はじめに
交通事故で提示された過失割合が被害者の想定よりも大きい場合、示談交渉で思うように進まず、納得できないままサインしてしまうケースが後を絶ちません。過失割合がわずか1割増えるだけでも、最終的な示談金が数十万円以上下がることがあり、被害者としては大きな損失です。そこで、保険会社の提示する過失割合に異議がある場合にどう対処し、どのような手続きで再検討を求められるのかを知っておくことは、事故後の示談を成功させるカギといえます。
本稿では、過失割合に異議がある場合の対処法として、直接交渉・弁護士依頼・裁判の流れを整理し、実際の交渉で押さえるべきポイントを解説します。保険会社に言われるがままではなく、自分の主張を裏づける証拠や判例をどう集め、どのように活かせばいいのか、その具体的な手順を知ることで、適正な過失割合を勝ち取る力になるでしょう。
Q&A
Q1:保険会社から提示された過失割合が納得いかない場合、まず何をすればいいでしょうか?
まずは事故態様の客観的証拠(ドライブレコーダー映像、実況見分調書、目撃者証言など)を整理し、保険会社に対して正式に異議を伝えます。口頭だけでなく、文書・メールなど形に残る方法が望ましいです。
Q2:直接交渉でダメなら、すぐ裁判を起こすべきですか?
いきなり裁判に進む必要はありません。弁護士に依頼して交渉段階で過失割合を再度検討してもらい、保険会社に判例や基準を示して再提示を引き出すことが多いです。それでも折り合わなければ裁判を検討する流れです。
Q3:証拠があまりないのですが、どうにか過失割合を覆すことはできるでしょうか?
難しい場合もありますが、実況見分調書やドライブレコーダーが存在しないなら、他に防犯カメラ映像、目撃者を探すなど追加の証拠収集を試みましょう。弁護士が警察や周辺店舗に確認を行うこともあります。
Q4:保険会社に「判例タイムズにこう書かれている」と主張すれば、過失割合を変えてもらえますか?
保険会社は自社基準と「別冊判例タイムズ」の基準を用いています。ただ、単に「こう書いている」というだけでなく、事故態様との適合性を論理的に示すのが大切です。弁護士が過去の判例を引き合いに出し、類似性を強調するやり方が効果的です。
Q5:過失割合をめぐる示談交渉が長引いて治療費の支払いがストップしそうです。どうすればいい?
保険会社が治療費を打ち切ると伝えてきても、医師が治療の必要性を認めていれば交渉余地があります。また、弁護士費用特約や人身傷害補償保険を活用して一時的に立て替えるなど、弁護士と協力して対処可能です。
Q6:裁判になると時間や費用がかかりますか?
裁判には1年程度(複雑ならそれ以上)かかることもあり、費用も多少発生します。弁護士費用特約があれば自己負担ゼロで進められます。争点が大きな案件ほど、裁判で過失割合をしっかり確定するメリットが高いといえます。
解説
異議申立・再交渉の基本手順
- 事故態様の再確認
まずは自分の記憶やメモ、現場写真、ドライブレコーダー映像、警察の実況見分調書を洗い出し、事故の経緯を客観的にまとめる。 - 保険会社との再交渉
異議を伝えたうえで、「○○の判例ではこういう条件下で被害者過失が少なくなる」など根拠を示し、過失割合を再考するよう要求。 - 弁護士依頼
自分で交渉が難しい場合、早めに弁護士に依頼して過失割合の専門知識と判例データに基づいた交渉を展開してもらう。 - 話し合いがつかない場合
示談がまとまらなければ裁判を提起し、最終的に裁判所が判断する(通常は地方裁判所で行う)。
証拠の役割
- 事故態様の客観化
過失割合の争いは「どちらの違反が大きいか」「どんな状況だったか」を明確にする必要がある。映像証拠や現場写真、目撃者証言は決定的。 - 実況見分調書
警察が作成する書面で、車両位置やブレーキ痕、衝突痕などが記載。裁判で証拠力が大きい。 - 専門家の分析
速度計算、衝突痕分析などでどちらに回避可能性があったかを検証し、過失を具体的に示す場合も。弁護士が必要に応じて専門家を探すことがある。
裁判で過失割合を争うメリットと注意点
- 公的機関の確定判決
- 裁判所が下した判決では、過失割合が公的に確定される。保険会社もこれに従わざるを得ない。
- 時間と費用
- 裁判は半年~1年以上かかることもあり、費用も少なからず発生。
- 弁護士費用特約があれば費用負担を気にせず、適切な過失割合を目指せる。
- 和解の可能性
- 裁判の途中で「和解」として落としどころを見つけることも多い。弁護士が裁判官の心証を見つつ、保険会社と最適解を協議。
弁護士に相談するメリット
- 専門的知識と判例データの活用
弁護士は別冊判例タイムズなどの基準だけでなく、最新の裁判例も収集しているため、保険会社が示す過失割合と比較して不当かどうかを即座に判断できる。 - 証拠収集をサポート
ドラレコ映像の提出要請、警察での実況見分調書の取り寄せ、目撃者の探索など、弁護士が主体的に行うため、被害者の負担が減る。 - 過失割合交渉の窓口
直接自分で保険会社とやり合うより、弁護士を通すほうが保険会社も専門家として対応するため、平行線になりにくい。 - 過失割合以外も総合サポート
過失割合が決まったら、今度は慰謝料や逸失利益などの金額をどう算定するかが問題。弁護士がトータルで示談金を増やす交渉を行う。 - 裁判対応
弁護士費用特約があれば費用負担を軽減した上で訴訟へ進め、結果的に過失割合を大幅に修正できる可能性が高まる。
まとめ
過失割合に納得できない場合、再交渉や異議申立、最終的には裁判で争うことが可能です。保険会社の提示に疑問があるなら、ドライブレコーダー映像や目撃者証言、警察の実況見分調書などをフル活用し、適正な事故状況を示さなければなりません。
- 過失割合の異議
証拠を整え、保険会社に再検討を求める - 弁護士依頼
専門知識と判例に基づく交渉で、保険会社の不当主張を覆す - 裁判の選択
示談がまとまらなければ裁判で過失割合を確定できる - 費用特約
弁護士費用特約があればリスクなしで専門家に依頼
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、過失割合の再交渉や、証拠収集・裁判対応まで多角的にサポートし、被害者が不当に高い過失を負わされる事態を防ぎます。少しでも疑問に感じたら早期にご相談ください。
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