はじめに
追突事故は交通事故のなかでも非常に多い類型で、被害者がむちうち(頸椎捻挫)に悩まされることがよくあります。一見「軽傷」と思われがちですが、事故後長期にわたって首や肩の痛み、頭痛、しびれなどが続き、日常生活や仕事に支障をきたすケースも少なくありません。また、保険会社が「むちうちは検査で異常が出ない」「数ヶ月で治るだろう」と評価し、示談金が過小に押さえられるトラブルも後を絶たないのが現実です。
本稿では、追突事故で頸椎捻挫(むちうち)を負った事例を取り上げ、どのように治療を進め、後遺障害等級を認めてもらい、保険会社との示談交渉を乗り切るかを解説します。適切な通院と検査、医師とのコミュニケーションがカギとなるため、実際のケーススタディを通じて学んでいきましょう。
Q&A
Q1:むちうちはレントゲンでは異常が映らないと聞きますが、どうすれば後遺障害が認められるでしょうか?
MRIや神経学的テスト(ジャクソンテスト、スパーリングテストなど)で神経根症状を確認したり、医師の診断書に具体的な症状経過を記載してもらうことが重要です。単に「首が痛い」と訴えるだけでは不十分で、診断書の内容が後遺障害認定のカギになります。
Q2:追突事故でむちうちになり、数ヶ月通院しましたが、仕事が忙しくて途中から通えなくなりました。示談金は大幅に下がりますか?
通院が途中で途絶えると、保険会社や裁判所からは「痛みが軽くなったから通院不要になったのでは?」と疑われる可能性が高いです。結果として傷害慰謝料や後遺障害認定が不利に働くことがあるため、定期的通院を継続するか、医師と相談して別の治療方法を確保しましょう。
Q3:後遺障害14級が認められるだけでも示談金は大きく変わるのでしょうか?
はい。14級(むちうちなど軽度の神経症状)でも、不認定と比べて数十万~100万円以上の増額差が生じるケースがあります。軽度と思われがちなむちうちでも、きちんと医証を揃えれば等級認定につながる可能性があるため重要です。
Q4:追突されたときに、こちらにもわずかに過失が認められる場合があるのですか?
追突事故は基本的に「後車100%:前車0%」が原則ですが、前車が急ブレーキを踏んだ、合図なしで停止したなどの特殊事情があれば、前車にも過失を認めるケースがあり得ます。しかし、実際には後続車が十分な車間距離をとっていれば避けられたという判断が多く、前車が0%となる事例が大半といえます。
Q5:加害者が飲酒運転の状態で追突してきた場合、慰謝料は増額されますか?
通常より精神的苦痛が大きいとして、数十万円以上の加算が行われる可能性があります。示談段階でも、弁護士が飲酒の悪質性を強調し、保険会社に譲歩を求めることで増額を求める方法もあり得ます。
Q6:治療が長引いているのに保険会社が「そろそろ打ち切り」と言ってきました。対処法は?
保険会社が一方的に治療費を打ち切るといっても、医師が「治療継続が必要」と判断しているなら、交渉による延長を打診することが考えられます。弁護士が介入し、医師の意見書などを提出することで、延長交渉を行うことも一つの手法です。
解説
事例:追突事故で頸椎捻挫になったケース
- 事故の状況
- 渋滞中に被害車が停止していたところ、後ろの車がブレーキ操作を誤り、追突。
- 被害者は首と肩に強い痛みを感じ、その場で警察・救急を呼んだ。
- 通院・治療の経過
- 整形外科でレントゲンを撮影したが骨に異常なしとの診断。医師がむちうち(頸椎捻挫)と告げ、1日数回のリハビリ通院を指示。
- 数週間後、痛みが改善せずにMRIを撮ったが大きな異常なし。しかし神経学的テストで軽度陽性が出ており、首の可動域が狭いとの記録が残る。
- 示談交渉でのポイント
- 保険会社が「むちうちは軽い症状」と述べ、早期打ち切りを示唆。被害者は半年以上真面目に通院し、症状固定後に後遺障害診断書を取得。
- その結果、14級9号の認定が下り、後遺障害慰謝料および逸失利益(症状が仕事に支障をきたす可能性があるとして)が一部認められ、数十万円〜数百万円以上の増額ができる場合がある。
示談交渉で押さえるべきポイント
- 通院実績の蓄積
- むちうちの場合、痛みが継続していることを示すため、定期的な通院とリハビリが重要。
- 医師の診断書に「痛みが続いている」「可動域が狭い」など具体的記載があれば、示談での交渉材料に。
- 神経学的テストの活用
- ジャクソンテストなどで客観的異常を示すことができれば、保険会社の「単なる主観的な痛み」の主張を排除しやすい。
- 弁護士が医師にテスト実施を依頼、結果を後遺障害診断書に反映してもらう方法が実務的。
- 裁判所基準 vs 保険会社基準
- 保険会社の示談金提示は多くの場合、裁判所基準より低い傾向にある。
- 弁護士が赤い本や判例を根拠に、「もし裁判になれば○○万円が認められる可能性が高い」と交渉し、任意保険基準から裁判所基準へ引き上げを狙う。
注意点と落とし穴
- 途中で通院をやめてしまう
- 痛みが継続しているのに、「仕事が忙しい」などの理由で通院しなければ、後遺障害認定が厳しくなる。
- 保険会社に「もう治ったと判断できる」と言いくるめられる可能性大。
- 整骨院や接骨院だけの通院
- レントゲンやMRIなど医学的検査ができる病院での通院も並行しないと、医証不足で後遺障害認定が不利になる。
- 整骨院の施術記録は重要な参考にはなるが、後遺障害審査で最も重視されるのは整形外科等の医師の所見。
- 事故との因果関係を疑われる
- むちうち症状が出るのが数日遅れだったり、事故後すぐに受診しなかった場合、保険会社は因果関係を否定する場合がある。
- 痛みが少しでもあれば事故直後から整形外科受診を検討し、カルテ記載を確保する。
弁護士に相談するメリット
- 後遺障害認定へのサポート
- 弁護士がどのような検査やリハビリが必要かを医師に相談し、被害者へもアドバイスを行う。
- 結果として十分な医証を整えて14級などを認定してもらいやすくなる。
- 示談金の大幅増
- むちうちで14級や12級が認められれば、裁判所基準で数十万~数百万円以上の増額が期待できる。弁護士が保険会社を説得しやすくなる。
- 保険会社の早期打ち切りを防ぐ
- 弁護士が医師の意見書などを利用して必要な治療継続を訴えれば、保険会社の打ち切りを牽制することが期待できる。
- 過失割合争いにも対応
- 追突事故では加害車が100%とされやすいが、例外主張に対しても弁護士が「車間距離不保持や前方不注視」を論じ、被害者過失を拒否できる。
- 弁護士費用特約
- むちうち事案でも特約があれば費用負担なしで弁護士に依頼でき、最終的に示談金が大きく増えやすい。
まとめ
追突事故で頸椎捻挫(むちうち)を負った被害者は、「軽傷」と思われがちですが、長期に及ぶ首・肩の痛み、頭痛、しびれなどの後遺症に苦しむケースが多数あります。
- レントゲン異常なし
→ 画像上は異常がなくてもMRI・神経学的テストで異常を見つける - 定期通院の重要性
→ 数ヶ月で痛みが引かず通院継続すれば、後遺障害認定14級などが狙える - 示談交渉
→ 弁護士が介入し、裁判所基準で慰謝料交渉を行えば数十万~数百万円以上の差
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、むちうち事案にも豊富な実績があり、医師との連携や後遺障害認定手続きをサポートします。保険会社が「軽傷だからこの額で十分」と主張しても、決してあきらめず、ぜひ早期にご相談ください。
その他のコラムはこちら|交通事故のコラム一覧
リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル
交通事故についてさらに詳しく知りたい方のために、当事務所では交通事故後の対応に役立つ解説動画を配信しています。ご興味がある方はぜひご視聴及びチャンネル登録をご検討ください。
初回無料・全国対応|お問い合わせはお気軽に
長瀬総合法律事務所では、ホームページからの予約、オンラインでの予約、電話、LINEといった複数のお問い合わせ方法をご用意しております。お好みの方法でお気軽にお問い合わせください。