はじめに
交通事故で負傷した被害者が請求できる「慰謝料」には大きく分けて、入通院(傷害)慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。入通院(傷害)慰謝料はケガを負って通院することによる精神的苦痛を補償し、後遺障害慰謝料は症状固定後も残る後遺障害に対する苦痛を補うものです。この2つは性質と計算基準が異なるため、混同すると正しい金額を主張できなくなる恐れがあります。
本稿では、傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の違いや、計算のポイント、保険会社との交渉で意識するべき点などを解説します。ケガの状況と後遺障害の有無を正確に把握し、入通院期間と後遺障害等級に応じた正当な請求を行うことが、示談交渉を成功させるポイントです。
Q&A
Q1:傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の違いは何ですか?
傷害慰謝料は、ケガをして通院・入院をしたこと自体の精神的苦痛を補償するものです。一方、後遺障害慰謝料は、治療後も体や心に後遺症が残った場合、その苦痛を補償するものです。
Q2:後遺障害慰謝料は、後遺障害等級が認定されないと受け取れないのでしょうか?
はい、後遺障害の有無・等級の認定が前提となります。認定されなければ後遺障害慰謝料は原則として請求できません。等級に応じて慰謝料の金額が大きく変わります。
Q3:通院期間が長くなると、どちらの慰謝料にもプラスに影響しますか?
通院期間の長さは傷害慰謝料に直接影響します。一方、後遺障害慰謝料は、通院期間ではなく後遺障害の等級が決定要因です。ただし、長期通院で後遺障害が認定されやすくなる面はあります。
Q4:傷害慰謝料と後遺障害慰謝料を合わせて請求することもできますか?
できます。ケガをして治療・通院した期間に対する傷害慰謝料と、症状固定後の後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料は、別々に請求対象です。
Q5:保険会社から「後遺障害は認定されない」と言われたら諦めるしかないのですか?
諦める必要はありません。保険会社の見解と自賠責保険の認定機関は別です。医証を整え、被害者請求や異議申立などの手続きを取ることで後遺障害等級が認められる可能性があります。
Q6:後遺障害慰謝料が高額になりそうな案件でも、弁護士に依頼すればさらに増額が期待できますか?
はい。後遺障害の等級設定や保険会社との示談交渉で、裁判所基準に基づく主張を行うことでさらなる増額が得られる場合が多いです。特に1級~9級など高い等級では、数百万円から数千万円の差が生じることもあります。
解説
傷害(入通院)慰謝料の概要
- 対象期間
- ケガをして治療を受けている期間(入院・通院期間)が対象。
- 保険会社は「実通院日数」「治療期間」などを重視して金額を算出する。
- 計算基準
- 自賠責基準:1日あたり4,300円×実通院日数×2(または治療日数)など、簡易な計算式。
- 任意保険基準:保険会社独自の支払基準で、自賠責よりは高いが裁判所基準ほどではない。
- 裁判所基準:いわゆる「赤い本」などで定められた期間別の相場表があり、通院期間と内容に応じて算定。
- 増額要因
- 入院日数が長い、手術が複数回あった、通院頻度が高かったなど、身体的・精神的負担が大きい事例では増額が認められやすい。
- 医師の診断書やリハビリ実績を用いて痛みや不便さを具体的に示す。
後遺障害慰謝料の概要
- 後遺障害等級の認定
- 自賠責保険の審査機関(損害保険料率算出機構)が1級~14級の等級を判定。
- 等級が高いほど後遺障害慰謝料が大きくなる。1級で2,800万円前後、14級で110万円前後が裁判所基準の目安。
- 傷害慰謝料との関係
- 通常、通院(入通院)慰謝料と後遺障害慰謝料は別項目として算定。
- 後遺障害が認定されれば、傷害慰謝料にプラスして後遺障害慰謝料を受け取れる。
- 増額要因
- 等級が高いほど増額幅が大きい(1級~2級で数千万円)。
- 後遺障害による介護の必要性や、仕事への影響が大きい場合、逸失利益とあわせて多額の賠償となる。
示談交渉での活用
- 通院・入院の正当性を証明
- 傷害慰謝料を増やすには、医師の指示による適切な通院であることを証拠化。空白期間があると「そこまで痛みがなかった」とみなされる恐れ。
- 後遺障害認定の申請
- 後遺障害診断書を医師に詳しく書いてもらい、被害者請求や事前認定の方式で認定を得る。
- 認定結果に納得いかなければ異議申立を検討。
- 裁判所基準の主張
- 保険会社の任意保険基準提示が低い場合、裁判所基準に基づく金額を比較資料として示し、増額交渉を行う。
弁護士に相談するメリット
- 傷害慰謝料・後遺障害慰謝料の計算
弁護士が「赤い本」「青い本」をはじめとする判例データをもとに最大限の金額を算定。 - 後遺障害認定サポート
医師との連携や専門検査の受診などで等級アップを狙い、後遺障害慰謝料を増額させる。 - 保険会社との交渉負担を軽減
入通院中の被害者が精神的にも時間的にも厳しいなか、弁護士が交渉を代理して進める。 - 過失割合や治療費打ち切りにも対応
保険会社が過失割合を押し付けて慰謝料を減額しようとするケースなどに対抗する。 - 弁護士費用特約の活用
特約で費用負担なしに依頼できれば、実質的なリスクゼロで示談金の増額を目指せる。
まとめ
傷害慰謝料と後遺障害慰謝料は、どちらも被害者の精神的苦痛を補償するものですが、期間・対象・金額が大きく違います。
- 傷害慰謝料
ケガを負って通院・入院した期間の苦痛。通院日数・入院日数を基準に計算 - 後遺障害慰謝料
症状固定後も残る後遺障害の苦痛。後遺障害等級の認定が前提
両方が該当する事故の場合、通院(傷害)慰謝料+後遺障害慰謝料の合計で請求することになります。保険会社の提示を鵜呑みにせず、裁判所基準と比較して増額を主張するには弁護士の専門知識と交渉力が欠かせません。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、後遺障害認定を含めたトータルのサポートで、被害者にとって最適な結果を目指します。
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