はじめに
交通事故で後遺障害等級が認定されると、示談交渉における賠償額(特に慰謝料や逸失利益)が大きく変わります。一般的に、重い等級ほど慰謝料が高額になり、長期間の就労制限や介護費用などが認められる可能性も高くなるからです。
実際、「後遺障害が認められた」かどうかが、保険会社との示談交渉や裁判での賠償金に非常に大きな差をもたらします。しかし、被害者の方からよく聞かれるのが、「認定された等級ごとに、どれくらい慰謝料の金額が違うのか?」「示談交渉で保険会社から提示される金額が妥当なのかどうか分からない」といった悩みです。
本稿では、後遺障害等級の認定が示談交渉に与える影響や、等級ごとの慰謝料相場(裁判所基準をベース)について解説します。自分の等級が示談金にどれほど影響するのか、理解を深めていただければ幸いです。
Q&A
Q1:後遺障害等級が認定されると、示談金はどのように変わるのですか?
後遺障害慰謝料や、労働能力喪失率に基づく「逸失利益」が加算されるため、大幅に増額する可能性があります。たとえば、14級が認められるだけでも、認められない場合に比べて数十万円以上の違いが出ることが多いです。
Q2:等級が高い(数字が小さい)ほど、慰謝料の相場も跳ね上がるのですか?
はい。1級や2級のように重度の後遺障害ほど、慰謝料は高額になります。後遺障害慰謝料の「裁判所基準」では、1級で2,800万円前後、2級で2,370万円前後が相場とされることもあります(あくまで目安)。
Q3:示談交渉の際、保険会社は裁判所基準より低い金額を提示してくると聞きましたが、本当でしょうか?
多くの場合、保険会社は「任意保険基準」を用いて提案し、裁判所基準に比べて低額に設定される傾向があります。弁護士が介入すると、裁判所基準を主張し、増額が見込めるケースが多いです。
Q4:後遺障害が認定されても、痛みが残るなどの追加分はさらに請求できるのでしょうか?
後遺障害慰謝料は「症状固定後に残存した痛み・障害」をまとめて評価したものです。示談書にサインすると、基本的には追加請求が難しくなるため、症状固定前にしっかり診断書を整え、認定等級を適正にしてもらうことが大切です。
Q5:後遺障害の認定結果に納得がいかない場合、示談交渉はどう進めればいいですか?
異議申立などの手続きを踏んで、適切な等級を再度目指すことを検討します。妥当な等級が獲得できてから示談交渉を本格化させる方が、最終的に受け取れる金額が大きくなるケースが多いです。
Q6:示談交渉が長引きそうで不安です。早く終わらせたい場合はどうすれば?
妥協して低い金額で合意すれば早期解決は可能ですが、後遺障害がある場合は慎重に考えるべきです。弁護士に依頼すれば、保険会社との交渉方針を整理し、適正な時期に症状固定や異議申立を行うなど、スムーズな道筋を立てられる可能性があります。
解説
後遺障害等級ごとの慰謝料相場(裁判所基準の一例)
以下は、おおまかな目安(あくまで目安)となる金額です。実際には個別事情や判例によって増減があります。
- 1級:後遺障害慰謝料 約2,800万円前後
- 2級:後遺障害慰謝料 約2,370万円前後
- 3級:後遺障害慰謝料 約1,990万円前後
- 4級:後遺障害慰謝料 約1,670万円前後
- 5級:後遺障害慰謝料 約1,400万円前後
- 6級:後遺障害慰謝料 約1,180万円前後
- 7級:後遺障害慰謝料 約1,000万円前後
- 8級:後遺障害慰謝料 約830万円前後
- 9級:後遺障害慰謝料 約690万円前後
- 10級:後遺障害慰謝料 約550万円前後
- 11級:後遺障害慰謝料 約420万円前後
- 12級:後遺障害慰謝料 約290万円前後
- 13級:後遺障害慰謝料 約180万円前後
- 14級:後遺障害慰謝料 約110万円前後
上記金額は、裁判実務や「赤い本」「青い本」などの資料から導かれる概算。実際の裁判例では、これより高くなったり低くなったりする場合があります。
労働能力喪失率と逸失利益
労働能力喪失率
等級に応じて「何%仕事ができなくなるか」を示す指標。たとえば、14級は5%、12級は14%、10級は27%などが目安とされる。
逸失利益
- 後遺障害によって減少する将来の収入を補填するもの。
- 「基礎収入×喪失率×就労可能年数×ライプニッツ係数」で計算するケースが一般的。
示談交渉への具体的影響
- 後遺障害等級が不認定 vs 14級
14級が認定された場合でも、「後遺障害慰謝料+逸失利益」が得られ、数十万円~数百万円の差が生じることが多い。 - 14級 vs 12級以上
等級が2ランク上がるだけで、慰謝料も100万円以上変わり、労働能力喪失率も14%と5%では約3倍近く差が出る。 - 9級・10級以上での大幅な金額差
10級で27%の労働能力喪失率、9級で35%とさらに高くなるため、逸失利益は大幅に増額する。 - 重度後遺障害(1級~4級)
常時介護・随時介護を要するレベルの場合、将来介護費用や住宅改造費などの特別損害も請求の対象となり、示談金が数千万円規模となる可能性がある。
弁護士に相談するメリット
- 適切な等級認定を後押し
後遺障害診断書のチェックや専門医への紹介、異議申立手続きのサポートなど、弁護士が入ることで適正な等級認定を得やすくなる。 - 裁判所基準での交渉
保険会社が提示する任意保険基準ではなく、裁判所基準を主張し、慰謝料や逸失利益を適正水準に近づける。 - 過失割合や併合等級など複雑な争点への対応
被害者に有利な主張を展開し、示談交渉を効果的に進められる。 - ストレス軽減
交渉窓口を弁護士に一本化することで、被害者自身の負担とストレスが大きく減る。 - 弁護士費用特約の活用
任意保険の弁護士費用特約があれば、費用負担を気にせず早期に相談・依頼できる。
まとめ
後遺障害等級が認定されるかどうか、そして認定された等級がどのランクかによって、示談交渉で得られる慰謝料や逸失利益は大きく変動します。低い等級で認定される、あるいは認定自体が見送られてしまうと、その後の交渉で大幅に不利になる可能性があるため、「適切な等級を確保するための準備」が極めて重要です。
- 等級が上がるだけで、慰謝料や逸失利益が大幅に増額
- 保険会社の提示する任意保険基準と、裁判所基準の差にも注意
- 適正な後遺障害認定と示談交渉をセットで考える
もし示談交渉の途中で「本当にこの金額が妥当か分からない」「保険会社の言い分に納得がいかない」という状態に陥ったら、弁護士への相談を検討しましょう。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、後遺障害等級認定のサポートから交渉・訴訟対応までを一貫してフォローし、被害者が正当な賠償を受けられるよう尽力します。
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