はじめに
交通事故で複数の部位に後遺障害が残った場合、それぞれの障害を「併合等級」としてまとめて評価するルールが存在します。単に「別々に合算」するわけではなく、後遺障害等級表に基づいた特別な計算方法により、最終的な等級が決定されます。併合等級は、被害者が受けることになる慰謝料や逸失利益に大きく影響を与えるため、誤った理解や手続きのミスで本来より低い評価となるリスクがあります。
本稿では、複数部位の後遺障害がある場合の計算方法や、留意すべきポイントを解説します。もし首・腰・肩など複数箇所に症状が残っているなら、併合等級が正しく認定されるかをしっかり確認することが重要です。
Q&A
Q1:併合等級とは何ですか?
後遺障害が複数箇所に存在するとき、各障害を単純に足し合わせるのではなく、後遺障害等級表の併合ルールに従って最終的な等級を決定する仕組みです。たとえば「10級と12級がある場合、併合9級として扱われる」などのルールがあります。
Q2:複数の後遺障害があっても、1つしか認定されない場合があるのですか?
同一部位での重複評価や、症状が類似している場合、「統合評価」されることもあります。また、医証不足で一方は認定されないケースもあるため、複数の障害それぞれについて十分な検査や診断書を揃える必要があります。
Q3:たとえば、右腕と左脚、それぞれに後遺障害が認定されたら、どう計算するのですか?
後遺障害等級表には「併合等級の算定方法」が定められており、上位等級をベースにもう一方の等級で加重評価を行う方式など複雑なルールがあります。具体例:10級と12級 → 併合9級、9級と10級 → 併合8級、など。
Q4:併合等級が上がると、どんなメリットがありますか?
等級が上位(数字が小さいほど重度)になると、後遺障害慰謝料と逸失利益が大幅に増えます。金額差は数百万~数千万円以上に及ぶ場合があり、被害者にとって非常に重要な争点です。
Q5:併合等級の計算は誰がしてくれるのですか?
損害保険料率算出機構などの認定機関が、後遺障害診断書や医証をもとに判断します。ただし、その前提となる医師の診断書や検査資料が不足していると正しく評価されないおそれがあります。
Q6:もし併合等級の判断が低いと思ったら、どうすればいいですか?
異議申立を行い、追加資料(別の部位の検査結果や専門医の意見書など)を提出することで再審査を求められます。また、裁判で主張して認定結果を覆す道もあります。弁護士に相談し、適切な書類を整えることが重要です。
解説
併合等級の基本ルール
- 最も重い等級を基準に加重評価
たとえば、「両足に後遺障害がある」場合、それぞれの等級を比較し、重い(数字の小さい)方をベースに、もう一方の等級で加重評価する方式。 - 異なる部位・異なる機能障害はそれぞれ評価
例:右腕の機能障害と左脚の機能障害がある場合、別々に等級を算定してから併合する。 - 同一部位や同様の症状は統合評価
首と腰など、同じ種類の神経症状が重複する場合には、別々に評価されず1つにまとめられる可能性も。
具体例
- 例1:上半身が10級、下半身が12級の場合
上半身10級がベース、12級を加重評価 → 併合9級となる。 - 例2:9級と10級がある場合
9級がベース、10級を加重 → 併合8級に繰り上がり、大幅に慰謝料・逸失利益が増加。 - 例3:14級が2つある場合
14級+14級→併合14級のままであり、後遺障害等級は繰り上がりません。
併合等級の留意点
- 医証の整合性が重要
複数部位がそれぞれ別個に障害認定されるため、部位ごとに十分な検査・診断書が必要。 - 実際の生活影響を具体的に示す
日常動作や仕事に支障がある2箇所以上の障害を別々に評価してもらう。 - 類似症状の重複
首と腰、両肩など、似た症状があると1つにまとめられるリスクがある。医師や弁護士と連携し、実際には別部位・別症状であることを示す。 - 異議申立・裁判対応
納得いかない併合結果の場合、追加の検査や専門医の意見書で再審査を求めることが重要。
弁護士に相談するメリット
- 併合等級の正しい理解と主張
弁護士が後遺障害等級表と併合ルールに精通し、適切な資料を揃えて認定機関に提出。 - 複数部位にわたる医証集め
病院・検査が増えるほど書類が煩雑になる。弁護士が必要書類をリストアップし、取得手続きをサポート。 - 異議申立や統合評価を回避するためのアドバイス
同じ部位に見られる症状を区別し、別個の障害として認められるよう主張。 - 示談交渉・裁判での増額
併合等級が高くなれば慰謝料や逸失利益が大幅にアップ。弁護士が保険会社と交渉し、正当な賠償金を獲得しやすい。 - 弁護士費用特約で経済的負担を軽減
任意保険の特約があれば、費用負担なしで専門サポートを受けられる。
まとめ
複数の部位に後遺障害が残った場合は、「併合等級」という特別ルールで最終的な等級が決定されます。上位等級になるほど、後遺障害慰謝料や逸失利益が飛躍的に増額される可能性があるため、以下の点を押さえておきましょう。
- 各部位ごとの医証(診断書・検査結果)をしっかり整える
- 似た症状でも別々の機能障害として認められるかを医師と相談
- 保険会社や認定機関の結果に不服があれば、異議申立や裁判を検討
- 弁護士を活用し、正しい併合等級で適正賠償を得る
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、複数部位にわたる後遺障害認定に関するご相談・手続き代行・示談交渉までお手伝いいたします。もし複数の痛みや障害に悩んでいる場合は、ぜひお早めにご相談ください。
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