はじめに
交通事故の後遺障害等級は、被害者にとって示談交渉や裁判における賠償金額を大きく左右する重要な要素です。しかし、いざ認定結果を受け取ってみたら、「思っていたよりも低い等級」「不認定となってしまった」ということも少なくありません。
「自覚症状はあるのに、証拠不十分で認められなかった」「検査や診断書が不十分だったのでは?」など、疑問を持つ被害者も多いでしょう。そんなときに利用できるのが、「後遺障害等級の異議申立手続き」です。追加の医証や検査結果を提出し、再度適正な等級を求めることができます。
本稿では、後遺障害認定の異議申立手続きの流れやポイント、成功のために押さえておきたい注意点などをわかりやすく解説します。認定結果に納得できない場合は、適切な対策を講じることで再認定の可能性を探ることが重要です。
Q&A
Q1:異議申立は誰がどのように行うのですか?
後遺障害等級の認定結果に不服がある被害者(あるいはその代理人)が、損害保険料率算出機構などの審査機関に対して「追加資料」を添えて再審査を求める手続きを行います。手続き自体は保険会社を通じて行うことが多いですが、被害者自身が直接申し立てる方法もあります。
Q2:異議申立をすれば、必ず等級が上がるわけではないのですか?
必ず等級が上がるという保証はありません。追加書類を提出しても、内容が認定結果を覆すほどの医学的根拠に乏しい場合は、再度同じ結論になることも少なくありません。
Q3:どのような資料があれば、再審査の可能性が高まりますか?
追加のMRIやCTなど新たな検査結果、専門医の意見書、これまで不足していた医学的データなどが有力です。明確に「前回の審査で不十分とされた点」を補う形で資料を提出することが重要になります。
Q4:異議申立に期限はありますか?
法律上明確な期限は設定されていません。ただし、時間が経過すると症状や検査データの信憑性が変化する可能性もあり、早めの申立が望ましいと言えます。
Q5:異議申立での審査結果が出るまで、どれくらいかかりますか?
ケースバイケースですが、数ヶ月程度が目安とされています。書類量や審査の複雑さによっては、さらに時間がかかる場合もあります。
Q6:異議申立が認められなかった場合、もう手はないのでしょうか?
異議申立が不成功でも、裁判で後遺障害の有無や程度を争う方法があります。弁護士と相談し、医証などをさらに強化して主張することで、裁判所で等級相当の障害があると認定される可能性もゼロではありません。
解説
異議申立手続きのステップ
- 前回の認定資料の分析
- 初回の審査で提出した後遺障害診断書、MRI画像、レントゲン、医師の意見などを再確認
- どこが不十分と判断されたか、不認定や低い等級の理由を把握する
- 追加資料の準備
- 専門医や大学病院での検査(MRI・CT・神経学的検査など)
- 新たな診断書や意見書、症状経過を示す日常生活状況報告など
- 不足していた客観的根拠を強化して補う
- 申立書の作成
- 「どのような理由で異議があるのか」「どんな新資料があるのか」をわかりやすく整理
- 保険会社(自賠責保険や任意保険)を通じて提出する場合や、被害者自身が直接提出する場合がある
- 再審査・結果通知
- 損害保険料率算出機構などの機関が再度審査を行い、結果を通知
- 場合によっては追加照会や医療照会が行われることもある
よくある不備・不認定の理由
- レントゲンやMRIで異常所見が確認できない
「痛み」や「しびれ」の訴えがあっても、画像上は異常が見つからないケースが多い(特にむちうち)。 - 神経学的所見に矛盾がある
テスト結果や医師の診断書で、実際の症状と客観的所見が一致しないと判断される。 - 後遺障害診断書の記載が不十分
医師が簡略にしか記載せず、症状の具体性や因果関係が十分説明されていない。 - 症状固定までの経過が不自然
治療期間や通院頻度が極端に低い、または過度に長いなどで疑いを持たれる場合もある。
異議申立成功のポイント
- 新たな医学的根拠の確保
専門医の診察や追加検査で、以前は足りなかった所見を補う。 - 医師との連携強化
症状を正確に伝え、医師に後遺障害診断書の書き直しや詳細な意見書を書いてもらう。 - 症状経過の記録
日常生活での具体的な不便、痛みの度合い、リハビリ状況などを日記などで記録し、参考資料として提出。 - 弁護士のサポート
医療ネットワークを通じた専門医紹介や、申立書の作成支援、過去の判例の活用など、弁護士が専門知識を活かしてサポート。
弁護士に相談するメリット
- 書類作成のプロ
異議申立書や医師への依頼状など、法的観点からポイントを押さえた書類を整備できる。 - 医療機関への橋渡し
交通事故を多く取り扱う弁護士は、専門医を紹介したり、医師に必要事項を的確に伝えるノウハウを持っている場合もある。 - 再審査後の示談交渉も一括サポート
異議申立が成功し等級が上がったら、示談金額も大幅に変わる可能性がある。弁護士が保険会社と交渉し、正当な賠償を得られるように尽力。 - 裁判対応
異議申立で認められなかった場合も、裁判手続きで後遺障害を争う道が残されている。 - 弁護士費用特約の活用
任意保険の弁護士費用特約があれば、費用負担を気にせずに早期相談ができるメリットがある。
まとめ
後遺障害認定の結果に納得がいかない場合でも、「異議申立手続き」を活用すれば再度の審査を受けることが可能です。認定が不十分と感じる場合は、「どのような資料が足りなかったのか」をしっかり分析し、新たな医証や専門医の意見書などで再度チャレンジすることが重要となります。
- 初回認定結果を振り返り、どこに不備や不足があったかを把握
- 追加の検査や専門医の診断で、新たな医学的根拠を用意
- 早めに弁護士に相談し、書類作成や医師への依頼をサポートしてもらう
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、異議申立手続きのサポート実績が豊富です。もし納得のいかない認定結果で示談をまとめる前に、ぜひ一度ご相談ください。より適切な等級を得るための手段を一緒に検討いたします。
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