はじめに
交通事故が原因で家族や親しい人が亡くなってしまう悲劇は、だれにとっても想像を絶する精神的苦痛を伴います。しかも、死亡事故の直後は、警察や救急への対応から保険会社との連絡、相続人の確定や死亡診断書の取得など、短い時間で数多くの手続きを進めなければなりません。大きなショックを受け、混乱している中で、何をどう優先すべきか分からずに困ってしまう方も多いことでしょう。
本稿では、「死亡事故直後に行うべき初動対応」をまとめて解説します。事故後の現場対応から書類準備、保険会社とのやり取り、さらには相続人の調査など、死亡事故特有の手続きポイントをわかりやすく整理します。もし万が一のときに、少しでも落ち着いて対応できるよう、一連の流れを把握しておくことが大切です。
Q&A
Q1:死亡事故が起きたら、まず何をすればいいのですか?
最優先は救急車の手配です。もし負傷者がいるなら、ただちに119番通報し、救急隊に連絡を。併せて警察への通報(110番)も必須です。亡くなっている場合でも、事故として警察を呼ばなければなりません。
Q2:保険会社にはいつ連絡すべきですか?
可能な限り早く連絡しましょう。死亡事故の場合、相手方の任意保険会社だけでなく、自分の保険会社にも連絡します。死亡事故では高額な賠償や複雑な手続きが想定されるため、保険会社の担当者と早めに方針を確認しておくことが大切です。
Q3:相続人の調査はどうして必要なのですか?
死亡事故における賠償金や保険金は、被害者の相続人が受け取ることになります。相続人を確定させるため、戸籍謄本などをたどって「誰が相続人にあたるのか」を調査しなければなりません。
Q4:事故後に医師から死亡診断書(死体検案書)を受け取る際、注意点はありますか?
死亡診断書(死体検案書)は、死因を特定する大切な公式書類です。事故による死亡か否かを示すうえで重要な証拠となる場合があります。原本は複数枚発行してもらうか、コピーを必ず保管しておくとよいでしょう。
Q5:警察から「実況見分調書」などを受け取ることはできるのでしょうか?
一般的には、警察の捜査資料(実況見分調書など)は刑事手続きでの証拠扱いとなり、すぐに閲覧できないことが多いです。示談交渉や裁判で必要な場合は、弁護士を通じて開示請求するなどの手続きを踏む必要があります。
Q6:死亡事故の現場対応で、遺族が注意すべきことはありますか?
感情的になりすぎず、「事故状況の記録(写真や動画)」をできる範囲で行っておくと良いでしょう。また、目撃者がいれば連絡先を交換し、後で証言を得られるようにすることも大切です。ただし、すでに警察が現場を管轄しているときは、警察の指示に従ってください。
解説
死亡事故の初動対応:流れのイメージ
- 事故発生・救急連絡
けが人(意識不明者)がいる場合は救急車を呼ぶ。心肺停止などの場合、すぐに救命措置(心臓マッサージなど)を試みながら救急隊を待つ。 - 警察への通報
道路交通法上、事故発生時に警察に連絡する義務があります。死亡事故の場合は、必ず110番で呼び出し、警察が現場を確認し、状況を調査する。 - 事故現場の安全確保・記録
二次災害を防ぐため、周囲に注意を喚起しつつ、可能なら写真や動画で事故車両の位置関係や損傷を記録する。ただし、警察の指示には従う。 - 病院へ搬送・医師の診断
救急隊が到着して病院へ搬送。すでに亡くなっている場合、警察や医師の検案が必要になる。 - 保険会社への連絡
落ち着いた段階で加入している保険会社に事故の報告を行う。加害者側の保険会社にも連絡先を確認しておく。 - 死亡診断書(死体検案書)の取得
医師から死亡診断書または死体検案書を受け取り、死因や死亡日時を確認。 - 相続人調査
戸籍謄本をたどり、法定相続人を確定する。保険金や賠償金の受取人を明確にする必要がある。
相続人調査の重要性
- 保険金・賠償金の受取先
死亡事故の損害賠償金や保険金は、被害者の法定相続人が受け取る。相続放棄や限定承認などを検討する場合もあるため、相続人を確定する作業は必須。 - 戸籍謄本の取得
被害者の本籍地で戸籍謄本(除籍・改製原戸籍など)を取得し、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹などを確認。 - 内縁関係や認知の有無
思わぬ相続人が存在する場合もあるため、関係性を正確に洗い出すことが重要。
初動対応で気をつけたいポイント
- 感情的トラブルの回避
加害者側や保険会社と現場で直接やり取りをすると、感情的になりがち。警察の介入を待ち、必要以上のやり取りは避ける。 - 自分の保険(人身傷害補償など)の確認
被害者自身が加入している人身傷害補償保険や弁護士費用特約が使えるか確認し、後の示談や相談費用をカバーできるか調べる。 - 警察の捜査協力と実況見分
死亡事故では刑事事件として捜査が行われる。遺族としても、実況見分や供述調書などで正確な事実関係を説明する機会がある。
弁護士に相談するメリット
- 精神的サポートと手続き代行
愛する人の突然の死に直面し、遺族は大きな精神的ショックを受けている。このなかで複雑な書類や手続きをこなすのは非常に困難。弁護士が代行することで負担が軽減される。 - 相続人調査・書類準備
弁護士は戸籍謄本などの取得手続きをサポートし、相続人を確定させる作業を効率化できる。 - 高額賠償金の示談交渉
死亡事故では数千万円規模の賠償が争われることも多い。保険会社の提示額が本当に妥当かどうか、弁護士が査定し増額交渉に臨む。 - 刑事事件との連携
加害者が刑事手続きを受ける場合、遺族としての意見陳述や被害者参加制度などで弁護士がサポートし、刑事裁判を見守る。 - 弁護士費用特約の活用
被害者本人(あるいは同居の家族)の保険契約に弁護士費用特約があれば、自己負担なく、または軽減しながら弁護士のサポートを受けることが可能。
まとめ
死亡事故の直後は、遺族が大きな悲しみや混乱に包まれる一方で、警察・救急への対応、保険会社への連絡、相続人調査、必要書類の取得など、多くの手続きを行わなければなりません。特に高額な賠償金が動く可能性が高い死亡事故では、初動対応を誤ると、後の示談交渉や保険手続きで不利になるリスクがあります。
- 救急・警察への連絡が最優先
- 保険会社への報告、相続人の確定、死亡診断書の取得を早めに
- 感情的にならず、できる限り事故状況を記録・情報収集
- 弁護士のサポートで精神的・手続的負担を軽減し、高額賠償を適切に得る
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、死亡事故における初動対応から示談交渉・裁判手続きまで、総合的に遺族をサポートしています。万が一の際は、一人で悩まずにご相談いただき、大切な方を失った後の法的対応を共に乗り越えていければと願っています。
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