はじめに
交通事故で頭部に衝撃を受けた結果、高次脳機能障害を発症すると、記憶・注意・遂行機能などの低下や感情コントロールの困難など、さまざまな認知機能障害が生じます。こうした障害が日常生活に与える影響は、本人だけでなく、家族や周囲の人々にも大きな負担となり得ます。日常の些細な行動(料理、買い物、通勤、社交など)ですら支障が出るため、介護・サポートが必要な場合も多く、家族が疲弊してしまうケースも少なくありません。
本稿では、高次脳機能障害が日常生活へもたらす具体的な影響に加え、家族がどのような負担を抱えるか、そして公的な介護・福祉サービスをどのように活用できるかを解説します。リハビリや医療ケアを進める一方で、家族やケアスタッフのサポート体制を整えることで、被害者が少しでも円滑な社会生活を取り戻し、家族の負担を軽減することが重要です。
Q&A
Q1:高次脳機能障害のある方は、具体的にどんな日常生活動作が難しくなるのでしょう?
記憶障害のある方は買い物で何を買うか忘れてしまう、注意障害だと調理中に火をかけっぱなしで放置する、遂行機能障害では料理の手順や片付けの段取りができなくなるなど、ごく日常的な動作が困難になります。さらに社会的行動障害として、衝動的・攻撃的になってしまい、家族や職場でトラブルを起こす例もあります。
Q2:家族の介護負担はどのような面で大きいでしょうか?
たとえば、本人が外出先で道に迷う、会話や行動が予測不能でトラブルになりかける、感情コントロールができず家族に対して怒りをぶつけるなど、一日中目を離せない状況になりがちです。食事や服薬の管理、入浴・排泄などの身体介助に加え、家事や金銭管理を代行する必要も生じます。精神的ストレスが大きく、家族が疲弊やうつ症状を抱えることも少なくありません。
Q3:介護のために家族が仕事を辞めざるを得ない例もありますか?
十分にあり得ます。重度の高次脳機能障害で常時介護が必要な状態になると、家族がフルタイム勤務を続けるのは困難です。介護離職を余儀なくされ、家計が一層厳しくなるケースもあり、裁判例や示談交渉でも家族介護費の算定が大きな争点になることがあります。
Q4:どのような公的サービスや福祉制度が利用できるのでしょうか?
代表的には、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳、もしくは身体障害者手帳)の取得を検討できます。これにより障害福祉サービス(ヘルパー利用、日中活動支援など)が受けやすくなります。また、自立支援医療(精神通院医療)制度や介護保険(高齢者)などを併用する場合もあります。地方自治体によっては、高次脳機能障害支援センターなど独自支援を行うところも。
Q5:日常生活の支援だけでなく、職場復帰のサポートもあるのですか?
リハビリ施設や職業センターで就労支援を行うプログラムがあります。たとえばジョブコーチが付き添い、業務を段階的に訓練するなどの方法です。精神保健福祉士が企業との調整を行い、短時間勤務や業務内容の配慮を受けつつ復職する事例もあります。
Q6:弁護士がそうした福祉サービスに詳しいこともあるのですか?
交通事故を多数扱う弁護士のなかには、高次脳機能障害の被害者支援に特化し、福祉制度や公的サービスに関する知見を持つ者もいます。医療ソーシャルワーカーやリハビリ専門家とのネットワークを構築しており、依頼者に適切なサービスを提案できる事務所も多いです。
解説
日常生活での具体的影響
- 家事・料理の困難
- 記憶障害で調味料を買い忘れたり、注意障害で火をかけたまま離れてしまう、遂行機能障害で複数のおかずを同時に作れない。
- 家族が一から指示しないと進められない状況になる。
- 金銭管理・買い物
- 記憶障害や注意障害により買い物メモが役立たずになったり、衝動買いで無駄遣いしたり、計算が苦手になってお釣りミスを繰り返す。
- 家族が財布や口座を預かり、本人に代わって精算する例もある。
- コミュニケーション障害
- 社会的行動障害で突拍子もない発言をしたり、相手の気持ちを読めずにトラブルになるなど。
- 職場や友人関係が破綻し、孤立してしまう人もいる。
- 外出・交通機関利用
- 注意障害や記憶障害で、バスや電車の乗り間違い、道を迷う、運転自体が危険になるケースも。
- 家族の付き添いが必要になったり、タクシー費用などが増大する負担がある。
家族の負担とケア
- 家族介護の実態
- 高次脳機能障害は身体介助に加え、認知面・行動面のケアが求められ、24時間目を離せないことも。
- 家族が仕事や家事育児と両立しながら介護するのは負担が大きく、うつ症状を発症する家族も。
- 介護費や家族介護料
- 交通事故の損害賠償では、家族が介護する場合でも賃金換算できる判例があり、1日数千円~数万円の介護費が認定されるケースがある。
- 弁護士を通じて適正金額を主張しないと保険会社が過小評価しやすい。
- 家族のサポート体制
- 福祉サービスを活用し、ヘルパーや訪問介護を導入し、家族の負担を軽減する。
- 当事者・家族会やカウンセリングを利用し、精神的サポートを受ける。
介護・福祉サービスの活用
- 障害者手帳の取得
- 身体障害者手帳か精神障害者保健福祉手帳を取得すれば、障害者総合支援法による各種支援(介護保険とも連携)が受けやすくなる。
- 等級判定は医師の診断書が必要。高次脳機能障害を診断できる専門医が協力する必要がある。
- リハビリテーションセンター・デイケア
- デイケアやデイサービスで日中活動プログラムを提供している施設がある。通所で認知訓練や社会適応訓練を受け、家族の介護負担を減らせる。
- 住んでいる自治体や医療ソーシャルワーカーに問い合わせると情報が得やすい。
- 職業リハビリ・復職支援
- 地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターで、就職支援や職場定着支援を行っている。
- 企業に対して合理的配慮を求められる場面もあり、弁護士が社会福祉機関と連携するケースも。
弁護士に相談するメリット
- 専門医・施設の紹介
高次脳機能障害を多く扱う弁護士は、脳外傷専門医やリハビリ病院のネットワークを持つ場合があり、適切な診療先を案内可能。 - 介護費用や家族介護料の確保
弁護士が家族の負担実態を丁寧に立証し、日常生活支援の必要性を保険会社に認めさせ、介護費や家族介護料を損害項目に加算。 - 後遺障害等級の正当評価
高次脳機能障害は見た目では分かりにくいため、証拠集めと医師の所見が重要。弁護士が申請書類を整え、適正な等級を狙う。 - 逸失利益の大幅増
認知障害で就労困難となる場合、逸失利益が数千万円~1億円規模になる可能性も。弁護士が裁判所基準での請求を徹底。 - ストレスの軽減
被害者や家族が介護に忙殺される中、保険会社との交渉まで行うのは過大な負担。弁護士を通じて手続きを委任すれば、日常支援に集中できる。
まとめ
高次脳機能障害が日常生活に及ぼす影響は深刻で、家族が24時間介護や監視を強いられる場合も少なくありません。
- 日常生活動作
記憶・注意・遂行機能の低下で、料理、金銭管理、外出など困難 - 家族の負担
仕事や家事との両立が難しく、精神的ストレスが大きい - 福祉サービスの活用
障害者手帳取得、デイサービス、訪問介護、職業リハビリ - 弁護士介入
介護費や家族介護料、後遺障害等級アップ、逸失利益の大幅増を訴求する
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、高次脳機能障害が日常生活と家族にどういう影響を与えるかを認識し、介護・福祉サービスと連携したサポートを提供します。被害者が適切なリハビリと補償を受け取り、家族の負担を少しでも軽減するために、ぜひ早期にご相談ください。
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