでこれだけ変動する」といった根拠を段階的に示す。 - 「交渉履歴」を残す
電話や口頭だけでなく、メールや文書の形でやり取りを記録。主張内容のブレを防ぎ、後日のトラブルも回避しやすい。
弁護士に相談するメリット
裁判所基準を主張できる
弁護士が示談交渉に加わることで、保険会社は裁判所基準を意識した金額を提示せざるを得なくなります。結果的に示談金が大幅に増額するケースも多いです。
医証の取得・充実化
弁護士は医療ネットワークを活用し、専門医に意見書の作成を依頼するなどして、後遺障害認定や治療継続の必要性を裏付ける資料を充実させます。
過失割合の修正
弁護士が警察の実況見分調書やドライブレコーダー映像、各種証拠を分析し、過去の判例に照らし合わせて過失割合の修正を主張すれば、被害者の負担を軽減できる可能性があります。
交渉のストレス軽減
保険会社とのやり取りをすべて弁護士が代行するため、被害者は精神的負担から解放され、治療や生活再建に集中できます。
弁護士費用特約の利用
保険契約に弁護士費用特約が付帯していれば、弁護士費用を保険会社が負担するため、実質自己負担なく専門家の力を活用できる場合があります。
まとめ
示談金を増額させるためには「交渉材料の整理」「医証の充実」「過失割合の見直し」「裁判所基準の理解」がカギとなります。以下のポイントを押さえましょう。
- 根拠を明確にする:感情論ではなく、数字や医師の意見など客観的な資料を揃える
- 裁判所基準を意識する:任意保険基準との差を具体的に提示する
- 過失割合にも注目:わずかな修正で数十万円~数百万円の差が出る可能性あり
- 医師との連携を密に:後遺障害認定や治療継続を裏付ける医証が示談金アップに大きく影響
- 弁護士の活用:特に後遺障害が絡むケースでは、専門家のサポートが増額に繋がる可能性が高い
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故被害者の示談交渉を多数手がけており、裁判所基準を踏まえた適正額の確保に注力しています。示談金の提示額に納得がいかない方は、ぜひ一度ご相談ください。
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